次の日は妹に起こされた。


 リビングで、包帯を巻こうとして、そのまま寝てしまっていたようだ。


 「おねぇちゃん、もう朝だよ、早く部活行かないと…。」


 隣には母親がすごい形相で立っていた。


 「あんた、その腕の傷どうしたのぉぉぉ~!」


 かなりのお怒りだ。はぁ~いやになるなぁ~…


 でも、何とかうそを突き通さないと…


 「まぁ~転んで、ブロックに腕を切っちゃって…」


 はぁ~また嘘をついた。これも、自分の中では罪悪間になるんだよなぁ~と思いながら。


 「そうなの、それにしてもすごい傷。部活できるの?」


 時折みせる、親の顔にかなりびっくりしたが、それも少し嬉しかった。


 はて、どうしたものか。確かに傷の修復は早いが、それでも目立つ。


 リストバンドをして、何とか今日は乗り切るか。


 昨日は”あいつ”の家に行っていた事が気になったが、足早にトーストと、コーヒー牛乳を



 ほおばり、家を後にした。

 
 7月も下旬に入り、目の前には8月で照りつける太陽が痛い。


 いつもの学校への道には、時々タイムゾーンの空間の様に


 あの時の記憶がよみがえる。それを乗り越えようとしても乗り越えられない。


 そんな苦痛をかみ締めて、メンバーの前では勤めて明るく振舞う自分と、


 元気を出さなければならない自分との葛藤が始まっている。


 
 8時には学校へ着いて、9時からの準備に追われていた。


 体育館の中はもう、朝からの高い気温で熱気に満ちていた。



 
 私は練習メニューを聞きに、顧問の先生の所に向かった。


 「今日は秋の新人戦の、実践練習を折り込んで行きたいともいますが、いかがですか?」


 「わかった。ただし、基本練習は②セットやってからだね。まずは1年生の出場も、今の


 2年生の力からいったらありうる話だ。その点もしっかり見極められる様にしといてな!」



 「はいっ、わかりました。」


 ”あいつ”がいないだけで、これだけ、楽しく出来るのかと思うと、嬉しくもなったが、それでも


 いつまた来るかわからない恐怖におびえている。


 でも、今は特に考えられる事がないので、打ち込みやすい環境だ。その点は大きく違う。



 体育館に戻り、みんなに練習メニューを伝える。一斉に回りにちり、ストレッチからの開始だ。


 この円になる瞬間に、ふと再度気合が入る。


 よっし、やぅったるでぇ~そんな気持ちだ。


 一汗かくこの時、自分自身の覚悟をしっかり見極める。


 練習に打ち込み、一心不乱に取り組むこの時を大事にしたい。


 

 途中での休憩時、後輩の鈴木が、こう申し出てきた。


 「キャプテン。ひとつ相談があるんですけど、練習終わったあと、時間くれますか?」


 「いいわよ、自分でやれることであれば遠慮なくどうぞ!じゃああとでねっ。」


 なんか、そういったものの鈴木の顔が暗い。


 なんかに取り付かれているみたいだ。自分もマイナスの自分の時はこうなるのだろうか…と


 少し不安になった。



 蒸しかえる、夏の午後の新たなる出来事だ。

駅に着き、21時を過ぎていたため、帰りは一緒に歩くことにした。


 駅から大体30分くらいのよりだが、この距離でも会話が途絶えることはなかった。


 意識しているわけではないが、啓太のごく深さを感じた。


 途中で、分かれるのだが一体全体に、恋心が浮かんでくる様子もない。


 よき友人として、今後も一緒に付き合えたらと再認識したが、本人はどう思っているかわからない。


 私に?とは全然思わないのだが、告白されて、その後気まずくなるのだけは


 避けたいと思った。


 浮かんでは消える”あの人”への気持ちは変わりそうもない。


 
 二人は月明かりの下、別々の家へと向かった。


 さて、この後どうお咎めが来るか、少し期待をしていた。


 それでも、怖い思いはないが、攻められると更に自分を責める。


 あの行為だけはやめられそうもない。いつしか、どこかしらでも浮かんでくる


 「切りたい」という気持ち。自分でなんでもそうなるのかはわからない。


 でも、気持ちが落ち着く最善の行為になることは間違いなかった。


 
 インターホンを押した。中から、声がしない、返答もない。


 もしかしたらと思い、自分のベルを見た。
 
 メッセージが1件入っていた。妹からだ。


 「オソクナリマス。ミンナトイッショデス。」


 どこかに行っているのだろうか?そう思いながら鍵で玄関を開けた。


 のどが渇いたので、直で冷蔵庫に向かった。開けようとしたら、一枚のメモを見つけた。


 「27日、島田宅へ呼ばれ、食事会」


 その瞬間息をのんだ。”あいつ”の家にみんな行っているのだ。


 なんで、私だけ母親から言われなかったのだろうか?


 あえて言われなかったのか?それとも、両親もよく思っていないのか?


 父親は毛嫌いしているのはわかっていたが…どうしてだろ。


 右手に持ったコップがプルプル震ええてきた。


 動機が激しくなり、暗い闇にどんどんす吸い込まれていく。


 
 また今夜も、「切りたい」気持ちになりそうだ。


 時間も22時に過ぎようとしていた、明日は練習だったので、お風呂に入って、


 早く寝ようっと。


 お風呂に入った。そのとき、右手に持った、かみそりが、言うまでもなく私の左腕を


 傷つけた。一瞬気を失いそうになり、くらくら頭がしたが、それでも快感が過る


 しばらく流れる血を見つめ、もっと、もっとと思うようになる。傷の深さは自分でもわかる様に


 なり、致命傷までは出来なくなっていた。それでも、傷は残る。


 夏場でも長袖、リストバンドは必須品になっていた、ころだった。




 この先は、長い長いトンネルの旅が始まる。

私達は20時を過ぎてしまったので、一応お互いの家に連絡をするようにと、


おばあさんから言われたので、そのとおりにした。家には誰もいなく、妹のベルにメッセージを入れて、帰ることにした。


あっ、私名前聞くの忘れた…そうつぶやいたら、横に歩く、啓太がぷいっと横をむいてしまった。


かわいいやつ、ふふふふふ。


 鎌倉に向かう道沿いは、丁度海からまっすぐに北に伸びていて、道にそって風が吹いている感じがした。


 それは、まるで海から送くられた、ミストのプレゼントで、私を包んでくれる。


 気持ちもそうだが、何かすがすがしさを感じせずにはいられなかったので、心地よく空気を思う存分に楽しんだ。


 ここに、つれてきてくれた啓太にももちろん感謝だが、運命的な出会いをしてくれた、この奇跡に感謝をしたい。


 人の出会いは偶然と必然は=(イコール)というが、イコールだったら違う言葉を並べなくてもいいじゃないかと


 自分は思い続けている。
 


 だから、自分の考えは、必然と偶然の重なり合いで構成できている仮説を自分なりに考えている。


 予期できる、行動予定が必然で、予期せぬ出来事が偶然であると今まで思い続けています。


 なかなか、自分自身の考えはバラバラになることが多いのだが、それでもこれは確実に思えることだ。


 
 
 駅に着いたので、ふと時間を見たら20時を過ぎていて、横浜に着くのが20時半を過ぎる。


 どこから地下鉄なので、21時と家に着くのが予想されたので、またベルを打った。

 
 電車の中では、横ではさっきの事を忘れたかのように、啓太が今日の映画と、今度を見る映画を



 淡々と語りだし、私は面白そうに装い話に聞き入った。


 何の話をしているかはわからなかったが、それでも雰囲気は良かった。

 
 私は名前も知らない、あのか”彼”の事を考えていた。


 次はどんな出会いがあるのだろう、どこに向かおうとしているのだろう、


 なんか、楽しくなってきたかもと思い、静かにほくそえんだ。



 自分自身の未来のために、またまだ癒えない自分の心のためにも…