今、漱石が面白い・・・。


新刊本を読む合間に、


できるだけ古典を読む時間を作るようにしているのですが、


最近「硝子戸の中」という短編を読んで以来、


結構はまってしまい、


「野分」「文鳥」草枕」「書簡集」など、


短めの作品を中心にぐんぐん読んでいます。



学生時代「坊っちゃん」とか「三四郎」「こころ」などを読んだ記憶がありますが、


特にそれ以上興味もわかず、


これまで、あまり読んだことはありませんでした。



しかし、今これらの作品を読んでみると、


けっこう面白く、


特に、あの文豪も、


私達と変わらないような悩みをもちながら日々を送っていたのだな、


と共感できるものが多く存在します。



それと、いくつかの作品を読んで感じるのは、


何ともいえない、やさしさです。



当時の写真では、いつも気難しそうで、怒っているような顔をしていますが、


その文章の底に流れるやさしさが、


しばしば心を打ちます。


特に、弱者や悩めるものに対する優しいまなざしは、


おそらく激動の時代、多くの悩みを抱え、


その中で生きてきた漱石の、


深い人生観から来るものであろうと推測されます。


だから、あんなに多くの素晴しい弟子が、


漱石のもとに集まったのでしょう。




「硝子戸の中」に、漱石の優しさが光るこんな一説があります。



悲惨な過去を持つ女性が、漱石の家を訪ね、


悩みを打ち明け、漱石にアドバイスを求めます。


しかしあまりに悲惨で救いようのない体験談に、


漱石はただジッとしているだけで、うまくアドバイスが出来ません。


仕方なく帰る女性を、夜も遅かったので送っていく途中、


女性が「先生に送ってもらっては、勿体のうございます。」と言います。


漱石は「勿体ないわけがありません、同じ人間です。」と言います。


女性が再び、「先生に送っていただくのは光栄でございます。」と言うと、


漱石は「本当に光栄と思いますか?」と聞きます。


女性は「思います。」と答えました。


そこで漱石は力強く


「そんなら死なずに生きていらっしゃい。」


と言いました・・・。




このあと女性がどうなったかは書かれていませんが、


おそらく、この最後の一言で、


この悩める女性は、大分救われたのではないかと思えるのです。


医療者としても、


こういう一言が言えるようになりたいものです。




多くの悩みの中で生き通し、


人を励ます多くの著作を残した漱石。


じっくり、すべての著作を読んでみたいと思っています。



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