孤高のメス | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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レンタルビデオ鑑賞日誌



(ほぼ)一日一本のペースで映画の感想を書いてます。

孤高のメス [DVD]/堤真一,夏川結衣,吉沢悠
¥4,935
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内容:現職医師・大鐘稔彦のベストセラー小説を堤真一主演で映画化。見栄と体裁を気に掛け、簡単な手術すら行われない地方病院に赴任した外科医・当麻鉄彦。彼は「目の前の患者を救いたい」という信念の下、次々とオペを成功させ、人々の心を動かしていく。 (Amazonより)


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はい!今日は2010年東映製作の「孤高のメス」をば♪





大学病院に依存しきった市民病院・さざなみ病院に、外科医の当麻が赴任してきた。患者のことを第一に考え、オペも鮮やかな手際で対応する当麻。そんな彼に第一外科医長の野本らは反発するが、その一方で看護師の浪子たちは仕事へのやる気を取り戻していく。そんな中、市民病院の強化に努める市長が末期の肝硬変で倒れてしまう。彼を救う手段は法で認められていない脳死肝移植のみ。そこで当麻が下した決断は……(goo映画より)




はい、20年前のとある地方都市を舞台に、地域医療や臓器移植など様々な医療問題の中で

葛藤する一人の医師の姿を描いたヒューマンドラマです。



約20年前、平成に変わって間もない頃の日本。とある地方都市の医療を支えるさざなみ病院は、

しかし大学病院から派遣される医師に依存しきっていた。

 そんな中、現状に危機感を抱いた市長大川(柄本明)や院長実川(平田満)の招きを受け、

アメリカで修業を積んだ外科医当麻(堤真一)が赴任する。万事ことなかれ主義の他の医師達と

違い患者の命を救うことを第一に辣腕を奮う当麻に、看護婦の中村浪子(夏川結衣)らは

自らの仕事への誇りを取り戻していくが、ある日市長の大川が肝硬変で倒れてしまう。

大川の命を救う方法はただひとつ、当時まだ法制化されていなかった脳死患者からの

肝移植のみ。果たして当麻の決断は…?ってなお話。



で、感想。



うん、良作です。近年の邦画の中ではかなり上位の部類に入る映画だと思いますよ、

個人的には「ディア・ドクター」 より好きですしね。



「患者の命を救う」、ただそれだけを胸にメスを揮う外科医・当麻。設備の整わない

地方都市の一病院では高度な医療は出来ないと事なかれ主義に終始する大学病院から

やってきた他の医師たちとの間で軋轢が生じる中、それでも不可能と思われていた高難度の

オペを次々と成功させていく姿はまさに「孤高のヒーロー」ですね。演じる堤真一も

この寡黙な男を好演しております。


ただ一方でちょっと残念というか惜しいと思ったのは、これがあくまで“ヒューマンドラマ”

あるという事。法制化されていない中で脳死患者からの臓器移植を強行する事は、

医師免許の剥奪はおろか殺人罪での訴追の恐れもある。本作はあくまでその問題に直面した

当麻ら医師達の葛藤を中心としている一方で、例えば脳死判定とか未成年者の臓器提供とか、

そういった社会問題的な要素に関しては限りなく簡略化されているんですよね。

まぁ好みの問題もあるし結果として非常にわかりやすーい物語になっている事も

確かなんだけど、個人的にはこれを契機に医師不足や臓器提供者の少なさといった

今日の諸々の医療問題まで考えさせられるような骨太さがあったらなお良かったなぁ、と。

少なくともこれを観てドナーカードを持とうとか思う人はまずいないでしょうからね。

問題提起では無くあくまでエンターテインメントとしての映画に終始している事、これが

若干の物足り無さを感じる要因かなと。

あとは大学病院から来た医師たち(生瀬勝久、堀部圭亮など)のキャラクターが

いささかステレオタイプに過ぎるのもちょっと気になりました。





総評。

とはいえ夏川結衣余貴美子ら助演陣も総じて好演しておりますし、ヒロイックな

ヒューマンドラマとしては非常によく出来ていると思いますよ。

ってワケでオススメです。