サラマ、宗教なる存在に興味があるという話をしました指差し

 


が、若い頃からそうだったわけではないんです。


なんの信仰もない家庭に生まれ思想的なしばりを一切課されることなくのほほんと育った私にとって、〈宗教〉とは非常に遠いところにあるものであり、その単語の響きさえも古めかしく仰々しくなんだか胡散臭いカンジ不安

という具合いで10代の頃のサラマは宗教なんて自分とは無関係なもののように捉えておりました。


そんな私が、はじめて宗教や信仰なるものの威力に直面したのは最初の海外生活であるスペイン留学でしたあんぐり


スペインはカトリックの国。

教会がそこここにバンバン建ってるわけです。


サラマ、スペインに留学するまではヨーロッパに来たことがなかったのですが、スペインに暮らし始めたことをきっかけに、観光で目玉にあたるような有名な教会、実際に街の人が集う教会などなど行くようになるのですが、まあ、本当に、どれもこれもすごいリキの入った建物なわけですよ、教会って。


天井とかに描かれる宗教絵画、転落死の可能性あっても描く誉とか、無宗教の家庭出身の私は聞いて率直に「正気?」だなんて思いましたよね。


そのうち、誰かとの会話から、スペインの古い街並みはすべての道が教会に通じるように造られてる、ということに気付かされて驚愕する。

西洋美術も結局キリスト教とともにぐぃぃぃん!と発展していると知る。

キリスト教の気配というのはスペインに限ったことではなく、貧乏学生の限られたお金ながら近隣国をまわって気づいたのは(この時期にヨーロッパの有名どころの国はバックパッカーして回った)、とにもかくにもヨーロッパってのはどこに行ってもキリスト教が香ってるんですよ。


素直に、ローマ帝国ってすげえな、みたいに思いましたあんぐり


そのうち、私は、当たり前に〈男〉と〈女〉を一対とする社会の在り方、いかにも宗教に由来した日常の会話表現、常識として共有される〈善〉の価値観、などなど自分にまとわりつくヨーロッパ的価値観に幾度となく倦むんですが、まあ、そこの話は置いておいて、やっぱり、人類ってものを把握する精度をあげようと思うと、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教についてはある程度理解したほうがいいのだなあというのがスペインから帰国したあたりの自分の感想でした。


ただ、文化のベースになってるここらへんの宗教について知ろうと思うと、情報が膨大過ぎて、どこからなにをどういうふうに読み解けばなにが理解できるのか、というのがイマイチ分からなかったのが当時の私です。


そういう人が他にもいるかもしれないなと思いススメてみるのが、ハイ、1972年単行本発行の辻邦生の『背教者ユリアヌス』指差し


これ、ユリアヌス青年の人生を軸にしてローマ帝国末期の歴史を描いた歴史小説なんですが、めちゃくちゃ面白い目がハート

ローマ帝国って広い領土を統治するのに都合が良くて当時新興宗教だったキリスト教を国教に定めたわけですが、ユリアヌス、新興宗教のキリスト教をどうも心から認められず、葛藤しながらも(当時の伝統的な価値観のなかにあった)ギリシア神話推しの態度を捨て切れないんですよね。

「なんで?なんでなん?なんでこんなに矛盾だらけの新興宗教に一目置かなきゃならんの」と悶々としていたその態度から、のちにキリスト教信者たちから「背教者」だなんて言われちゃうわけなんですけれども。


これを読むと、

現代の私たちが「当たり前だと思うこと」「古くから大切にされてきた価値観」などが、いかに偶然の産物か、ということに気付かされます知らんぷり


だって、

ローマ帝国にとって都合いいタイミングでキリスト教が生まれていなければ、キリスト教はローマ帝国で採用されなかったでしょうし。

ローマ帝国でキリスト教が採用されずギリシア神話のような多神教のまま文化を発展させていたら、いまのヨーロッパにあるキリスト教建築だって全く違う建物になっていたでしょうし。

イギリスにキリスト教が渡らなければイギリス国教会も成立せず、となるとその後ピルグリムファーザーズなんかもアメリカに渡らなかったかもしれませんよね?

キリスト教がローマ帝国に採用されなかった場合の世界においては今日までの歴史にある争いのいくつかは回避できたでしょう。

ただ、逆に今日までの歴史にはない別の争いが別の地域で生じていたかもしれませんよね。


ひとつコマがズレていたらこの世界はガラッと様相を変えていたかもしれないな、だなんて、そんな当たり前のことをふたたび気づかせてくれる『背教者ユリアヌス』。


辻邦生さんの本って昔はKindleなくて単行本買い漁るしかなかったんですよね。

今はkindle購入可で嬉しい目がハート


というわけで、

キリスト教というものを新たな視点で捉えなおすことができるオススメの一冊でした指差し飛び出すハート