*完全妄想のお話。BL要素含みます*






☆side 翔☆







あれは…たしか特進の松本……


……ほらみろ。


俺がダメなら他の奴。


…俺じゃなくったっていいんじゃないか。


…完全に俺のこと揶揄ってる。


ほんと、ふざけた奴だ。


年上を揶揄うなんて。


…だいたいアイツは男だろ?


俺も男。


男の俺を揶揄って一体どうしよってんだ?


…あぁ、アレか。


俺が本気になったところで、実はウソでした〜って落とすやつか。


で、落胆してるのを見て楽しむんだな?


…ほんと、ふざけた奴だ。


悪いが相手を間違えたな。


俺は絶っっ対に本気にならないぞ?





「……櫻井先生…プリント終わりましたけど…」



「ぇ?…あ、ごめん…見せて?」




さっ、さっ…と丸を付ける。




「……どう…ですか?」



「うん…いいね…よくできてる。」



「良かった…」



「この間の模試も、判定Bに上がってたし。良い調子だね。志望校、合格圏内になってきた。なんなら、1つランクを上げても良さそうだけど…」



「いえ…ボクが行きたいのはここなので。」



「そうか…うん、じゃあ…A目指してもう少し頑張ろう!」



「はいっ!」





…本来、ココはこういう所で。


目指す志望校へ合格出来るように、日々努力しにやって来る所…


なのにアイツときたら…


ココには勉強なんか二の次で、俺に会いに来てるだなんて…


…ほんと、ふざけてる。





「…櫻井先生…今日なんか機嫌悪い?」



「ぇ?……そ、そんなことないよ?」



「そうですか?…なんかずっとブツブツ言ってるし…」



「ごめんごめん、ちょっとね、考え事してだけ。え〜っと…そしたら次は…文章問題、やってみようか。苦手でしょ?」



「え〜…文章問題……」



「苦手を克服しないと、受験には勝てないよ?」



「は〜い…」





黙々と問題を解き始める…





「先生、ここって…」



「ん?ああ、ここは……」





素直で教え甲斐のある子だ。


生徒がみんなこんな子ならいいのに。


…アイツは俺の苦手なタイプだ。


だから非常にやりにくい。


担当、変えてもらおうか…





「ありがとうございましたぁ!」



「お疲れ様。次は…明後日かな。課題忘れないようにね?」



「は〜い!先生さよ〜なら〜!」





ふぅ。


今日はこれで終わりだな。


明日の準備して帰ろ…













「お疲れ様でした。お先に失礼しま〜す…」




お疲れ様、また明日もよろしく!などと声を掛けられ、職員室をあとにする。



新卒1年目、塾講師になったばかりの俺は、まだ契約社員の身で…


と言っても、今月で丸半年。


来月から、晴れて正社員として働ける。


そうなると、受け持つ生徒の数も増える。


必然的に、多くの生徒と関わることになる。


……アイツみたいな奴も増えるのか?


…いや、あんなのはアイツだけだろうなww


こんな、見た目鬱陶しいのが講師だったら、誰もそんな気起こさないよ。


…アイツだけだろ、こんな俺に言い寄ってくるのは。






「…ただいま〜」



〈おかえり〜!お兄ちゃん、いいとこに帰ってきた!数学、分かんないとこあって…教えてくれる?〉



「いいけど…手ぇ洗ってくるから待ってな?」



〈うん!〉





10コ離れた妹は14歳。

来年、高校受験なんだけど、もうすでに戦闘モード。

医者になりたい、って頑張ってる。





「お待たせ。どれ?」



〈これ〜…意味が分かんない!〉



「あ〜…文章問題か…」





最近の子は文章問題が苦手なのか?

読解力が乏しい…

それなら国語にも力を入れたほうが…

…とりあえず、この問題を解くヒントを与えて。





〈あ〜…分かってきたかも〜…〉



「よし。じゃあ解いてみて?」



〈うん!ありがと、お兄ちゃん!〉



「ん。また分かんなくなったら聞ききにおいで?」



〈はぁい!…あ、そうだ、お兄ちゃん!〉



「なに?」



〈……彼女とか…できた?〉



「…できるわけないだろ?こんな冴えない俺に。」



〈なんでぇ?お兄ちゃんはカッコイイの!できないわけないじゃない!〉



「…家族だからって気を遣わなくていいんだよ?俺がカッコイイなら世の男どもは国宝級にカッコイイことになる。」



〈…はぁぁぁ……自己肯定感低いの、昔から変わらないんだからっ…〉



「…至って普通だと思うんだが?」



〈……ま、いっか…カッコイイお兄ちゃんを彼女に取られるのヤダもんね。ずっと今のまんまでいてね?〉



「……そのつもりだよ?」





……俺がカッコイイだと?


我が妹ながら、おかしな事言う…


目は節穴なのか??