上差し  2024年8月14日(水)、上野駅付近にある国立西洋美術館で開催されている『内藤コレクション写本 - いとも優雅なる中世の小宇宙』の展示品を見学してきました。

 

 

下差し 2024年8月25日(日)まで特別展示室で展示されていますので、ご興味がおありの方は是非お立ち寄り下さい。

 

 

下差し 一応ね、2024年8月14日(水)には国立西洋美術館にいましたというアリバイになるように撮影しました。

 

※ 実は、この日の東京都内にあるイスラエル大使館前で反ユダヤ主義団体(以前、私と共に『日本へ犬肉輸入禁止せよ!』の活動をした人)によって抗議デモが行われるという話を聞いていたので、サイモン・ウィーゼンタール・センター(Simon Wiesenthal Center, SWC)にメールで通報しようかと思いましたが、それほどのことでもないかと思い国立西洋美術館の写本を見に行くことにしました。まあ、個人的に、それには私は参加していないということで。

 

 

下差し やっぱり、こういったマニアックな展示会にいらっしゃる方々と言えば、恐らくキリスト教徒か美術大学で写本などの研究をされている研究者の方々と思いますので来場者数はそれほど多くなかったと思います。

 

 

下差し 今回の『内藤コレクション写本 - いとも優雅なる中世の小宇宙』については、「2015年度に、筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史氏より、写本零葉(本から切り離された一枚一枚の紙葉)を中心とするコレクションを一括でご寄贈いただきました。」との説明がありました。熱心なキリスト教徒の方だと思います。

 

(画像提供:晴れときどき展覧会

 

 

 

 

下差し 15世紀にドイツの金細工師印刷業者ヨハネス・グーテンベルクによって印刷機が発明されるまではカトリック教会の修道院で日々修道士たちが羽根ペンを使って丁寧に獣皮紙(羊皮紙)髭文字(フラクトゥール)で手書きされていたことについては、日本人の非キリスト教徒の方でもご存じと思います。

 

(画像提供:Medieval Book Production and Monastic Life)

 

下差し 今回は、その国立西洋美術館で開催されている『内藤コレクション写本 - いとも優雅なる中世の小宇宙』に関係しているものの、少し違った内容をテーマに紹介というか、書かせて頂きたいと思います。

 

※ 実は現在でも中世時代に行われていたように獣皮紙(羊皮紙)を使用しないものの羽根ペンを使って髭文字(フラクトゥール)で手書きする作業を続けているカトリック系修道会があります。

 

その歴史は11世紀に遡り、フランスに本部がある「カルトジオ会(Order of Carthusians)」です。

 

 

 

 

下差し シャルトリュー (Chartreux) と呼ばれるカルトジオ修道会の修道士によって今日でも写本の作業が続けられています。

 

(画像提供:Hiking the Carthusian pilgrim path)

 

下差し 実際に現在でもミサ典礼書として使用されています。

 

(画像提供:In the Silence of the Word

 

 

 

下差し こんなに美しい色彩豊かな15世紀に描かれた時祷書を見ることができて感謝です。筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史先生が魅了されたことも良く分かります。

 

 

下差し 中世時代に写本の担当になった修道士たちは美しい絵を描く才能がなければなれませんね。

 

 

下差し 中世時代には医学が進歩していなかった為、当時の寿命が長くて50歳くらいまでと聞いていましたが、それから考えるとこれを描いたのは17歳くらいの修道士でしょうか?

 

 

下差し 2024年8月15日(木)は、カトリック教会で言う聖母被昇天の日になります。

 

 

下差し こちらは、イエス・キリストのご降誕の際に3人の天文学者たちが訪れたシーンです。

 


下差し 中世時代の時祷書はラテン語で書かれてあります。

 

※ 因みに、「キリスト教の平信徒のために書かれた個人用祈禱書。 時禱(正しくは時課)とは毎日の定時の祈禱をいう。」とサイト(コトバンク)に書かれてありましたが、中世時代に学校に通ってラテン語を学ぶことができたのは貴族階級や裕福な商人たちの子供たちであって、小作人や労働者階級の子供たちはドイツ語などの母国語の文字すら書けなかったとのことです。

 

 

下差し イエス・キリストのご降誕のシーンです。馬小屋に家畜もいて幼子イエスを拝んでいます。

 

 

 

 

下差し ここら辺で、実際に現在でも使用されている髭文字(フラクトゥール)で手書きされたミサ典礼書をご紹介したいと思います。

 

※ こちらのYOUTUBE動画を一部始終観て頂くと、どのように使用されているのかを知ることができると思います。

 

 

下差し 日曜日のミサ入祭の儀式で、その日に司式する司祭が聖堂に入ってくる際に侍者がミサ典礼書を両手に持って共に歩きます。

 

 

下差し これらの伝統的に受け継がれているミサ典礼書、祈祷書は貴重品として扱われます。

 

 

下差し 聖職者の方々がお辞儀しているシーンですが、祈祷書の左ページに絵が描かれているのがお分かりかと思います。現在でも中世時代から使用されているものを大切に保管しているものと思います。

 

 

下差し 実際に、一般的なカトリック教会のミサで使用されているミサ典礼書がこちらになります。印刷されたものですが、色彩や文章の最初の文字が大きく描かれていることなどを含めると中世時代のものと余り変化していないようです。

 

(画像提供:wiki - Roman Missal)

 

下差し 大体のミサ典礼書の内容は暗記されていらっしゃるとは思いますが、伝統的な儀式の習わしとして侍者がページをめくって司祭が読み上げます。

 

 

下差し 現在のミサでも、通常は司式する司祭の左側にミサ典礼書が置かれています。

 

(画像提供:Carthusians - Ordo Cartusiensis

 

 

 

下差し そして、こちらが司教定式書零葉と呼ばれるものです。

 

 

下差し 現在のカトリック教会のミサでもそうですが、ミサ中に司式する司祭が唱えるセリフにグレゴリオ聖歌っぽいメロディーが付いています。ラテン語にしろ、英語にしろ、日本語にしろ、世界中の言語でセリフが訳されているもののメロディーは同じです。

 

 

下差し そして、伝統的なラテン語のトリエント・ミサになると司祭がお説教の前に聖書朗読する儀式でも、その聖書物語の読む箇所にグレゴリオ聖歌のようなメロディーが付きます。大体、聖書の1章くらいの長さの文章を丸ごと読みますが、それでもメロディーが付きます。

 

※ 余談ですが、私が毎月2回ほど参加していた在日ウクライナ正教会の礼拝でも日本語で聖書を読む際にメロディーが付けられます。

 

 

下差し 遊び心かは分かりませんが、グレゴリオ聖歌の歌詞の最初の大文字に可愛い虫のような装飾がされています。

 

 

下差し 現在でも髭文字(フラクトゥール)で手書きされたり、美しい挿絵などが入ったものではないものの、ラテン語で書かれた祈祷書やミサ典礼書が使用されています。

 

(画像提供:Carthusians - Ordo Cartusiensis

 

下差し 活字体で印刷されてはいますが、伝統的なラテン語のグレゴリオ聖歌が印刷された祈祷書を大切に使い続けているようです。カトリック教会の伝統を中世時代のまま残し受け継いで行きたいですね。

 

(画像提供:Carthusians - Ordo Cartusiensis

 

 

下差し こちらが、その現在でも使用されている髭文字(フラクトゥール)で手書きされたミサ典礼書や祈祷書を製作して下さっているフランスに本部がある「カルトジオ会(Order of Carthusians)」での生活の様子を配信したYOUTUBE動画です。製本するシーンも出てきます。

 

※ 外部との接触を一切絶ちフランスの山奥で生活し、イギリス人俳優ショーン・コネリー主演の映画『薔薇の名前(The Name of the Rose)』のシーンを思い起こされるような神秘的な宗教的世界観の中で生きている修道士たちがどのような人生を送っているのかを知ることができます。ある意味では、こうして自分の特技を生かしながら神さまに使える人生もいいなと思いました。