前記事の続きです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半の始まりも

 

客席の照明が明るくなったり暗くなったりを繰り返し

 

最後に舞台が鮮やかな赤色に息づきました。

 

 

 

 

にこやかに登場する牛田くん。

 

 

 

 

Op.118が始まって、目の前にひらける大海原。

 

 

 

最近ののコンチェルトのアンコールで、いつも弾いてくれたので

 

すっかりお馴染みになって、お守りのように感じるOp.118-2。

 

 

ああ、こうしてずっと聴いていたいな。

 

今日が終わらなければいいのに。

 

 

この牛田くんのブラームスが聴きたくて

 

はるばる台湾まで来たけれど

 

心はもっとずっと遠くまでいざなわれる。

 

時間も距離も超越したような、この不思議な感覚…。

 

 

 

相変わらず客席から、ガサガサと雑音が聴こえてくるけれど

 

微塵も動じることなく

 

久しぶりなのに色褪せることもなく

 

さらに磨き上げた演奏を聴かせてくれる牛田くん。

 

 

日本のホールとは、いろいろ勝手も違うはずなのに

 

この音色の美しさと完成度の高さはどうだろう。

 

 

すごいな。やっぱり彼はプロ中のプロだ。

 

 

 

 

いつもはあまり印象に残らないOp.118-4が

 

今日はとても印象的でした。

 

 

深い深い海のような包容力を感じる低音が

 

お腹の奥まで響いてきて

 

身体がじんわり温かくなる。

 

 

両手がクロスして奏でられる

 

ボーンボーンという振り子時計のような音色が

 

時間をさかのぼり

 

歴史をさかのぼり

 

忘れていた記憶を呼び覚ますようなこの感覚。

 

 

 

続くOp.118-5のロマンスの慈悲深さに

 

すべてのものが

 

可愛く愛おしく、大切に感じる。

 

 

「ありがとう」

 

そんな思いが自然と溢れ出してくる。

 

 

 

 

 

 

始まった。

 

寂しい雨の糸のようなOp.118-6。

 

 

絶望と意識の混濁。

 

突然大きく燃え上がる、消えたはずの情熱の炎。

 

 

そして、胸が痛むほどの

 

孤独で悲しい最後の音色。

 

 

 

今日も最後の一音を静かに看取るように

 

大切に大切に

 

Op.119にバトンタッチされたことが

 

私はとても嬉しかったです。

 

 

この瞬間がとても好きなので。

 

 

 

 

さまよう音の名残を両手ですくい上げるような

 

Op.119の始まりの

 

包み込むようなメロディにホッとしながらも

 

見え始めた終わりを感じて寂しくなる。

 

 

 

そよ風のようなOp118-2を抜けて

 

笑いながら野原を駆けているようなOp118-3。

 

 

時々でんぐり返しする。

 

 

好きなんだよな、可愛くて。

 

次の曲が最後って分かってても。

 

 

 

 

 

最後のラプソディ。

 

 

最後なんだけど、身体の奥からエネルギーが突き上げてくるような、この感じがたまらない。

 

 

終わらないで、と願いながら

 

心の中で、すっかり覚えたメロディをなぞる。

 

 

時々聴こえてくる、唸るような牛田くんの吐息。

 

光を反射するメガネのフレーム。

 

 

低い鼓動のような低音。

 

 

 

ああ、私

 

次いつ聴けるかな?牛田くんのブラームス。

 

 

 

読んだばかりのインタビュー記事の

 

「演奏者の存在は、それら遺された作品の命を繋ぐためにあるからです」

 

という彼の言葉を思い出しました。

 

 

ありがとう、牛田くん。

 

ありがとう、ブラームス。

 

今日ここで、この作品を聴くことができて本当によかった。

 

 

 

絶望の叫びのようにも

 

喝采のようにも聴こえる響きを残して

 

最終曲が終わりました。

 

 

 

 

 

 

 

立ち上がり、笑顔で挨拶する牛田くん。

 

 

しかし驚いたのは、演奏が終わるか終わらないかのタイミングで

 

たくさんの人たちが一斉にスマホを彼に向けて撮影を始めたこと。

 

 

えっ?ポーン

 

これがこの国の人たちがクラシックを聴くスタイルの当たり前…?

 

だからみんな電源切ってなかったの?(^^;)

 

 

これが異文化ってやつ…?

 

 

 

 

 

 

アンコールの1曲目は、ショパンの舟歌でした。

 

 

ショパンコンクールで彼の演奏を聴いた台湾のファンも多いでしょうから

 

これは嬉しいですよね照れ

 

 

 

ダイナミックにスケールを広げ

 

自由に歌うショパンの音色。

 

 

力強く たくましく

 

どんな荒波にも負けずに進む船。

 

はじけて光る、しぶきの粒が見えるよう。

 

 

安心だ。

 

この大船に、ただ身を委ねて揺られていれば。

 

 

ああもう、胸がいっぱいで熱い何かが溢れてきそう…。

 

 

 

 

 

演奏を終えて、立ち上がる彼の姿を映すために掲げられた

 

いくつものスマホの光が

 

港の光を映す海面のようでした。

 

 

 

 

 

2曲目を弾くために彼がピアノに近付くと

 

拍手をする聴衆から喜びのどよめきが起こりました。

 

 

 

ショパン:ノクターン17番。

 

 

あったかくて繊細で

 

透き通るような音色を聴きながら

 

いろんなことを思い出していました。

 

 

12年前、牛田くんの海外初公演に行きたかったけど行けなくて

 

今頃演奏してるのかな?と、気になって気になって

 

ジリジリしながら過ごしたこと。

 

 

10年前、家族旅行で台湾を訪れた時

 

鳴りやまない耳鳴りから始まったうつ状態に悩まされていて

 

旅を心から楽しむことが出来なかったこと。


 

龍山寺で赤い石を投げながら

 

叫ぶように願ってた。

 

「どうぞ鬱が治りますように。暗闇から抜け出せますように」

 

 

あの頃、何度も思った。

 

「いっそ死んでしまったら、どんなに楽だろう」

 

 

 

ちゃんと鬱は治ったし

 

いろんなことを乗り越えて来た。

 

 

今、私は一人でここまで来て

 

牛田くんのピアノを聴いている。

 

 

 

生きててよかった…。

 

 

 

堪えきれず

 

涙が次々溢れてきました。

 

 

よく泣くなあ、私。

(実は、今日これで3回目)

 

 

 

来てよかった。

 

本当によかった。

 

 

牛田くんと出会って

 

私はどれだけ世界を広げてもらっただろう…。

 

 

 

血が通うような、赤い舞台。

 

彼を歓迎し、一緒に呼吸しているような、このホールの空気。

 

 

忘れたくない。

 

深呼吸して、この空気をしっかり味わおう。

 

この光景を、しっかり胸に焼きつけよう。

 

 

 

 

弾き終わり、すっきりした笑顔で彼が挨拶すると

 

たくさんの拍手が起こり

 

たくさんのスマホが彼の姿をとらえ

 

たくさんのブラボーの声が飛びました。

 

 

 

おめでとう、牛田くん。

 

ありがとう、牛田くん。

 

 

どうかこれからもずっと

 

彼が音楽の神様に愛され続けますように。

 

 

 

 

何度かカーテンコールで舞台に登場してくれて

 

最後は胸の前で両手を合わせ

 

ニッコリ微笑んで舞台袖に消えていきました。

 

 

 

 

 

 

 

なんと、終演後にサイン会があるらしいことが分かりました。

 

 

どこに並べばいいのかな、とキョロキョロ見回したら

 

螺旋階段に行列ができ、2階まで続いています。

 

 

わー、牛田くんすごい人気だね照れ

 

 

 

牛田くんの顔のアップを映したスクリーンの前に長机が置かれ

 

既にサイン会が始まっていました。

 

 

スタッフから渡されたパンフレットに次々サインを書いて

 

顔を上げて談笑している牛田くん。

 

たくさんの人が彼にスマホのカメラを向けています。

 

 

途中、暑くなったらしく、サインの手を止めてジャケットを脱いでました。

 

 

 

今日のこの感動を、たくさんお伝えしたかったけれど

 

工場みたいに次々机に重なるパンフレットにサインをする牛田くんは大変そうで

 

一言言葉を交わすのがやっとでした。

 

 

 

 

 

いただいたサイン

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ホールを出ると、外はすっかり暗くなり

 

闇に浮かび上がったホールは、まるで竜宮城のようでした。

 

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ああ…。

 

 

 

立ち去りがたいなあ…。

 

 

 

 

 

 

 

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