*michaさんとコラボ開催中♪*






☆智side☆









「智っ……」





タクシーの中から聞こえた声に、一瞬固まった。


そして松潤とオレ、揃って車内を覗き込む…





『……!!』

「おまっ……」





松潤、すごい確率で翔くんのタクシー止めるのなww


…って感心してたら……


ドンッ!て押し込まれるようにタクシーの中に…





『ぉいっ…松潤っ…何すんだよぉ…』



「俺、急用思い出したゎ。…先帰ってて。」



『は?なんだよ、急用って……』



「……運転手さん!…行き先は…お任せします!」



『え?おい、松じゅ……』





オレの言葉を遮るように、松潤はバン!と勢いよくドアを閉めた……


そして手を振ってる…


マジかよ…


いきなりこんな…密室で2人きり……


え…どうしよ……


なんか…気まずい……


と、とりあえず、行き先……


任せるとか言われても困るよな、うん。





『…ぇと……大空公え……』
「行き先は任せてもらっていい?」





オレの行き先に被せるように、翔くんが…

ルームミラー越しに、じっとオレを見つめたまま…





『ぁ…///……ぅん…お任せ……する…』



「ありがとう…」





翔くんの、あのまんまるな瞳に見つめられたら、なんも言えねぇんだよなぁ…昔から。



そしてゆっくり走り出したタクシー……



…どこ行くんかな……





「……どこ行きたい?」



『……へ?』





…翔くん、あてがあるんじゃねぇのかよww





「や、智が行きたいとこ…連れて行きたいな、って…」



『……仕事中じゃん…そんな、オレの勝手で行き先決めていいのかよ…』



「…タクシーとはそういうもんだけど。行きたい所に連れてってくれるのがタクシーだろ?」



『……たしかに。』



「ふはっ…///納得すんの早っ…」



『……///……じゃ、じゃあ帰るっ…家まで送って…』



「……了解…」






…12年振りだってのに、久しぶり、とか元気だった、とか、そんな言葉はなくて。


なんか…12年前と変わらないっていうか…


12年前から一気に今にワープしたみたいな…




斜め後ろから、翔くんの運転姿を見つめる…


…サマになってんなぁ///


制服も似合ってるし。


……なんでタクシードライバーやってんのかなぁ。


……あの白い手袋の下には、まだ指輪があるんだろうし。


……12年経ってるてことは、子どもだって…



ズキっ…



…相葉ちゃんの言った通りだ……


オレの知らない翔くんの人生…


翔くんの人生に、オレはいなかった…


空白の12年が……


オレを苦しくさせる…





「……職場…あの辺なの?」



『…ぇ?』



「…この間もあの辺から乗ったでしょ?」



『ぁ……職場っつうか…取り引き先があそこにあって…この間は打ち合わせ、今日は仕上がった絵を提出しに…』



「そうなんだ?……絵の仕事してんの?」



『ん…フリーのイラストレーター……』



「へぇ♪昔から美術の成績だけは良かったもんな!」



『…だけ、って…まぁそうだけど…』



「ふふ……へぇ…そっか…絵を仕事に……」





仕事の話の流れで聞いてもいいかな…





『……翔くんは…どうして……』
「着いたよ…」





またしても、オレの言葉に被せるように…


…って…着いた?


え、でもここ、大空公園じゃない……





『…翔くん間違えた?オレんちここじゃないよ?』



「…間違えてない。…ここ、俺んち。」



『……へ?』



「このアパートの1階の端。…はい。これ、カギね。」





強引に手のひらの中に押し込まれたカギ…





『え?え?なに?どういうこと??』



「待ってて。」



『え?』



「あと1時間ちょいであがりだから…終わったら速攻で帰ってくるから…この部屋で待ってて…」





そして開かれたドア…


降りろってこと?


翔くんの部屋で待つ以外の選択肢はねぇのか?


だってあの部屋には……


奥さんとか子どもとか……


…いや、居たらオレなんか入れないか…


…いやいや、昔からの友人が来るからもてなしとけって連絡してんのかもしんねぇし…


…あぁもぉっ……


どうすりゃいいんだ…





「…智……俺は12年前から変わってない。…智もそうなら…あと少しだけ待ってて…」





その言葉に、オレは…


胸が高鳴った。


きっといいことが待ってる。


だから翔くんの部屋で翔くんを待とう。





『…タ、タクシー代……』



「大丈夫…賃走してないから…」



『え…タダ乗り!?悪ぃよ、それは!』



「じゃあ俺の奢りってことで。ほら、早く降りて♪」






しょうがない…今度乗った時に割増してもらお。


オレはタクシーを降りた。






「絶対待っててよ?」



『分かったから…』



「じゃ!またあとで!」



『ん…行ってらっしゃい…気を付けてな?』



「うん!」






色々…たっくさん、聞きたいことあるんだ。


ちゃんと待ってるよ…


走り去る翔くんのタクシーを見送って、オレは部屋のカギを回した…


そして、誰も居ないことを願いながら、ドアを開ける…


シンッ…とした部屋の中…


灯りもついてない…


…誰もいない?


玄関には、サンダルが一足だけ…






『…お邪魔しゃ〜す……』





恐る恐る中へ……


短い廊下を抜け、一つドアを開ければ…





『ふっ…散らかってんなぁ…ww』





窓際に、畳まれた布団。


その上に洋服の山。


床には何かしらの書類が散らばっていて…


それに…台所の脇にあるゴミ袋には、コンビニ弁当の容器やらカップ麺の容器やらが詰め込まれてて…


完全に一人着らしだってことが分かる…





『…単身赴任?』





それでもなお、翔くんには奥さんがいることは拭いされない。


…早く話がしてぇよ。


あと1時間ちょい?


ただ待ってるのも暇だから……


…少し片付けてもいいかな。


書類を一纏めにしてテーブルの上に。


布団の上の洋服たち…


これは洗濯済みなのか?



……クンクン。



あ///


未洗濯かも…


懐かしい…翔くんの匂いがしたぁ…///



……ってオレ変態じゃんっ///


人の服嗅いだりして…///


恥ずっ///



はぁ…///


気を取り直して…


この服たちを洗濯機で回してぇ…


今のうちに掃除機……あれ?掃除機ねぇな…


あ、コロコロ発見!


これで床をコロコロ…コロコロ…


ん〜!綺麗になった!



……ってオレ…


初めて来た人んちを勝手に…


少しのつもりが、がっつり掃除しちまった!


やべぇ…


図々しくねぇか??


翔くん…引いたりしねぇかな…



そんなオレの心配をよそに、翔くんは…





「ただいまっ!…って…わぁ…ごめんっ…ありがとっ…こんなに綺麗にっ…すげぇ……」





感激してくれたww