その5
第1章 出来事

それは、子供達が心おどる正月の出来事だった。。。「のび太さぁ~ん。羽子板で一緒に遊びましょうよ。」
「うん。やろうやろう。」
しかし、運動音痴なのび太は、あっという間に真っ黒な墨だらけの顔になった。
「よ~し。今度は負けないぞ。」
「え~い。」

のび太が打ち上げた羽は、とんでもない方向へ飛んでいき、大きな木のてっぺんに引っかかってしまった。
「ごめ~ん。僕取ってくるよ。」
「あんな木に昇るとあぶないわ。あきらめましょうよ、のび太さん。」
「だいじょぶだよ。」
そういうと、少しは頼りになる所を見せたかったのか、のび太は大きな木をのぼり始めた。
「のび太さん、降りてきて~。危なくてみてられないわ~。。。」
上に昇れば昇るほど、足をかける枝は細くなる。その時である、 バキッ!!! 乾いた枝が折れる音とともにのび太が落ちた。
「きゃ~~~~~ぁぁぁぁぁぁぁ。」
ドスン!鈍い音がした。この木はどれぐらいの高さなのだろうか。何メートルあるかはわからないが、のび太としずかにはとても大きな木に見えた。

第2章

「のびちゃん!のびちゃん!」
「のび太! おい のび太!」
「のび太くん!のび太くん!」
「のび太さん!のび太さん!」
ここは私立病院。不幸な事にのび太は頭から落下し、意識を失っていた。ママ、パパ、ドラえもん、しずかが、涙を流し、必死にのび太に話かけている。連絡を受け、ジァイアン、スネオも駆けつけた。
「おばさん。のび太はだいじょうぶなんですか?」
「うぅぅぅうぅぅぅ。」
ママはその場に崩れ座り込んだ。
「手術をしなければ、このまま、、、ずぅ~っと このまま、のびちゃんはこのまま、、、植物人間のようになってしまうんだって。。。」
「じぁあ手術をしてのび太を助けてよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「失敗すれば、死んじゃうかもしれないの・・・・・・・。」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。」
「おい。ドラえもん!!!!いつものように何とかしろよ!タイムマシンだとかなんかあんだろ!」
>「そうだ!そうだ!何とかしろっ!」
「・・・・・・・・・・・・・できないんだ・・・・・・・。」
ドラえもんの脳の中に「生命救助」に関する禁止事項プログラムがある。そのプログラムの中の111059841行目に、このような命令がある。

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歴史を壊す可能性大。生命を直接的に救助する事を禁ず。
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この事実をドラえもんはみんなに告白した。
「この役立たずロボット!」
「お前なんか未来へ帰れ!」
「みんなごめん。。。。。僕はのび太くんの為に未来から来たのに。。。」
ボカッボカッ!!!ジァイアンはドラえもんを殴った。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅ。ごめん。。。」
ボカッボカッ!!!
今度はドラえもんが自分で自分を殴りつけた。
「たけしさん!ドラえもん!もうやめて! 私が悪いのよ。 私が一緒に羽子板遊びなんてしなければ。。。」
しずかは自分を責めた。
「いいえ。みんなのせいじゃないわ。。。」
ママの声が、みんなに届いたかどうかは定かではない。

第3章 未来へ

それから1週間。のび太の意識はいっこうに戻らない。
「先生。手術の成功率はどのくらいなのですか?」
「・・・・・・・・・・いままでの成功例から言いますと、20パーセント以下です。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「でも、このまま何もしなければ、のびちゃんは・・・・・・。」
手術をしなければ、のび太は生命すら危険な状態であった。しかし、手術の成功率は絶望的に低い上、手術にかかる多額の費用も野比家にはあるはずもなかった。
「20パーセントでも、助かる確率があるなら、手術して、のび太くんを助けましょうよ。」
できすぎがママに言った。
「僕、クラスのみんなにカンパを呼びかけます。」
「よし、できすぎ!そうしようぜ。」
ママの目にまた涙がこみ上げた。しかし、いままでの涙とは違う別の涙だ。みんなにこんなに愛されているのび太。。。ママはのび太を産んで本当に良かった。そう思った。そう思ったら、涙があふれた。

---数日後。

もう決断しなくてはのび太の命が危ない。できすぎや、ジャイアン達が集めてくれたカンパも微々たるものだった。成功率は低いが手術をしなくてはのび太は助からない。しかしそんなお金はどこにもない。
「だめか。。。。」
「パパ!そんな事言わないで!うううぅぅぅぅぅ。」
「すまない。ママ・・・・」
ママとパパは我が子の為には命さえ、惜しくないと思った。しかし何もしてあげられない自分達に無性に腹が立った。
「ママ、パパ、お金は僕が何とかするよ。僕はのび太くんの為に未来からここに来たんだ。絶対にのび太くんを助けてみせる。」
「ドラちゃん。。。。。。」
ドラえもんはそう言い残すと、家に帰り、引き出しの中のタイムマシンで未来へ戻った。

第4章 急げ!

ドラえもんは21世紀に帰ると、真っ先にリサイクルショップへ向かった。「いらっしゃ~い。」
無愛想なロボットの店員がドラえもんを迎えた。
「これ全部売りたいんだ。」
「全部????」
「そう。全部だ。」
「本当にいいんですね?」
「はやくしろっ!」
ドラえもんは何と、4次元ポケットの中の道具を全部売り払ってしまった。額にすると、どこかの惑星を1つまるごと買えるぐらいの金額だ。
「ありがとうございました。2.68秒後に、あなたの電子マネーの口座に全額振り込まれます。」
「またのお越しをおまちしております。」
それを聞かない内に、ドラえもんは店を飛び出していた。のび太くんを絶対に助けてみせる。。。。ドラえもんの頭は、その事でいっぱいだった。オーバーヒート寸前だ。いや、もうすでにドラえもんの内蔵コンピューターは、すでにおかしくなっていたのかもしれない。。。ドラえもんは次に、宝石博物館へ向かった。この時代、ほとんどの宝石は人工的に作られて、天然の宝石は、莫大な金を積まなければ、手に入れる事は出来なかった。
「いらっしゃいませ」
人間女性型ロボットが迎える。「ご見学ですか?」
「いや。天然のダイヤで一番大きいのください。」
「少々お待ちください。」
女性ロボットはそう言うと、奥のスタッフルームへ入っていった。数分後、10人のガードマンロボットを引き連れ、館長らしき人が出てきた。
「あなたですか?天然の一番大きいダイヤをほしいというお客様は。」
「そうです。売ってください。」
「本当ですか?とてもあなたのような方が買える代物ではありませんよ。」
館長は明かにドラえもんの事をバカにしていた。
「お金ならあります。見て下さい。」
そう言うと、ドラえもんはマネーカードのバランスボタンを押し、残高を館長に見せつけた。
「お  おおおおお」
「す すいませんでした。どこぞの大富豪様にお仕えしているロボットだとは。。。」
「今すぐそのダイヤをお見せいたしましょう。」
全く、現金なものだ。商人あがりの人はいつもこうである。館長は奥の金庫から大きな箱を大事そうにかかえ、再びドラえもんの前に現れた。ゆっくりとその箱を館長が開ける。。。
「どお~ですか。この輝き。すばらしいでしぉ。私のコレクションの中では最高です。」
ばかでかいダイヤだ。その大きさはドラえもんのこぶし位ある。
「このお金全部払うから、そのダイヤをください。」
「ぜ・全額いただけるのですか?」
「そうだ。早くして。」
「はいわかりました。」
ドラえもんはダイヤを受け取ると、店を飛び出し、のび太くんがいる時代へとタイムマシンで再び戻った。現代で、ドラえもんはダイヤを宝石コレクターに売り、のび太の手術費を作った。その宝石コレクターの孫が、21世紀で先ほどドラえもんがそのダイヤを購入した宝石博物館を開く事になるとは、ドラえもんは知るよしもなかった。

第5章 「友達」だということ

「今夜が山場ですね。手術を行わなければ、命が危ないです。」
先生がママに言った。ママはその場に崩れ倒れた。その時である。バタンッドアが勢い良く開くとともにドラえもんが、病室に飛び込んできた。「のび太くん!」
「ドラえもん。こんな時にどこ行ってたんだよ!」
「ごめん。のび太くんの手術費を作る為に、ポケットの中身を全部売ってきたんだ。。。」
「え?本当か?これでのび太は手術できるのか?」
「ママ。。。このお金でのび太くんを助けてあげようよ。」
「ドラちゃん・・・・・・・・・ありがとう・・・・」
「先生。おねがいします。」
迷ってる時間はない。パパは先生に手術をお願いした。
「よし。緊急手術を行う。大至急手術室へ運んで!」
病院内に緊迫した空気が一気に張りつめた。手術室は1階のB棟だ。みんなも、意識のないのび太をのせたベットの後を追った。「全力をつくします。」
ドアが閉められると、手術中のランプが点灯した。3時間位たっただろうか。。。
ママとパパは親戚に連絡をとり、近い所に住む親戚はもうすでに駆けつけていた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
みんなが驚いた。ジァイアンが突如大声を張り上げたのだ。近くの看護婦が大声の元を探して、こっちへ来た。「ここは病院ですよ。他の患者さんも居るんですから大声ださないでください。」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
「静かにしてください。」
「のび太ががんばってるっていうのに、何もしてやらないのが友達って言えるかっっっっ!!!!」
「のび太は俺様の友達だっ!!! いじめる事もあるが大事な大事な友達なんだっ!!!」
「フレ~!フレ~!の・び・太~!フレッフレッのび太!フレッフレッのび太~!」
看護婦はジァイアンの迫力に驚いた。そしてみんなもジャイアンの後に続いた。
「がんばれ~のび太~!」
「のび太さん~。絶対に負けないで~!」
「がんばれがんばれ のっびっ太!」
「のび太く~ん。ファイト~」
「野比~負けるんじぁないぞ~!」
みんなの声援は館内中に響きわたった。看護婦はみんなののび太を思う気持ちに心を打たれたのか、それ以来無理にやめさせようとはしなかった。

第6章 不幸

手術中のランプが消えた。8時間におよぶ、大手術だった。
「やった~終わったぞ。のび太は助かったんだぁ。」
「やったやった~。」
クラスのみんなは、抱き合って喜んだ。ドアから手術を終えた先生が出てきた。その白衣は赤く染まっている。
「先生っありがとなっ。」
ジァイアンは泣きながら言ったが、先生は笑顔を見せなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「のび太くんが直る見込みはありません。思ったより、病状がひどく。。。命をとりとめはしましたが、それが精一杯でした。。。」
「え?・・・・・・・・・・・」
「どういう事ですか?・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「命はとりとめましたが、のび太くんはこのまま意識が戻る事はありません。・・・・・・植物人間です。。。。」
「そんなっ!うそだっ!」
「嘘ですよね先生!」
「我々、この病院の名医と呼ばれる医師全員で、全力を尽くしました。」
「もうしわけございません・・・・」
バタッのび太のママは気を失って、倒れてしまった。
「そんな・・・そんな・・・・のび太が・・・・のび太・・が・・・の・・・び・・・・ 嘘だぁぁぁぁぁ!!。」
「昨日まで元気だったのび太さんが・・・嘘よ。そんなはずないっ」
ダダダダダダッ みんな手術室に駆け込もうとした。
「いけませんっ!のび太くんは手術は終わりましたが今は危険な状態ですっ。あちょっと!入ってはダメです。」
「うるせ~!!!!!!」

最終章 さよならドラえもん~~みんな友達~~

忙しい1月が終わろうとしていた。3日間降り続いた雪もやみ、今日はお日様が燦々と輝いている。いつものように平和な1日が始まろうとしている。ただ1つ、のび太の病室を除いて・・・・・。
「のびちゃん♪ 学校行かないと遅刻するわよ。 それにしてもかわいい寝顔だ事♪」
ママはショックのせいでおかしくなってしまったのだろうか?毎日毎日、朝から晩まで、のび太に話しかけている。ママはどれほど寝れない日が続いたのだろう、今ではガリガリにやせ細ってしまった。のび太の寝顔はまるで天使のようだ・・・・・。パパも会社を辞め、毎日のび太のそばにいる。ドラえもんはあれ以来、誰とも口を聞かなくなってしまった。
ちょうど小学校が終わる時間・・・・
「おばさ~ん。のび太は?」
ジャイアンを筆頭に今日もクラスのみんながお見舞いにきた。
「あら剛くん。 今日はのびちゃん まだ起きないのよぉ、しょうがない子でしょ?のびちゃ~ん、クラスのみんなが来たわよ。ほらっ起きなさい!」
「おばさん・・・起こさなくていいよ。まだ寝かせてあげてよ・・・まだ眠いんだよ、きっと・・・・」
「そお?ごめんなさいねぇ。せっかく遊びに来てくれたのに。」
「ドラえもんっ元気だせよっ」
「のび太は死んだ訳じぁないさ。」
「・・・・・・・・・・・・・・みん・・な・・・・・・・・・。」
ドラえもんが口を開いた。堰を切ったように、いままで我慢してきた涙が一気にドラえもんの目からあふれる。
「みんな・・・・僕、のび太くん大好きだから、病院で寝たきりののび太くんをどこかに連れていってあげたいんだ・・・・」
「パパ・・・ママ・・・・・・・いいでしょ?僕はのび太くんの為に未来から来たんだ・・・・。」
「ドラえもん・・・・・。」
「ドラちゃん・・・・・。」
そういうと、ドラえもんは空っぽのはずの4次元ポケットから、「どこでもドアー」を取り出した。ドラえもんは何かあった時の為に「どこでもドアー」だけは売らずにとっておいたのである。ドラえもんは「どこでもドアー」を狭い病室の中に立てると、寝たきりののび太に話しかけた。
「のび太くん・・・・どこに行きたい?のび太くんの好きな所に一緒に行こう。僕達、いままでだってどこに行くにもず~っと一緒だったもんね。」
ドラえもんはそう言うと、のび太を背中におんぶした。
「どっこいしょ。 重くなったねぇ のび太くん・・・・。」
のび太を背中に背負ったドラえもんは「どこでもドアー」の前に立って、もう一度のび太に聞いた。
「どこに行きたい?ねぇのび太くん。」
答えが帰ってくるはずはなかった・・・・・。しかし、一瞬みんなにはのび太が笑ったように見えた。幻だったのかもしれない・・・・。
「わかったよ。のび太くん。 そこへ一緒に行こう・・・。」
ドラえもんには何か聞こえたのだろうか?またのび太が微笑んだ。見間違いなどではない。みんな見たのだ。
のび太くん。じぁそろそろ行こうか・・・・。」
「どこでもドアー」が一人でに開いた・・・・。開いたドアの向こうに素晴らしい景色が広がった・・・・。綺麗なチョウチョが飛んでいた。見たこともないほど可憐で、嗅いだ事のないほどいい匂いのお花が咲いていた。まぶしい程の光でいっぱいだった。のび太が最後に行きたい所。そこは天国だった。
「さあ 行こう。」
ドラえもんは動かないのび太くんを背負ってその中に入っていった。ギィー バタンッ



その6
これが作者最終回といわれている...)

 ある晩、のび太が目を覚ますと、知らない大勢の人間がのび太の部屋のカベから出てきて、カベの中へと消えていった。驚いたのび太は、次の日ドラえもんにその事を伝える。しかし、ドラえもんはのび太の話をポーッとしてまるで聞かない。
 最近、のび太の家では変なことばかりが起こる。家のカベに落書きがいっぱいあったり、パパのライターなど、いろんなものがなくなったり…。

 「とうとう、このへんにもあらわれたか。」とつぶやくドラえもん。
 そんな中、ドラえもんの座っている横のカベから子供がでてきて、おやつのドラやきをヒョイと取り、子供は再びカベの中へ消えていった。
それを見てのび太はビックリ仰天。「お、おいっ、み、み、見たかいまの」
ドラえもんは相変わらずボンヤリした表情で「あ、うん……。」
「あ、うん? 言うことはそれだけ?」と困惑するのび太。

「のび太くん!!」ドラえもんが突然叫んだ。
「もしも、もしもぼくがいなくなっても、きみひとりで、やっていけるかい?」
「そんなこと、考えられないね。きみがいなくちゃ、ぼくはだめなんだ。」とのび太。
「なさけないこと言うなよ。じつは…」
……とドラえもんが話を切り出したその時、またカベの中から何人かの人間が出てきた。

「まっぴるまからこんなとこへ。ひと目につかないように回るのがきそくだぞ!」とドラえもん。
状況の掴めないのび太。
「だれだい、この人」とドラえもんに尋ねると、
「しつれいしました。私はこういう者で」先頭の男が名刺を差し出した。

<<フジヤマ時間旅行株式会社/一級ガイド カバキチ・カバタ>>

つまりこの人達は、未来の世界から昔の世界を見物するためにやってきた時間観光旅行の人らしい。
「みなさま、これが古代日本の民家です。ご自由にごらんください」とカバタが言うと、ドヤドヤと未来からの観光客がやってきて、のび太の家を荒らしはじめた。

「めいわくだ!かえってよ!」と叫ぶドラえもんとのび太。
しかし、観光客一行はのび太の家に記念の落書きをしたり、パパの服をお金で勝手に持ち帰ったり、のび太の部屋のノートを勝手に見たり…と迷惑三昧を繰り返す。ドラえもんとのび太は、のび太の家から観光客一行をおっぱらおうとするが、観光客は四次元移動で動いているのでカベの中に逃げ込んで上手く追っぱらえない。

 すると、しまいにはのび太の家にピストルを持った未来の全世界指名手配の殺し屋までやってきた。タイムパトロールに追いつめられ、この世界に逃げてきたという。

「こうなったら、きさまらをみな殺しに……」
と男が言った瞬間、タイムパトロールがやってきて、バズン!と銃でこの男をやっつけた。
 そして観光客は皆帰り、ようやくのび太の家は静かになった。

「やっとしずかになったよ」とドラえもん。
「時間観光旅行なんてめいわくだァ。なんとかしろ」とのび太。するとその時、セワシがのび太の机の中からやってきた。
「それはもう心配いらないよ」と言う。

 セワシの話によると、「時間旅行きせい法」という法律が、未来の世界で決まったらしい。さっきの観光客のようにタイムマシンで旅行する人がふえてきて、昔の人に迷惑をかけることが多くなったので、今後一切の時間旅行が禁止されることになったのだ。もちろん、ドラえもんも未来の世界に帰らなければならない。

「そ、そんな!! いやだ! ぼくは帰さないぞ!!」と叫ぶのび太。
それに対し、ドラえもんは
「男だろ!これからはひとりでやってくんだ。きみならやれる!!」
と励ました。

ドラえもん「ぼくが来たころからみると、ずっとましになっているからね」
セワシ「そう、元気になったし、からだも強くなった。頭もすこーしよくなった。」

 するとその時、のび太の机の引き出しからプオ~、プオ~という音が鳴り響いた。ひきあげの合図だ。
「いそがないと」とセワシ。
「じゃ…。」とガッチリ握手するドラえもんとのび太。

ドラえもんはセワシに連れられ、机の引き出しの中に入ると泣き叫んだ。
「いやだァ。のび太くんとわかれるのいやだあ」
「ドラえもん!!」

セワシとドラえもんは、机の引き出しの中に消えていった。
のび太は机の引き出しをながめながら、「ドラえもん…」とつぶやく。

ラスト、のび太のモノローグ。
「つくえの引き出しは、ただの引き出しにもどりました。でも……、ぼくは開けるたびにドラえもんを思い出すのです

その5
(前編)
いつもの生活が続いている野比家。
ママは怒りのびたは宿題をやらずに遊んでばかりいる。
ドラえもんはそんな生活をほほえましげに見つめていた。
と、突然通信機に連絡が入る。相手は未来世界の全能統括者、マザーコンピュータ。その連絡で、ドラえもんは本来の自分の使命を思い出す。
実はドラえもんが来た未来社会は機械帝国が支配する世界で、人間達は虐げられ、レジスタンス活動を続けていた。そして、そのレジスタンス団『白の同盟』のリーダー、『修羅のノビール』こと片目の戦士ノビール・チギレールこそ、誰あろう野比のびたの成長した姿であった。
理工学博士でもあるノビール率いるレジスタンス軍団は機械帝国の心臓部であるマザーのハッキングを始めており、このままでは機械帝国の敗北は目に見えていた。このままでは機械帝国が危ない、と判断したマザーは、タイムマシンを使い、現代にあるロボットを送り込む。そう、それがドラえもんであったのだ。

のびたことノビールは15才より北欧独立戦争に参加し同時に機械工学の博士号を取る。それは、幼少の頃から運動神経・頭脳ともに人並み以下という環境の中で、彼がコンプレックスを克服すべく必死で努力を続けた結果であった。マザーはのびたを亡き者にしようとしたが、それはできなかった。なぜならマザーの基礎理論を作り上げたのもノビールであり、のびたの存在が消えるという事はそのまま機械帝国の消滅を意味するからだ。そこでマザーは一計を案じた。のびたの頭脳はその素養のまま成長させ、その心に培われる筈の『反抗心・独立心』というものだけを削り取る作戦を。
そして、便利な道具を持った夢のロボット、ドラえもんが小学生ののびたの前に現れた。彼がのびたの夢をかなえてやると同時に、どんどんのびたの反抗心はなくなっていった。(ただし馬鹿になっては困るので『しゅくだいやれ』と言い続けていた事は周知の事実)
しかし、段々とドラえもんはのびたの事が好きになり始めていた。否、人間の事を好きになり始めたというのが適切だろうか。のびたはひみつ道具を使って様々な失敗をしたが、その度に少しづつ成長しているのがドラえもんは『嬉しい』と感じたのだ。
0 それは、けして自らの血族を持つ事無い機械の彼が、初めて感じた肉親の情だったのかもしれない。
マザーからの通信は、のびた堕落化計画の打ち切りの通告だった。その代わり、別の時代で独自の理論を別の研究者に開発させる為、もう用済みののびた=ノビールを抹殺し、未来世界に帰還せよとの指令が届いた。苦悩するドラえもん。
のびたは元気の無いドラえもんを元気付けようと色々な努力をする。その全てがドラえもんにとってはいじらしくてしかたない。つい涙を流すドラえもん。ドラえもんは、のびたに全てを話すのだった。
話し終えたドラえもんに、のびたは笑ってみせる。ドラえもんは僕の大事な友達だ、そのドラえもんがそんなに苦しんでいるのなら、とドラえもんに背中を向けるのびた。なんということか、のびたはいつの間にか友の為自らの命も惜しまない真の男に成長していた。ドラえもんは再び滂沱の涙をながし、未来世界との通信機を自ら破壊するのだった。第一の部下であるドラえもんの裏切りに、22世紀のマザーは激怒した。そして、最強の刺客、ドラえもん5人衆を送り込む。
バラえもん・フランス貴族のサーベル剣術を使うちょび髭の剣士。
コーラえもん・黒い。
アシュラえもん・手が8本ある。顔は3つある。
キングコブラえもん・へび。寒さが弱点。
マックスマーラえもん・化粧が得意。
最強の5人衆を相手に、ドラえもんとのびた、仲間達の最後の戦いが始まった!

(後編)
しずかちゃんを人質に取られたドラえもんと仲間達は、遂に最終決戦地(?)である冥凰島に辿り着く。
一対一の試合形式で5人衆と闘うのだ。
第一試合 バラえもん      vs 出来杉
第二試合 コーラえもん     vs 小池さん
第三試合 アシュラえもん    vs バギーちゃん(2代目)
第四試合 キングコブラえもん  vs ピー助
第五試合 マックスマーラえもん vs ジャイ子
このメンツ構成の中にいつものメンバーがいない。
そう、ドラえもんとのびた率いる一軍(ジャイアン・スネオ)は、この隙に未来世界に乗り込み、マザーコンピュータを破壊すべくノビール(未来ののびた)と協力し、中央指令塔に潜入していた。
ノビールは歴戦の勇者であった。だが、少し精神に異常をきたしていた。目の前で恋人(=しずかちゃん)を殺された為に、機械帝国に対して異常な憎しみを抱くようになったのだ。
同時に、彼はレジスタンスになる前の記憶を全て無くしていたのだ。
『死ね!死ね!虫どもめッ!虫ィィィィィィッッ!!』
彼の中にあるのは憎しみの記憶だけであった。
マシンガンで機械帝国の虫型ロボットを破壊するノビール。そんな彼をみてのびたは、それが未来の自分の姿である事にショックを受ける。
自分の中にもあのような凶暴な血が流れているのか、と。そんなのびたにドラえもんはそっと告げる。未来を決めるのは君のチカラなんだ、自分の中のチカラを信じる事ができれば、運命なんて簡単に変わるんだよ、と。
そのころ冥凰島では、出来杉がバラえもんに刺し殺されていた。中央管制塔には機械獣たちが集結していた。あまりの猛攻に、のびた達は一時撤退する。
ノビールは、敵の手際のよさを怪しみ、ドラえもんを疑う。
彼から見ればドラえもんも憎き機械帝国の一部に過ぎないのだ。
皆の制止を振り切って、ノビールはドラえもんを破壊しようとする。
あえて抵抗しないドラえもん。だが、ドラえもんを刺し殺そうとしたノビールのジャックナイフの前に、のびたが立ちふさがる。ナイフはのびたの胸に突き刺さった。
「だめだよ…ドラえもんは僕たちの為に苦しんでるんだ…」
昔の自分の姿に真の勇気を見るノビール。このままではのびたが死に、同時にこの未来世界そのものが消滅する。この世界では四次元ポケットが使えない上に、タイムマシンもマザーの干渉を受け停止している。一刻も早くマザーを倒すしかない。
だが、ノビールは放心状態であった。
そのころ冥凰島では、小池さんがコーラえもんをラーメン責めにしていた。マザーのあるセントラルタワーへの道は、最強の敵達によって埋め尽くされていた。マザーの命令電波を受けて動く、虫型ロボットの軍隊である。途中の戦闘で、ジャイアンは両足に重傷を負う。ノビールの仲間達、『白の同盟』の戦士達も次々に死んで行く。スネオは恐怖し、泣き叫ぶ。
「もう帰ろうよジャイアン!!本当に死んじゃうよ!!」
しかし、剛田武はそんなスネオを殴る。のびたが、ドラえもんが必死に戦っているのに、俺達はなにもできないというのか、と。
スネオはまだ俯いているばかりだ。そしてジャイアンは高らかに歌う。皆を勇気づける為に。
『ホゲ~』
その時。奇跡だろうか、虫型ロボット達の動きが止まった。驚くのびた一行。ジャイアンの歌声とマザーコンピュータの電磁波が共鳴し、虫型ロボットへの命令系統が一瞬麻痺したのだ。ある程度の時間ならこの大群を足止めできるかもしれない…。突然、ジャイアンが皆をドアの向こうに突き飛ばす。ドアは堅く閉ざされた。
『みんな先に行けッ』
ジャイアンは皆を先に進ませる為みずから捨て石となるつもりであった。
『ジャイアン!!』
みなドアにすがる。ドアの向こうからは、いつものジャイアンの『ホゲ~ホゲ~~ホゲ~~~!!』という必死の歌声が響く。それは、まるでワーグナーのシンフォニーの如く。
動きを止めている虫型ロボットも、まるでそれに聞き入っているかのようだ。喉から血をだしながら、剛は歌いつづけた…。
『みんな行こう!!僕らがいつまでもここにいたら、ジャイアンが何の為にあそこで頑張ってるのかわからないよ!!』
声を上げたのは、泣いていたスネオだった。皆、涙をこらえ、エレベーターに向かう。エレベーターは動き出した。背後で、歌声が止まった。ジャイアンは、一瞬ののち、細切れの肉片と化した。そのころ冥凰島では、バギーちゃん(二代目)がアシュラえもんに解体されていた。ノビールは苦悩していた。自分は、のびたなのである。今、幼い頃の自分が死にかけている。そして、親友であったというジャイアンは死んだ。過去が、すさまじい勢いで回天している。この未来世界自体の存在も歪み始めている筈だ。だが、自分がここにいるという事は、幼いのびたは死なないという事だろうか。このタイム・パラドックスの渦の終末はどこなのだろうか。自分の失われた記憶に何があるのだろうか。4人をのせたエレベーターは最上階につこうとしていた。その頃冥凰島では、決戦が佳境に入っていた。
『ぴー』
『シャアー』
蛇が恐竜にかなうわけが無い。ピー助がキングコブラえもんを飲み込み、これで2-2。勝負の行方はマックスマーラえもんとジャイ子との戦いに持ち越された。しかし女らしさと無縁であるジャイ子にマックスマーラえもんの洋服攻撃も通用しない。
まるで兄が乗り移ったかのような豪快な一撃で、マックスマーラえもんは吹き飛んだ。勝負は、3-2でドラえもん復活キャラチームの勝利に終わった。しかし、勝負に負けると自動的に爆発を起こすような仕掛けがドラえもん5人衆には仕掛けられていた。現代の水爆の1兆倍の質量を持つ爆弾が、5個同時に誘爆する。冥凰島のあるインド山中(彼らはその位置を知らされていない。謎のヘリコプターに乗せられてここに来た)を中心にユーラシア大陸が吹き飛んだ。冥凰島はもちろん吹き飛んだ。と、同時に空間に歪みが生じ、『時震』が起こった。ドラえもんチームはそれぞれ、さまざまな時代に吹き飛ばされてしまったのである。小池さんは古代中国に吹き飛んだ。そこにはラーメンが無かったので、小池さんは我慢できず、自分でラーメンを作った。なんと、ラーメンの発明者は小池さんだったのだ。
この後小池さんは中華料理の大家として名を馳せるのだが、それはまた別の話。ピー助は奇跡的にもとの世界に帰れた。よかったね。その後恐竜界の帝王となるのだが、それはまた別の話。ジャイ子は14世紀のフランスに飛んだ。そこで、天から降りてきた乙女として、フランス革命戦争に参加した。彼女は自分の名を『ジャイ子』と言ったのだが、フランス人には発音しにくかったらしく、どこかで『ジャンヌ』と歪んで伝わった。というわけで彼女はジャンヌ・ダルクになったのだが、それはまた別の話。遂にマザーコンピュータと対峙するノビール一行。もうほとんどのびたは虫の息だ。マザーコンピュータにマシンガンを向けるノビール。その時。マザーの中枢部分が開いた。そこには、なんとしずかちゃんが!!その時、ノビールは全てを思い出した。しずかちゃんを殺したのは、のびたの作ったロボットだったのだ。理工学博士になったのびたは北欧独立戦争で人々が死んでいく事に深い悲しみを感じ、機械兵士を作ろうとした。そして、そのプロトタイプ第一号が暴走し、そばにいたしずかちゃんを殺した。狂気にとりつかれたのびたは、しずかちゃんの記憶を持ったロボットを作ろうとした。
そしてできたのがマザーコンピュータだった。そうだ、そして彼が作った第一号の戦闘機械兵士こそ。もともと戦争を終わらせようとして作った平和の色、青。過度な残虐性を持たせぬ為にデザインした、球体。どんな武器だろうと装備できるような、自由変形物質製の手。彼が幼い頃にみた、あの親友の姿。そう、目の前にいるドラえもんであった。ノビールは全てを思い出したのだ。そして、目の前にいるしずかちゃんは現代でドラえもん5人衆が吹っ飛んだときの『時震』で、時空を超え、姿は違えど同じ魂を持つマザーに引き寄せられ、一体化してしまった現代のしずかちゃんだという事を知った。もともと、ドラえもんが現代で幼いのびたにであった事が、このタイムパラドックスの渦の原因であったのだ。このまま、こんな悲惨な歴史を繰り返すわけには行かない。ノビールは決意した。この世界を消す事で、歴史の流れを正常に戻そうと。そして、ノビールはマザーに銃を向け、自分の歪んだ愛情の結晶を破壊する。マザーの干渉が消え、タイムマシンが動くようになった。機械帝国は壊滅していく。そこかしこで起こる爆発。しかし、まだ一つ残っていた。ドラえもんが。ノビールは、ドラえもんに銃を向ける。ドラえもんは、全てを知っていた。そして、理解していた。最後にドラえもんは、そっとのびたの顔に手を当てる。『未来は、運命は自分の手で掴むものなんだ』と、その眼が語っている。のびたとスネオをのせたタイムマシンが、現代に向けて飛び立つ。二発の銃声が響き…。
現代。
何事も無かったかのように日常がまた続いている。ドラえもんは当然、現実の社会にはいない。死んだ筈のジャイアンや出来杉も、普通の生活を送っている。のびたは、奇跡的に命をとりとめた。しかし、ドラえもんそのものの記憶を失なっていた。だが、なんの不都合も無い。もともとドラえもんなんていない世界なのだ。
病院で眼を覚ましたのびたの手には、金色の鈴が握られていた。のびたは、その鈴がなんなのか、思い出す事はその後二度と無かった。決して、思い出す事は・・・。時の旅人として一人、スネオは全てを知っている人間として残された。なぜか、元の世界には別のスネオがいたためだ。一人だけ記憶の残っているスネオに、「時」という偉大な力が干渉した為であろうか。スネオはタイムマシンを降り、破壊する。そこは、昭和初期の日本。
そこでスネオは、モトオという友人と知り合う。スネオは当然全てを話しはしない。ただ、ときどき面白おかしく元いた世界の話をするのみ。二人はいつしか、その世界をマンガにし始めた。忘れはしない、あの頃の友人達。勇敢に戦い、勇敢に死んでいったジャイアン。いつもやさしかったしずかちゃん。いじめられてはいたけれど、たまに真の強さを発揮したのびた。そして、不思議で悲しい運命を背負った猫型ロボット、ドラえもん。忘れる筈はない。彼のペンは、いきいきと昔の友人達をつづった事だった。そして、時は経ち、二人は青年になり、漫画家になった。そのペンネームは・・・。