当たり前やけど 寒いですねぇ
先日受けた 検診結果が届きました
ぎゃーー〜
アカンやつやん
行間から
ドラマ観て 本読んで お菓子食べまくって
ぐうたらしてたら ほれっ
えらいことになってまっせ
そんな声が聞こえてきました
どないしょ?
とりあえず ドラマ見てから考えよ
ヨンウォンの使者たち
第 四 章 閻魔国の守門将
第 五 節
「カン先生は、トイレで一体何をしてるんだろう?すごく長いんだけど。また、うっかりして家に帰っちゃったのかな?」
「退勤時間をかなり過ぎてますから、心配ですよね」
甲3が『カン・サム』という名前のついた自分の事務室に入っていった。
「俺はまだ、耳はいい。陰口は建物を出てから言うように。」
捜査官二人が思わずソファーから立ち上がろうとしたが、再び座った。敢えて立ち上がる必要はなかったのに、勝手に尻が上がったのだ。妙にこの人の前では気後れし、緊張した。明後日50歳だというのに、30代と40代の自分たちより遥かに若く見えるのも、何とも気に食わなかった。
40代の捜査官は、自分の淋しくなった髪を撫でた。甲3のフサフサした髪の毛が気に障った。白髪が1本も無いのだ。普段何を食べているのか、頭皮さえ見えなかった。目に付く全てを悪く言った。癇に障る程、実力も凄かった。甲3をめぐる多くストーリーも、彼を注視する要素となった。法医官になる前、優れた脳神経外科医だったカン・サム、手術室で患者が死んでしまい、再び生きている患者の体にメスを入れることが出来ないトラウマが生じ、しかもその患者の生死の確率は五分五分だったにも関わらず、罪悪感で挫折した心弱き男、これを克服できず、やむを得ずに遺体にのみメスを入れる場所に来たという、やや作為的なドラマのようなストーリーだった。あの世での事実はともあれ、この世では人間たちの口から口へと介してこの様にまとめ上げられた。訳アリな男は魅力的だ。なので、同じ男の彼らの目にも魅力的であった。変わり者で怖いが。
甲3は、トイレに行くと言って出かけて、こんなに遅く戻ってきた理由について何の弁解もせず、テーブルの上の写真で用件を切り出した。
「これをもう一度、調べてみてくれ。」
写真には、腐敗が激しく進んだ人の腕と手があった。
「この写真は何ですか?」
「8年前に発見された遺体の一部だ。」
「これを何故?」
「お前らが問い合わせた下肢の一部分と断面がほぼ同じ事件だ。また未解決で残っていて。そこのファイルの中に事件の詳細があるから読んでみてくれ。」
「これをどうやって見つけたんですか?」
見つけたのではなく、記憶していたのだ。今回入って来た下肢の一部分は、人通りの少ないバス停に堂々と置かれていた。まるで自慢でもするかのように。問題はちょうど二年前、同じ場所に同じ下肢の一部分が置かれていたということ。もちろん、他の死亡者のものだ。二つの遺体はどちらもまだ、行方不明者のデータベースで検索されていなかった。今回、再発見されてから急いでCCTVを設置したが、犯人が次にまたその停留所を利用するかは未知数だった。周辺のCCTVを全部探したけれども、疑わしい人物は見つけられなかったという報告だけを聞いた。
「8年前にその遺体が発見された時、ニュースにもなった。直ぐに忘れ去られたがね。」
その時は、山に行く道を間違えた人が、偶然に発見して通報したのだった。腕だけなら気づかずに通り過ぎるところだったが、相次いで手まで発見されたため、通報に繋がったケースだった。発見された部位が異なるだけで、三つの遺体は類似した点があった。切断面だけ類似しているのではなく、切断部位を分割するのも似ていた。殺してバラバラにして捨てた事件は、大半が死体を遺棄しやすくするために切断する傾向があった。なので、手と腕をあえて切る手間を省く場合がほとんどだ。足も同じだ。ところが三つの事件すべて、死体遺棄では無く、切断のための切断のような感じを拭うことが出来なかった。
8年前、遺体は腐敗が激しい状態で発見されたため正確には分からなかったが、最近発見された遺体は、たとえ一部分だけではあるが死斑がわずかだが形成され、血液が失われた形跡は見られなかった。死んですぐ、あるいは生きている時に切断した可能性が高いという初見だった。8年前、遺体が発見されたのに捕まらなかったところから来る自信感だったのだろうか?途中で何か心理的な変化でもあったのか?わざと遺体が発見されるように置いておいたのが、甲3の気分を害した。
「8年前の事件は、お前たちの隣の管轄だった。」
「同一犯の確率が高くなりますよね。」
「似たような事件を、もう少し探せないか?8年前、2年前、今年。何かもっとあるような気がするんだが?8年前から今回までの3件とも、切断処理が執拗にこだわっていて。一定の期間があったにもかかわらず。進歩がないという意味だ。普通、こういうのは進化するだろう。なのに8年前で既に完成形というわけだ。ということは、それ以前に試行錯誤を経て進化した可能性が高い。8年前と2年前の間隔が空いているのもスッキリしない。遺体が発見されていないだけとか?」
やはり恐ろしい。話し方から感じられる不気味さがあった。恐らく怒りを堪えながら、一言一言噛み締めながら言うので、そのように感じられるのかもしれない。
甲3が手振りで皆、出て行けと言った。用件は済んだということだ。待っていた時間より会話した時間の方が短かったが、捜査官たちの手に入った情報は、決して少なくなかった。彼らが挨拶をして事務室を出た。
甲3が脳神経外科を辞めて、法医学教室でまた勉強を始めた時にしても、この世で逆らう目的だった。一方で、死神は人間の遺体を詳しく見る機会がなかった。彼らが接するのは人間の魂であり、この世に置き去りにする遺体ではなかったからだ。これに興味があることはあった。月職達を解剖してみることは出来ないので、代替としての意味もあった。
ところが、ここに勤めるほどに彼の怒りは高まった。残忍に殺された遺体が入ってくると、その怒りはいっそう高まった。遺体が見つからなかった事件も、彼の怒りを刺激した。殺す、殺されるのは人間同士の問題だ。甲3はそんな事に腹を立てているのではなかった。
「そんなに殺したいなら綺麗に殺せ、頼むから。うちの善良な日職使者たちの魂を傷付けずに。ただでさえ人手不足なのに、前の番号の日職使者たちにまで問題が生じれば、大変なんだから。」
そうなのだ。彼が憤る理由は、人類に対する慈愛心のようなものではなかった。殺害現場に死者を迎えに行く日職使者たちを心配する気持ちから始まったことだ。
遺体が見つからなければ、この世ではその事件が発生しなかったも同然だ。しかし、あの世では違う。その事件は既成事実であり、殺害現場に派遣された死神は、その場面を見ざるを得ない。この世で誰も目撃した者がいないからと言って、おしまいと言う問題ではないのだ。この犯人が、再び殺人を犯さないように、必ず捕まえなければならない。日職使者たちが、再び殺害現場を目撃しないようにするために。
「まさか、既に1人のやつが、1件以上の殺害を目撃したわけじゃないよな?それならあまりにもダメージが大き過ぎるはずだが…」
********
シモは、あの世に戻ると直ぐに、月職支援室に向かった。ところが、そこには先に甲1使者が来ていた。
彼は担当職員と揉めていた。
「こんな事を要求されるのでしたら、いっそ私を追い出してください!他の担当者に変えればいいじゃないですか。」
「そんな大袈裟な。俺は、ただ…」
シモは、二人の間に割って入った。
「どうかしたのか?何で担当職員を怒らせたんだ?」
職員がシモに訴えた。
「甲25使者様、これを見て下さい。信じられません、こんな酷い物を作ってくれだなんて。どうしてこんな物を甲1使者様が着るとおっしゃるのか分かりません。」
シモは、職員が差し出した写真を見た。そこには、ジャージが写っていた。甲1が、平然として言った。
「楽そうだから。」
「楽だよな。」
シモがしばらく考えてから、職員に言った。
「これも安全服にしてあげなさい。まさか、使者庁に来ていくはずは無いだろうから。家で着るつもりなんだよ。」
「本当にそうなのですか?」
シモが甲1に、目配せしながら言った。
「家だけで着るんだよな?」
甲1がやむを得ず、うなずいた。どうせ、ヨンウォンの家に行く時に着ようと思っていたから、家だけで着るという話と大差ないと思った。そこでは服を脱ぐことが出来なかった。なので、あの世から気軽に来て出れば、大丈夫だろうと思った。ジャージは、彼女と見た目も揃う。ところが担当職員のモーレツな反対にあって、困り果てていたところだった。職員も渋々、承諾した。
シモが甲1を引き寄せてささやいた。
「君、使者庁にいながら、全く姿を見せなかったのか?」
「どこに?」
「少し前に、この世の診察室に雷帝が現れたじゃないか。」
「何?俺は連絡を受けていないが?」
「えっ?なぜ?」
他の誰でもなく、雷帝が現れた事件だった。しかも、この世でだ。雷帝と対敵できる五人のうち、この世に出てきている甲3を除けば、今すぐこの世にサポート出来るのは、甲1しかいないではないか。なのに甲1は全く知らなかったと?この非常システムは、なにか酷く間違っている。シモは急遽、センター長に電話をかけた。
┈ あの世に戻ってきたようだな。 ┈
「非常システムに異常があるのか?なぜ、この世の診察室に雷帝が現れたことを、甲1使者は知らないんだ?」
┈ 何?そんなはずは!雷帝関連の非常時は、我々使者庁の管轄ではないので、直ぐに何とも答えることが…
「議政府の管轄なのか?」
┈ そうだ。雷帝は、使者庁だけの問題ではないから。
「分かった。」
シモが電話を切った。
議政府が、雷帝の非常システムから甲1を、意図的に外したということか?何故だ?甲1を保護するために?今日ぐらいなら、甲3だけで十分だという判断からか?あるいは、まさか甲1と雷帝が出くわさないように?これは本当に理解できなかった。
甲1が聞いた。
「怪我をしたのか?」
「いや、何事もなかった。そうさ、何事もなかったが…」
急に甲1の担当職員が、明るい声で叫んだ。
「甲1使者様!これはいかがですか?ジャージより、こちらの方がずっとお似合いだと思いますよ。家で着るには、これほどの物はないでしょう。」
職員が開いて見せてくれたページには、シルクのパジャマの写真があった。甲1は、首を横に振った。パジャマが何なのか、その用途が何なのかは知らないが、ジャージより楽そうには見えなかった。何より、ヨンウォンと似たような服ではなかった。
「なぜ急に、服に対して好みが芽生えたのですか?」
「楽な服が欲しいんだ。」
シモが口を挟んだ。
「これは、君が望む服よりは、ずっと楽だよ。人間たちが、寝る時に着るんだから。」
「そうなのか?じゃあ、これで。」
「はいっ!では、首の部分だけもう少し上げて隠すように変えます。準備が整うまで、二週間前後かかると思います。」
「分かった。頼んだぞ。」
「受け入れて下さって、ありがとうございます。」
シモが大声で、職員たちに向かって言った。
「皆んな、聞いてくれ!それぞれ担当している月職たちの中に、身体の傷跡を見つけた者は手を挙げて。小さなものでもいいんだ。」
月職支援室中がざわめき始めた。初めは誰も手を挙げなかった。そのうちは一人が手を挙げた。
「私は庁長様の担当ですが。」
「あっ!手を下ろしてもいいよ。次!」
「私は、甲2使者様。」
「よし、手を下ろして。」
側にいた甲1の担当者もそっと手を挙げた。シモが分かったという表情で、手を下ろせと言った。
「前甲3使者の担当者は?」
一人の職員が前に出てきた。
「私が担当ですが、あの方は普段の行動とは違い、何の傷もありません。塵ほどのもの一つも。」
甲3が例外なのでは無く、月職なら、小さな塵ほどでもあるのは正常では無いのだ。また一人、職員が手を挙げた。
「君は誰の担当だ?」
「中央管制センター長様の担当でございます。センター長様は、背中に小さな傷跡が…」
やっぱり!何かを掴んだ気分だった。それでももっと探してみる必要があった。あらためて、職員たちに催促した。けれどこれ以上、手を挙げる職員たちは、結局現れなかった。シモが甲1と一緒に月職支援室を出ながら、再びセンター長に電話をかけた。
┈ 何でこんなに度々、電話をかけてくるんだ?
「いくら忙しくても、診察室に来い。」
┈ 今度な。人間の死が昼夜を分つのを見たのか?
「来ないなら、僕がそこまで攻め込むぞ。」
┈ チッ!もう少ししたら行くよ。きっかり五分だけな。
「それでも構わない。待ってるぞ。」
電話を切って、甲1に言った。
「僕は診察室に行かなきゃならない。君はもうしばらく、この世に行くことはないんだろ?」
「いや。土曜日に約束がある。」
「約束?この世で?」
「そうだ。ナ・ヨンウォンと。」
「あっ!君にはまだ、ヨンウォンさんの問題が残っているんだな。ところで、今度は何の事で出かけるんだ?」
「ヨンウォンが、家の外に出かけようって。俺と一緒に。あっ!もちろん俺は無体化で。」
シモが何かパッと閃いた表情で、人差し指を立てた。
「暴露治療!助っ人チャンスだな!なぜ僕はその方法を考えつかなかったんだろう?やはりヨンウォンさんは賢いんだね。」
助っ人チャンスとは、恐怖を感じる対象に対して暴露を試みる際に、他の人の助けを受けることをいう。どのみち、次の試みでは一人で取り組まなければならないのだが、最初の一二度の助けは悪い選択では無い。地下鉄事故が大きな衝撃だったし、その上三途の川を渡ってきたばかりで、暴露治療を勧められずにいた。それで睡眠検査からしようとしていたのだ。でもヨンウォンは途中で諦めずに、最適の助っ人、つまり無体化状態の死神を選んで、暴露治療を続けようとしたのだ。もちろん、この部分はシモの勘違いであったが、助っ人チャンスは直ぐに庁長に適用する価値はある。
「何処へ、どうやって行くの?」
「俺は分からない。ヨンウォンが勝手にやるって言うから。」
「そうだよな。暴露段階は、ヨンウォンさんが分かっているから。それじゃ、その日、僕も一緒に…」
「嫌だ。」
甲1が露骨に顔をしかめながら、一歩後ろに下がった。それでも安心できないのか、彼の足はもう二歩遠のいた。長い脚の歩幅だったため、距離がかなり遠ざかった。あの日、三人が一緒にヨンウォンの家に行った時、彼女とまともに向かい合って座ることさえ出来なかった。思い返しても、腹立たしかった。
「邪魔するな。俺たちは二人きりで行くよ。」
こんな風に鬱陶しいという表情が全身から出るなんて。以前の無表情の時と比べると、画期的な変化であった。
シモはしばらく考え込んだ。暴露治療に数人がついて行くのは、確かに邪魔になるだろう。しかし、彼女の暴露を参考人としてモニターする必要があった。甲1は戻ってきてちゃんと説明してくれる力量が無い。それなら方法は一つだけだ。
「邪魔するつもりは無い。ヨンウォンさんにとっても、二人だけで行動した方がはるかに役立つので。あっ!その日、僕もあの世からこの世に出勤するんだけど、一緒に行こうか?僕の診察室から行った方が君も楽だろ?」
「そうだな。じゃあ、その日、お願いするよ。俺たちも朝早くから会うことにしたから。」
シモは甲1に挨拶をして、診察室に行った。そして直ぐに、この世に向かった。シモが暗いこの世の診察室の中で、電話をかけた。バカ野郎にだった。
┈ 何でまだ、この世にいるんだ? ┈
「ちょっとまた来たんだ。急いで君に話す事があって。」
┈ 何をそんなに急いでるんだ?
「ヨンウォンさんが、無体化状態の甲1使者を助っ人にして、出かける予定らしい。」
┈ 助っ人だって?
「暴露治療の。」
┈ おおっ!いいアイデアじゃないか?ナ・ヨンウォンもやるなぁ。甲1使者を利用するとは、大胆にも。甲1使者はやってくれるって?
「やってくれるけど、鬱陶しそうだった。観察の対象だから仕方ないだろう。」
甲1が鬱陶しいのは、ヨンウォンでは無くシモだった。けれど、シモは分かっていなかった。暴露治療でなくても使者庁の立場としては、ヨンウォンを外で一度、観察してみる必要があった。なので、自らすすんで出てきてくれるなんて、幸いと言わざるを得なかった。
┈ ところで、それが急ぎの用なのか?
「僕達二人でついて回りながらモニターしよう。これをしっかり参考にすれば、庁長に直ぐに適用できるかもしれない。」
┈ いいね。患者であるナ・ヨンウォンには秘密にしないとな。そうしてこそ、効果検証が可能だから。甲1には事前に話しておくんだろ?
「邪魔するなとキッパリ言われたよ。僕達がやたらに手を出せば、それも鬱陶しいと思って、止めると言い出しかねないから。それで…」
何か、二人だけでいたいような雰囲気だった。それは、死神としては実に見慣れない姿で、甲1の冷酷さによる錯覚だとシモは思ってしまった。
「いや。」
「ところで、何で俺も行かなきゃならないんだ?」
「庁長の助っ人として、君を考えているんだ。僕はダメだから。庁長が暴走したら、僕の力では防げないから。だから君もモニターをしないと。」
┈ わかったよ。それなら何とかして時間を作らないとな。いつなんだ?
「今週の土曜日。」
┈ 俺は大丈夫だが、お前は?土曜日は病院があるだろ?
「午前中だから。日程調整しないとな、まぁ。」
┈ 分かった。どうにかして参加するよ。
電話を切ってすぐ、あの世のドアをノックする音が聞こえた。シモは直ぐにあの世に移動した。空間が広がり、内部も再び明るくなった。外にセンター長が立っていた。
「どうぞ。」
ドアがバタンと開いた。中にarmy靴が、ヅカヅカと入ってきた。
センター長が診察室に入って来るなり、少しズレていた家具が、瞬く間に動いて角度を合わせた。机の上の資料も綺麗に整えられた。センター長は、繊細な目鼻立ちの男だった。美しさでいえば、女の甲2に少しも引けを取らなかった。むしろ甲2の方が、強い容貌に見えるほどだった。だからといって、彼が男らしくないということでは無い。センター長は口調からも分かるように、荒っぽい奴だった。ただ、精神障害から来る症状が、彼の性格を遮っているようだ。
センター長のロングコートは、ボタン一つ乱れることも無く、綺麗にはめられていた。長い髪は高く縛って結い上げていた。そしてそこには、絶対に折れないあの世の木の枝が二つ、交差して簪代わりに刺さっていた。これは有事の際に、武器としても使うと聞いた。この木の枝以外に、彼の髪にはもう一つ刺さっていた。花模様が彫られた髪飾りだった。青銅で作られたこれは、あの世の物ではなかった。この姿は、普段のヘアスタイルだった。戦争が起きたり、この世の亡者たちを迎えに行く時は、飾りを外して髪を解いたそうだ。
センター長がソファーに座った。
「後、4分。それ迄に用件を済ませろ。」
「服を脱いで。」
「とち狂ってんじゃねえと俺に言われる前に、理由を話す機会をやろう。」
「担当職員の話では、君の背中に傷跡があるとか。」
「そうなのか?」
センター長はそれ以上話さず、立ち上がってコートのボタンを外した。コートの中は、ノースリーブのTシャツだけだった。なので、腕の筋肉がよく見えた。彼がシモに背中を見せるために後ろ向きになった。
「ほらっ!確認してみろ。」
シモがTシャツを下から上にたくしあげて、背中を調べた。職員の言葉通り、5cmほどの傷跡があった。他の使者たちと同じ傷跡だった。
「あった。」
「今まで知らなかったよ。」
「あまり目立たない。しかも背中だから。」
「どんな傷跡だ?」
「よく分からない。傷跡というよりは、ただの痕跡みたいだ。」
センター長は、身なりを整えた。コートまで瞬時に終えた。
「君の傷跡。よく思い出してみて。」
「分からない。俺たちはダメージを受けても、怪我をすることは滅多にないじゃないか。敢えて元凶を探すなら、もう雷帝しかないだろ?あの時も直ぐに治ったのに…」
「千年前は?」
「あの時は、楽勝だった。あっけないくらい。雷帝による体力の消耗もなかったし、この世の戦争で忙しかったが、今のように人手不足ってことも無かったし。」
「う〜ん……、わかった。君も今のように、ちょくちょく外に出てみろよ。この世忌避症じゃなくて、外出忌避症のようじゃないか。」
「自分の場を離れると不安で堪らない。用は済んだか?」
「まぁ、大体。」
「そうだ!非常システムを再検討して欲しいと議政府に要請しておいた。ここもまた、整備されるよ。」
用件だけ済ませたセンター長は、一秒の遅れも出さず、ドアを出て行った。そのまま真っ直ぐ、中央管制センターに直行するのだろう。シモは簡単に整理した。傷跡がある四人には、全員、精神障害がある。未だここまでが、ファクトに過ぎない。
おやおや
センター長って てっきりオジさんやと思ってました
どやさ?
イケメンパラダイスなん?
ドラマ化したらエライ事になりますやん
カビル 次はシルクのパジャマで
ヨンウォンちゃん家にお泊まりかしら?
今日も読んでくれはって
おおきにさんでございます