曇天ガエシ、大千穐楽から、早くも1週間!

 

 

どうも皆さんこんにちは。今人です。

 


自分はMANKAI STAGE『A3!』の春組単独公演の振り付けが始まり、

5月に稽古が始まるDEAR BOYSの準備、5月にあるもう一つの案件の準備、さらにその先のマッシュルの準備、GReeeeNさんの夏のライブの準備と、いろいろな制作期間に突入しております。

 

同時にいろんな方面に脳味噌を使うマルチタスク期間!

 

そしてそんな中、自分が所属する劇団「ゲキバカ」の解散と、来年春にかけての解散ロードが発表されまして

 

そして本日は、もはやライフワークとなっている、マイナビDANCE ALIVEのMCでございます!

 




 

忙しさをありがたさ、嬉しさに変えて、バリバリ頑張りたいと思います!

そして、なにより健康!をキーワードに!

 

 

 

 

 

 

 

さて、今日は、一人のスタッフについて語ろうと思います。

 

梅棒に長年、"演出助手"として関わってくれた入倉についてです。

 



本人もすでに自身のSNS等で語っていますが、演出助手の仕事をしばらくお休みする方針で、梅棒が休業前に一緒に仕事をするのは今回の曇天ガエシが最後でした。



つるちゃんはこっそり手紙をしたためて渡したりしたそうですが、自分はあえてもうここに書いちゃいます。

公開手紙。時間かけて書いたぜ。いえい。

 

 

 

 

入倉は、劇団「柿喰う客」の演出家である中屋敷さんの現場や、彼女自身が所属する劇団「オーストラ・マコンドー」をはじめ、ストレートプレイ、2.5次元などあらゆる舞台で引っ張りだこの演出助手です。

 

 

 


2016年に上演した梅棒の第5回公演「OMG/風桶」。

その稽古前ですから、2015年ですね。

 

当時、だんだんと劇場や公演規模が大きくなり、専門の演出助手を雇うべきではないか、ということになり、この公演から関わってもらうことになりました。

その時点で彼女はすでにたくさんの現場をこなす敏腕演出助手でした。

 

喫茶店での初めての顔合わせではあんまり目が合わなかった印象で、「ああ、シャイな人なんだなきっと」という印象でした。笑

 

それがこのあとこんなにも長く付き合うことになるとは。

 




 

「演出助手」ってどんな仕事だと思いますか?

 

「助手」という言葉の響きから、演出家の指示を受けて色んな雑用をこなす、アシスタントのようなイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

ところがどっこい!

 

数多いるキャストのNGを考慮し、日々の稽古のスケジュールを組み上げ

あらゆるスタッフとの橋渡しとなり、変更内容の共有を行い、打ち合わせを設定し

キャストの香盤や早替え、スタッフワークなどを把握し、演出家が口にする無理難題をいかに実現するかに尽力してくれ

稽古場で巻き起こるあらゆる事象に対応し

劇場入りしてからの「場当たり」においては演出家をも上回る権限を有し、マイクを手に取り仕切る…


 

 「演出の助手」の範疇にとどまることなく、

日々の稽古場をぶん回し、舞台づくりの根幹を担う、超スーパーウルトラマルチタスクポジション!

それが「演出助手」なのです。



 

※演出助手の実際の仕事内容、権限の大きさについては各現場によって全然違うので、この限りではありません。

 

 

僕個人は「演出助手」ではなく「稽古場進行」「稽古場監督」など、より威厳のある役職名であるべきでは、と思ったり

もはや演劇界では、演出助手が誰になるのかでその公演がうまくいくかどうかが左右されるほど重要なポジションであると言っても過言ではありません。

 

 

とりわけ梅棒においては、全編ダンス演劇である分、スタッフワークのきっかけの量は一般的な演劇の数倍となり、尋常じゃないほどの仕事量になります。

それを彼女は、アシスタントを付けずに全てたった一人でこなしてきたのです。

 

 

彼女は仕事っぷりがパーフェクトな上に、人間的にも非常に柔軟で軽妙で

場の明るい雰囲気や冗談にも適度に乗っかって楽しみつつ、締めるところでは誰よりもきっちり締めて進行する、最高のバランス感覚の持ち主。

 

そんな彼女に2015年の段階で出会えたことは、伊藤今人の演出家人生において、最大の幸運だったと、本気で思っています。

 

 



 

演出家って、けっこう孤独なもんでして

 

梅棒の作品は、梅棒のメンバー全員で話し合い、全員で方針を決めていくのですが

最終的な演出的なジャッジは総合演出の自分が担っていくことになります。

 

梅棒メンバーは作品制作者側である一方、いち出演者でもあるので、どうしても全てを客観的に見れているわけではありませんし、同時に演者としての欲や希望、演じやすさを優先したくなってくることがあります。そのこと自体はとても良いことなんですが

 

つまりは完全な客観視ができるのは自分一人であり、時には冷静かつ残酷に切り捨てたりして物事を決めて行かなければいけないことも多々あるわけです。

 

 

そんな時、自分の一番近くにいつもいてくれたのが入倉でした。

 

 

稽古場の中央、一つの机に隣同士で座った距離感。

自分が右、彼女が左。これは長年の定位置でした。


6th『GLOVER』稽古場にて

 

時々逆に座ることになったりして、「なんか落ち着かないね」なんて話して位置を変えたりもしました。

 

 

判断に迷う重要な演出についての相談をよくしました。


完全な客観視ができる同じ立場の人間は、自分をのぞけば彼女しかいなかったからです。

ただそういう時も、演出家である自分の判断を肯定した上で、新たな可能性も示してくれるような、常に最適解をくれる優秀なドラマトゥルクでもありました。



 

稽古中、一人でつらいことを抱え込む時も彼女には全て筒抜けでした。

 

梅棒メンバーには話せないような気持ちや

苛立ちに振り回されて思わずこぼれてしまう一言

しんどさからくる泣き言や弱音

 

 

同じ机一つの距離感で、8年間、伊藤今人の弱く醜い部分を誰よりも見てきたのが、彼女です。

 

 


6th『GLOVER』稽古場にて

 

 

8年前の自分は、演出家としてははるかに未熟で

演出家が本来どうあるべきかすらわかっておらず、わかっていないことさえわかっていないような、肩書きだけのもはや素人でした。

 

そんな自分が今、演出家として外部からもお仕事をいただけるようになったのは

その過程で、左隣に演出助手としての入倉がいてくれたからに違いありません。

 

彼女と乗り越えてきた公演期間の全てが、自分をここまで成長させてくれました。

 

 


7th『ピカイチ!』劇場場当たり中



自分の至らなさから迷惑をかけることが多く

積み上げてきたことをひっくり返すような判断をしたり

彼女をはじめスタッフにどれだけ迷惑がかかるかも考えずにプランを変えたり

追い込まれて人間的に信頼を損なうような判断をすることもあったかと思います。

 

 

それでも彼女は、俺を否定することは8年間でただの一度もありませんでした。

 


常に演出家である自分を慮り

それが間違った判断であったとしても、そこに至ったプロセスに理解を示した上で別案を提示し

そして、最終的にこの方向でいくと決めた決断を全力で後押ししてくれました。

 




8th『Shuttered Guy』楽屋にて




本当に稽古に行き詰まりどうしようも無くなったときは、入倉を笑わせることしか考えられないような時だってありました。

 

誰よりも自分の一言で笑ってくれたのが彼女でした。

どんなしょうもないことも、自分の身に起きたもはや笑えないような大きなトラブルも。笑

入倉が笑ってくれればストレスは吹っ飛んで行きました。

 


8th『Shuttered Guy』地方に向かう新幹線にて

 


今思えば、自分の弱みや失敗を彼女に受け止めてもらったことはたくさんあれど

彼女の演出助手としての立場からくる孤独や弱みを受け止めてあげたことなんてなかったなと、あまりの一方通行さに情けなさを感じています。



10th『OFF THE WALL』稽古場にて

 

 

彼女に恋愛感情を持つことはありませんでしたが、きっと何かのタイミングときっかけさえあれば自分は簡単に好きになっていたと思います。

自分がチョロい人間だということもありますが、そうなっても全然おかしくない距離感でしたし、今思えばよくそうならなかったな。とさえ思います。笑

 

 

それだけ彼女は自分にとって大切な存在でした。

だから、同じく自分にとって大切なたっさんと結婚したことは本当に嬉しかったし

 

自分が幸せになることよりも、自分が大切に思う人同士が2人同時に幸せになることって、こんなに嬉しいことなんだ!と気付かせてもらいました。





 

 

・5th WORK side A『OMG』

・5th WORK side B『風桶』

・6th OPUS『GLOVER』

・7th ATTACK『ピカイチ!』

・『TOKYO TRIBE STAGE』

・8th『Shuttered Guy』

・9th "RE”ATTACK『超ピカイチ!』

・EXTRAシリーズ『ウチの親父が最強』

・10th Anniversary『OFF THE WALL』

・11th STAGE『ラヴ・ミー・ドゥー!!』

・12th WONDER『おどんろ』※中止

・13th "RE”WORK『風桶』

・14th WONDER『おどんろ』

・ふぉ〜ゆ〜 meets 梅棒『Only 1, NOT No.1』

・15th “RE”PLAY『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』

・16th showdown『曇天ガエシ』

 

 

彼女と共に作ってきた作品たちです。

振り返ればものすごい数になっていました。

 

 

15th『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』稽古場にで


 

彼女が演出助手をお休みすることになり、それがなかなか実感が湧かず

湧かないが故に気付かぬうちにその時がきてしまう、という事態を恐れて

ことあるごとに「もうこんな会話するのも最後になるかもしれないんだな…」

とあえて口走ることにより、訪れるお別れの瞬間をきちんと意識しようとしていました。

 

 

もちろん自分だけでなく、梅棒メンバーそれぞれにとって、そして梅棒という団体に欠かすことのできない、本当に大きな存在となっていて、メンバーそれぞれが彼女との最後の現場を惜しんでいたように感じます。

 






それでも、泣いたりすることなく笑顔でお別れできたことは、彼女と過ごしてきた日々と関係性を物語っていたように感じましたし

 

「きっとすぐまた会えるし」という根拠のない予感がそうさせていたんだと思います。

 

 



 

 

1週間が経って、寂しすぎるし、久しぶりに自分にぽっかりと大きな穴が空いた気分です。

 

これから先、自分はどうやって梅棒を演出していけば良いのだろう。

そう、梅棒に関しては、この8年間彼女抜きで作ったことがないわけですから。

 

 

 

 

とはいえ、本当にありがたいことに、次を担う新しい演出助手さんとの出会いがあり

彼女自身がきちんと引継ぎをしてくれたことで、そんな心配はいらない環境が整いつつあります。

 

自分は本当に出会いに恵まれているな、とつくづく思います。

 

 

 

 

 

40歳になった今、ドラえもん最終回ののび太の気持ちが痛いほどわかります。笑

 


自分が一人前の演出家になった姿を見せることが、彼女へのなによりの恩返しだと思って。

 

そして、彼女がまた演出助手をやりたくなった時に、どこよりもあたたかく、そして頼もしく迎えられるような団体になっていたいと強く思う。

 

 

 

 

入倉、ありがとう!またね!!!