ふらっと、服を買いに古着屋までやって来た、良樹
折角の休日だというのに、なんとも一人で買い物とは少々
情けない思いで、車を走らせていた。
2ヶ月前に、彼女にあまり構わない性格が講じて、
振られてしまい、それからというもの恋愛に関し、
積極的にできなくなっていた。
入り口のドアは昔ながらの手動であった。
ドアを何故か勢いよく開けてしまい、そこには店員さんが
すぐそこにいた。
「いたぁ~いっっっっ。」
どーんと思いきって当たってしまったらしく、
少し、飛ばされたカッコウで、向こう側に弾かれた若い女性の
店員さんが横になってしまった。
「大丈夫ですか!!」
慌てた良樹は、直ぐ彼女の元に近寄り、うずくまった。
非常に心配そうな表情で、顔にはもう既に汗が一杯だった。
「すいません、勢いよく開けてしまって…。」
非常に申し訳なさそうに言ったが、その言葉は小さい。
「えぇ~大丈夫ですよ、すいません店小さいものですからぁ~。」
そうだった。確かにここの店は小さいのに気付いた良樹は
「本当にすいません、体大丈夫ですか。」
「えぇ~本当に、急に開いて、びっくりしているだけですからぁ。」
店員さんはひょいと何でも無かったように、すっとたった。
良樹は、手も貸さずにすっと経つ店員さんの姿を静かに見ているだけで
何も、出来ずにいた。
「もうホント大丈夫なので、ゆっくり見ていってくださいねっ。」
何事も無かったように、店員として振る舞い、笑顔でレジの中に
入っていった。
その時、良樹はちらっと胸あたりの店員さんのネームバッチを見た。
「片山さんかぁ~。」
名字しか見えなかったが、名前はしっかりとインプットした。
ここで何も買わずにいたら、男が廃るので、いつもより多めに買おうと
思って張り切って、服選びにはいった。
というものの、しょっちゅう来ている店だけに勝手はしれており、
1週するのにも、そう時間は掛からない。
それにしても、あんな女性店員さんいたっけなぁ~と何度も
思い出したが、女性店員さんが居たためしが無かった。
彼女が居たから、目に入らなかったのか。いや、そういう訳でも
なさそうだ。デート中とかも、やっぱりカップルで歩いていると
どうしても、違う彼女に目がいってしまう。
自分の彼女さえも、他人の彼氏の目がきになるって
言ってたしなぁ~。
最近入った子なのかと、それほどその時は気にはならなかった。
結局服は、春物のロングTシャツと、それに合わせるジャケットを
選び、レジに差し出した。
「これお願いします。」
「はい、分かりました。さっきの事気にしないで下さいねっ。」
事故の件は彼女から切り出してきた。
とても自然に言ってきたものだったので、面をくらった。
「いやいや、そういう気遣いなかなか出来ないですよ。
ありがとうございます。こちらが悪いのに。」
二人とも、なんだか気恥ずかしい様子で、目を合わさずに
そっと笑っていた。
「お会計が、12312円です。」
「あっ、じゃあこれでお願いします。」
お札をだして、お釣りを受け取った。
「又来ますんで。で、最近ここ入られたんですか。」
「えぇ服屋さんで働くのは初めてで、先月入ったばかりなんですぅ。」
やっぱりそうだったのかと確信したのと、少しほっとした良樹だったが、
ついでに、もう一度ネームバッチもすかさず見ていた。
『片山由愛さんかぁ~。』
かなり上機嫌で、店を後にした、休日であった。
次の休みは丁度1週間経った同じような時間帯なので、
またその店に出向いた。
良樹は、警備会社勤めなのでシフト制で休みが不定期だったが
今回は運が良かった。
店の前に立ち、前の失敗が無いように、そぉっとドアを開けた。
「いらっしゃいませぇ~。」
聞こえたのは、男性の声だった。しかも顔なじみの店長。
「おっ、一人でどうした?とうとう別れたかぁ。」
豪快な口調で、言葉をはやし立てる店長は嫌いではないが
少々苦手な感じだが、毎回よくしてもらっている。
「えぇ~まぁ~、そんな感じっす。」
「そうか、そうか、そんな感じかぁ。まぁ~山あれば谷も湖もあるさ。」
相変わらず自分の言葉にアレンジをする店長だった。
良樹は思い切った。
「あのぉ~、すいません。働いている女の子いましたよねぇ~。」
「おぉ片山か?ここ最近休んでるんだよ。なんだか、体調悪いって言って。」
「そうなんですかぁ…。体調が。」
この間の自分との衝突が原因なのかと、かなり勝手に落ち込んだ。
「ついでなんですけど、どの辺に住んでいるとかしってます。」
「あの子だったら、駅前のマンションらしいけどなぁ~、
なんでだ?お前別れたばっかりというのにぃ、直ぐに手をだすのか??」
店長は声を荒げたが、良樹はこの間のいきさつを話し始めた。
「そうかぁ~、そんな事があったのかぁ。何も話聞いてなかったなぁ。
悪かったなぁ、本当に。」
「いいえそれはいいんです、でもそれが原因だと自分が悪いし、
この間は本当に何でもないって、もしかしたら無理したのかもしれないし。」
ますますきになる良樹を悟ったのか、店長は
「じゃあ家まで行ってみるか?俺も入ったばっかりでさぁ~なんか
まだなれない感じで。多分お前の方が、受け入れやすいだろう。
俺が気になって、俺の代わりにお前がお見舞い行くっていうのは
どうだ?」
ニヤニヤしながら店長は言った。
「なんか、下心たっぷり見たいで嫌なんですけどぉ~。」
でも悪くはないなと、少し渋りながらも
「じゃぁ~それでいいですよぉ、ちゃんと連絡しておいて
くださいよぉ~。」
逆転から好転に転じた感じで、意気揚々と店をでた。
途中の花屋では小さなブーケタイプで花を購入し、
駅ビルでは、食べやすいようにプリンとゼリーを買った。
駅を抜けて、向こう側に来た良樹は目の前にある
マンションを目指した。
「あそこかぁ~、いい所住んでんだなぁ~。」
マンションのロビーにつき、セキュリティー勘定な感じの
インターホンの前に立ち、店長から教えられた部屋の番号を
恐る恐る押した。
「あっあぁぁぁ。」
少しのどを鳴らし、緊張が伝わらない様に練習をした。
「もしもし、どちら様ですかぁ。」
か細い声が、インターホンから聞こえてきた。
「あっ、自分は店長から頼まれてというか、心配でというか。。
この間、ぶつけてしまった、加藤良樹といいます。」
「この間のぉ~、さっき店長から連絡貰ってびっくりしちゃって。
もう本当に大丈夫なんで、心配してないでくださいねっ。」
「えぇなんか、自分のせいかなぁ~とか勝手に思いこんじゃって。。
すいません。本当に。
あっ、でも一応お見舞い持って来たので、配送ロッカーの中
入れておいていいですか?」
「えっ、でも折角なので、持ってきてくださいよぉ~
なんか気を使わせちゃったみたいで、スイマセン本当に。」
お互い最初から”謝罪”ばっかりだ。
「じゃあ、渡すだけ、お邪魔します。」
かちっと、自動ドアのロックが開く音がした。
前に進み、エレベーターに乗り5階のボタンを押した。
5階に着き、前の扉が開くと底にはカーディガンを羽織った
由愛が居た。
「おぉ~。」
いきなり立っていたので、驚きの声を上げてしまった。
「ごめん、驚かせるつもりではなかったんだけど、
迎えに行こうと思って、立ったらここまで来てて。うふふ。」
病気の表情は一切見れなく、元気そうで良樹は安心した。
「ありがとう、ここまで来てくれて。あっこれお見舞いねっ。」
「いいのぉ~なんか…。」
「また、ごめん?それはなしにしようよ、自分らごめんとか
スイマセンとかしか言ってないでしょ?」
それもそうだと、お互い笑いあった。
「プリンとゼリーだぁ~ありがとう!チョー嬉しい。」
普通の女の子になった。
嬉しそうな表情と、目をキラキラさせていたのが印象だ。
「じゃあ、元気そうな姿見れたから良かったよ。ありがとう。
俺そろそろ行くわ、無理しないようにねっ、折角良くなったんだから、。」
「うん、ありがとうねっ。直ぐ元気になって、又店に立つから。」
最後まで笑顔で見送ってくれた。
特にこれからの事や、自分の気持ちなんては伝えてはいない。
何故か、彼女の気持ちとか問題にはなってなかった。
問題なのは、自分がどうしたか、何ができるかだった。
良樹は晴れ晴れとした気持ちでマンションを後にした。
由愛は部屋から良樹が見えなくなるまで見送っていた。
二人が付き合うまでにはそう時間が掛からなかった。
この時の気持ちが嬉しかったのだ。
人柄と気持ちがお互いに引き合った。
言葉は要らない。
そんなときもある。
なんとなくと言うのが本当だ。
お互いがお互いに引き合う事態はいつ何処でも起きるもの。
それは導かされるものでもなく、意図も簡単にそれが必然
だったように起きるものだ。
その後は、どうなるかは誰も知らない。。
~FIN~