「奉行の石田殿が、粗探しをしてるとの噂ですぞ」
利休の茶室に招かれた家康は
忠告する。
茶室では諸大名と謀り、
反豊臣を掲げられる
密会が行われてるなどの、
非ぬ話しも耳にする。
「唐入りに反対する諸大名も多い中」
「亡き秀長様に変わって愚痴を聞いてるまで」
静寂なる狭い茶室には緊迫感がある。
膝と膝をつきあわす平等な空間。
大身や小身にかかわらず、
虚飾なくありのままでいる世界。
へつらう事なく本音で話し合う
場である。
落ち着いた作法で茶を振る舞われ、
茶室の趣向に感銘をうけつつも、
誤解を招かぬ様に、
意思疎通に必要な根まわしを
する様に提案する。
「手前が折衝役となりますが」
「奉行らは大徳寺の木像や、茶道具の売買が
私欲を肥やしてる等と」
「こじつけた理由で糾弾を始めてる様子」
家康の諜報力には驚きつつも、
小田原より秀吉との不仲説は
耳にしてる。
「…秀長殿が居たからですぞ」
「秀吉殿の意固地をたしなめられる人物は
少なる一方」
「自重なされませ」
利休の娘が自害した事実は秘匿されてるが、
豊臣政権の重きに存在する家康には、
大半の内容を把握してる。
「殿下は隠居され、
秀次様が豊臣の栄華を極められます」
「それら支える茶の弟子達も多く付き添うので」
「一介の自由気ままを求める処です」
「殿下には茶頭を辞する所存、
蒲生氏郷殿はご出世されてるので」
「古田織部正(ふるたおりべのすけ)を
新たな茶頭へと」
「ご推挙しようかと」
家康は利休の本根に驚く。
「古田殿ですか」
「でも、その様な内密な話しをされては…」
利休は微笑みながら
「侘び茶では、真心を伝えるのが」
「おもてなしです」
家康はその心根が、
むしろ危ういと見抜くのであった。
続く🌷