羽生選手が凱旋パレードで仙台を熱く沸かせた4月22日。
(ねえ、羽生くんとチョ・ソンジンさんってちょっと似てない?)
牛田くんがソリストを務めるコンサートに行ってまいりました。
…ん? ちょっと待てよ。
私、これと全くおんなじ書き出しでブログ記事を書いた記憶があります。
…と、過去記事を辿ってみたら、私、4年前の羽生選手凱旋パレードの日は ラン・ランのリサイタルに行っていたのですね。
まだブログを書き始めて間もないその時の記事
↓
4月22日。
この日は天気も良く、初夏を思わせるような暑さ。
前回練馬で牛田くんのオール・ショパンを聴いてから、まだ1ケ月もたっていないのに、
3ケ月くらいたったように感じます。
facebookも終わってしまい、
大きく変わったであろう牛田くんの動向もさっぱり分からず、
寂しかったし、恋しかった。
都響・八王子シリーズ
華麗なるピアノと傑作交響曲
2018年4月22日(日)14:00~
オリンパスホール八王子
プロブラム
program
♪ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調op.30
♪ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調op.95 B.178《新世界より》
今回は1曲目から牛田くんの登場です。
舞台の真ん中に既に置かれたスタンウェイ。
黒い衣装のオーケストラの方々が徐々に舞台上の椅子を埋めていきます。
音合わせが終わり、照明が絞られ、
みんなの視線が舞台下手に集中する中、最初に登場したのは
白い蝶ネクタイをした燕尾服姿の牛田くんでした。
客席の前列に目をやって、知っている顔を確認しているようにも見えました。
余裕です。
ピリピリした空気はほとんどなく、とても集中している強い意志のようなものを感じました。
やがて大友さんが登場し、
2人は目を合わせ、牛田くんがコクリと頷きました。
オケが奏でる川の流れに、そっと漕ぎ出す舟のように
とても自然にピアノの音が乗っかりました。
どこか憂鬱で、なのに人を捉えて離さないような、あの旋律を奏でます。
十分に拍を引っ張り、歌ってるな、と思いました。
旋律をオケに渡し、ピアノはしぶきをあげる川の流れのように。
13歳から少しずつ勉強し温めてきたというこの曲。
一体どれだけ弾き込んだのでしょう。
指が、耳が、体全体が、この曲を知り尽くしている。
曲と牛田くんが完全に一体になっている。
スケールの大きな演奏。
ピアニッシモでも、決してオケに埋もれることなく、見事な調和を保っています。
オケのみの演奏の時、右手でサイドの髪を耳にかけていました。
右。そして左。
その仕草がとても優雅で、気品と なぜか強さを感じました。
演奏は次々とソリストに難題を持ち掛けます。
「これでもか?これがお前に弾けるのか?」
と、挑発してくるラフマニノフに
果敢に挑みかかる勇者のような18歳のソリスト。
なんてことはない。ずっと弾いてきたんだ。
13歳の頃から、ずっと知ってるんだ。
弾き込んで、弾き込んで、弾き込んで、自分は今ここにいるんだ。
牛田くんの演奏には、そんな確固たる自信のようなものを感じました。
敵地に攻め込んでいくような、牛田くんの勇ましい演奏。
力強く弾くたびに、左足がダン!と床を蹴ります。
その白熱した演奏で、ピアノと共に前に進んで行くのではないかと思うほど。
「運命」と言う名の深い深い底なし沼に引きずり込まれていくよう。
やがて大雨で勢いを増した川の濁流に呑み込まれるように、
聴衆をあっという間に引き込み、大きなうねりに巻き込みます。
かと思うと嵐の後の小川のせせらぎ。
キラキラと太陽の光に反射する水面が眩しくて、
思わず目を細めたくなるような清らかできらめく音色。
カデンツァはもう、ただただ圧倒的でした。
骨太で迷いがなく、
目の前の道をしっかりした足取りで進んで行く。
あまりの迫力に瞬きも呼吸も出来ない。
目を奪われ、耳を奪われ、心を奪われました。
痛みにじっと耐えるような表情をしたり、
かっと目を見開いて鍵盤をしっかり見たり、
牛田くんの表情もコロコロと変わります。
要所要所でしっかりと指揮を見て、
オケと指揮者とソリストの呼吸が本当にピッタリで
三位一体、見事でした。
こんなに気持ちいいくらい呼吸の合ったコンチェルトを見るのは初めてかもしれません。
第2楽章。
弦の音色がとても美しかったです。
やがてピアノの音色を織り交ぜて、地球に優しく語り掛けるように。
きらめく水面で小鳥が水浴びをしているような繊細なトリル。
ゆったりと全ての存在を受け入れ、海に向かって流れる広大な川のように。
そしてゆっくりと地平線に沈みゆく太陽。
無数の小さな命の跳躍。
「今日」という日の終わりをそっと告げるような第2楽章の終わり。
そして、第3楽章にむけての心躍るような助走。
いきなりポーンと宇宙に飛び出したような第3楽章。
無数の星が集まる銀貨系の渦に巻き込まれたみたい。
ピアノは歌います。
宇宙の神秘を。生命の不思議さを。
ものすごい速さで動く牛田くんの10本の指。
然るべき指が、然るべき鍵盤の上に乗り、然るべき音を出す。
超絶技巧に惑わされない本物の演奏。
目を見張るような難しく超高速な指の動きの部分も、
真っ向から誠実に向き合ってる。
そう感じました。
この曲はまるでピアノのトライアスロン。
容赦ない難所の連続に、牛田くんの額から汗が飛び散ります。
自分の生命すべてを今この音に注ぎ込むように。
その音は、大友さんの指揮のもと、オーケストラともつれ合い、絡み合い、
大きなひとつのうねりとなって聴衆を翻弄します。
なんて素晴らしいソリストなんだろう。
なんて素晴らしいオケと指揮者なんだろう。
私、もう、演奏中から、立ち上がって「ブラボー!」と叫びたい衝動に何度も駆られていました。
そしてとうとう山の頂から一気に駆け下りて迎えたラスト。
ぴったりと息の合ったフィニッシュ!
鍵盤から指を離す瞬間の牛田くんのポーズがとってもかっこよかったです。
思わず立ち上がりかけて、ハッと我に返って座ったため、膝からバックを落としてしまいました。
今思えばあの時、立ち上がって拍手をすればよかった。
きっと私のように感じていた人が何人もいたのではないでしょうか。
演奏が終わった瞬間、大友さんと牛田くんは、まるで長年離れ離れになっていた恋人同士の再会のように、
もどかしそうにお互いが駆け寄り、ガッチリハグしました。
大友さんの手が「よくやった!」というように、牛田くんの背中をトントンと叩いていました。
会場のあちらこちらからブラボーの声が飛び交いました。
もちろん私も叫んでました。
この演奏がブラボーでなかったら、一体何がブラボーなんでしょう。
大友さんの表情に、仕草に、
彼を一人のピアニストとして信頼し、称賛し、この上なくリスペクトしているのがうかがえました。
繋いだ手を高々と上げてお辞儀をする2人。
長身の大友さんとそんなに背の高さが変わらない牛田くんは、また少し背が伸びたように感じました。
それは18歳の青年としてだけではなく、
1人の演奏家として、一回りも二回りも殻を破ったような大きさを感じ、
思わず畏怖の念を覚えました。
鳴りやまない拍手に応えて、舞台袖から彼が登場するたびに、ブラボーの声があがりました。
でも、アンコールは弾きませんでした。
少し寂しかったけど、この余韻をいつまでも抱きしめておきたい気もしました。
ラフマニノフピアノ協奏曲第3番、もしかしたら牛田くんの代表曲になるのではないでしょうか。
今回の牛田くんの演奏には、確固たるブレのない芯のようなものを感じました。
もう彼は高校生ではなく、
facebookで日常を共有してくれて、
ファン一人一人に返信をしてくれる身近な存在でもなく、
確実に世界にその一歩を踏み出したピアニスト。
そのことを彼自身が一番自覚していたのではないでしょうか。
きっぱりと閉じてしまったfacebookにも、彼の決意のようなものを感じずにはいられません。
ちょっぴり寂しいけれど、私達ファンに出来ることは遠くから見守ることだけです。
大学生になった牛田くんの演奏は、
言葉にならないほど素晴らしいものでした。
これからは世界に、確実にその名を知らしめるピアニストです。
ファンの欲目ではなく、客観的にそう実感した今回の演奏。
ちょっとほろ苦い気持ちです。
だけど応援し続けます。
おめでとう!牛田くん!
ありがとう!牛田くん!
*皆さま、前回のチラコレ記事、少々追記いたしました。
ご興味のある方は覗いてきてくださいまし。
トモハルがすんごいことになってますよん(←ウソ)


