*完全妄想のお話。BL要素含みます*
土曜日の朝…
おいらはとてつもなく早起きしてた。
…正確に言うと、寝れないまま朝を迎えたってのが正解かな。
ウトウトはしてたけど、ドキドキとワクワクが抑えられなくて…
全っ然、眠れんかった!
でも楽しみのほうが大きすぎて、眠気なんて感じない♫
翔先生が迎えに来てくれるまであと少し。
待ち遠しいなぁ♫
先生、どんな格好で来るかな…
カジュアルにカッコよく?
それとも…スタイリッシュな大人な男〜!って感じで来るかなぁ?
…おいらのこの格好、先生と釣り合うかなぁ。
潤が選んでくれたし、可笑しくはないと思うけど…
『母ちゃ〜ん!…この格好、どお?』
《あら。良いじゃない、似合ってるわよ?》
『変じゃない?』
《大丈夫。……ていうか、随分早起きね?こんな早くから出掛けるの?》
『あれ?言ってなかったけぇ?8時に家出るよ、って…』
《初耳です。ま、今聞いたからいいけど〜何時に帰ってくるの?》
『え……それは分かんない…』
《…あんまり遅くならないようにね?》
『うん!』
我が家に門限とかなくて良かったぁ♫
《…ところで、誰と何処に行くの?》
『えっ…と……と、友だちと水族館……』
さすがに、先生と、とは言えなかった…
ここで正直に話して、反対されたらと思うと…
《そう…楽しんできなさいね?あ、お小遣い足りる?前借りしとく?》
『んにゃ、大丈夫!』
新たにお年玉も貰えたし♫
\\…ピロン♫//
あ、ショートメッセージ…
先生だ!
スマホを開くと…
【悪い、早く着きすぎた】
え、早くない!?
8時まであと15分はあるのに…
でも少しでも早く会えて嬉しいかも〜♫
【すぐ行きます!!】
速攻で返信して…
『んじゃあ行ってきまぁす!!』
コートを羽織って玄関へ。
そしたら、ピンポーン、ってチャイムが鳴った…
…え、まさか先生……??
恐る恐る、ドアを開けてみる…
『…せっ……///』
思った通り、翔先生が立ってた…
「……お、ぉはよう///」
どうして…
家まで来なくていいのにっ…
先生だって知られたら、今日のデートはなくなっちゃうかもなのにっ…
《智〜?どなた〜?》
わっ…母ちゃんだっ…
どうしよっ…
「朝早くから申し訳ございません。私、熱血指導塾で講師をしております、櫻井と申します。大野くんに数学と物理を教えてます。」
《ぇ…あ、智の担当の先生ですか!まぁいつもお世話になっております〜お陰様で智の成績も上がっております〜》
「それは大野くんの努力の賜物ですから…」
《えっと……それで先生がこんな朝早くから…どうされたんですか?》
「大野くんから聞いていると思いますが、本日、一緒に出掛けることに関してご挨拶を、と思いまして…」
《え?……智?今日は友だちと水族館じゃないの?》
もう誤魔化せないよな。
『ごめん、母ちゃん……嘘ついた…ほんとは先生と…』
《え〜!?もうなんで嘘つくのよぉ!!》
『だって!先生と、なんて言って反対されたら嫌だったんだもん…』
《なんで反対されるかもって思うのよぉ…するわけないでしょ〜?智の交友関係に口出すつもりはないわよぉ…》
『ごめんなさい…』
《それじゃ、今日は先生と水族館ね?》
『うん…』
《智、どんな考えや理由があっても、嘘だけはついちゃダメ。信用を失うわよ?》
『はいっ…』
《母ちゃんは智の味方だから。なんでも相談して。》
『はいっ…』
《よし!…ぁ、すいません…玄関先でこんな説教しちゃって…》
「いえ…私こそ、大野くんに嘘をつかせるようなことをさせてしまって…すみませんでした…」
《んふふ…櫻井先生は真面目な方ですね。わざわざご挨拶にみえられるなんて。でもそのおかげで智の嘘がなくなりました。ありがとうございました。》
「いえっ…そんな…私はただ大人としての常識をしたまでで…」
《ふふっ…今日のお出掛けだって、智が駄々こねたんでしょう?ごめんなさいね?1度こうと決めたら、テコでも動かない頑固者なの。》
「そう…なんですか…」
《今日1日、智の相手、よろしくお願いしますね?》
「承知いたしました。…さぁ、行こうか?」
『ぁ、はいっ!…母ちゃん、あんがと!』
《はいはい♪行ってらっしゃい!》
『行ってきま〜す!』
「……あ、すみません、帰りは何時までに帰ってくれば…」
《それは……先生の常識にお任せします♫》
「ぇ…あ、はぃ……では失礼します…」
先生は、ぺこりと母ちゃんに一礼して車に乗り込んだ。
おいらも、母ちゃんに手を振って、もう1回行ってきますって叫んだ。
にこにこ笑いながら手を振り返してくれた母ちゃん…
…嘘ついたまま、出掛けなくてよかったな。
あのまんまだったら…
この先ずっと、後ろめたさを抱えたまま過ごすことになってたんだろうな。
嘘に嘘を重ねなきゃならなくなって…
それで、母ちゃんともギクシャクしちゃって…
こんなふうに笑って手を振り合うこともできなくなって…
そんな悲しい未来の訪れを翔先生が止めてくれたんだ…
先生の行動で、おいらは今日、心底楽しめる。
すげぇな、先生…
ますます好きになっちゃったよ…///