前々回の投稿で述べているが、私はそもそも赤ロケファンなので、V.TVでも、ザッピングしつつもやはり生視聴は赤ロケ中心になる。増して今節は、赤ロケの次に期待しているリヴァーレとの対戦なので、より気持ちが入る。

 

前節の対デンソー2戦目の第4セットに負傷してしまったオクム大庭冬美ハウィ選手に代わって出場した室岡莉乃選手が、恐らく今節はそのままスタメンに入るかなと思っていたが、やはり初戦から出場して来た。OPに上坂瑠子選手を回し、OHとして長内美和子選手とペアを組んでの記念すべきVリーグ初先発。室岡選手は春高バレーに1年生時から東龍のレフトとして出場し、最初の年の決勝ではNEC曽我啓菜選手、JT西川有喜選手、東レ水杉玲奈選手等タレント揃いの金蘭会と互角に渡り合うというインパクトのあるプレーで存在感を示すと、その後“小さなエース”として3年間センターコートに進出するという素晴らしい活躍を見続けていたことに加え、前々節の対姫路2戦目最終セットのパフォーマンスで個人的に注目度が急上昇していた。

ところが第1セット、NECの分厚い攻撃陣はミドル、ライト、バックアタック、ブロード、ブロックと何をやっても決まる感じで25-10の大差で失う。その後、何とか試合らしくはなったが層の厚いNECの前に敢え無くストレート負け。スコアを見ると解説の吉田敏明さんが仰る様にオクム選手の欠場は、予想してたとは言え想像以上にこたえているのかなと思わざるを得ない、そんな試合だった。ただ、注目していた室岡選手はというと、攻撃では持ち味の相手ブロックを利用するクレバネス、そしてバックアタック、サーブ、守備でもディグ、フロアディフェンスに至るまで、随所に非凡さを覗かせていたと思う。この試合のスタッツを見るとアタックが13/37決定率35.1%で、得点及びOHとしての決定率は堂々チームトップの成績を残した。

 

ここで注目したいのはサーブレシーブの0/0。新人ということを気遣ったというのもあると思うが、リヴァーレは室岡選手にはサーブレシーブを免除していたのだ。このことについて考える前に翌日の第2戦を振り返ってみたい。

 

この日は昨日の先発とメンバーは一緒だが長内選手と上坂選手のポジションを入れ替え、長内選手がOPに。NECは今季絶好調の柳田光綺選手を残し、ウィルハイト選手に代えて古賀紗理那選手、曽我啓菜選手に代えて川上雛菜選手とレフトを入れ替えて来た。圧勝の翌日に入れ替えで古賀選手が出て来るところがいかにもリッチ感を醸し出す。かくして第1セットは昨日と同じ25-10であっさり失う。ただ、昨日と違い、今日は室岡選手にサーブレシーブの役割を与えていたことにより上坂選手、長内選手はより“攻め”に気持ちを向けることが出来ていた印象があった。そして第2セット、昨日も第2セット序盤の入りは良かったのだが、リズムを完全に自分たちのものにすることなくNECの強力な攻撃陣に押し切られてしまった。しかし、この日は室岡選手にボールを集めたことで切りたいところでサイドアウトが取れる様になり、最後は先にセットポイントを奪われながらも、室岡選手のアタックで取り切った。第3セットはNECも曽我選手をスタートから出して来るなど、決めに来た感のある体制で、リヴァーレは押し込まれる感じで失う。しかし、このセット中盤位から室岡選手のサーブレシーブでの存在感が大きくなって来る。そして第4セット、この試合からようやくSの雑賀恵斗選手がOH2択の場合等でも室岡選手に上げるケースが増えて来ていたが、このセットでは当然ベンチの指示もあると思われるが、完全に室岡選手中心の組立て。NECも対策が十分でないため、室岡選手を押さえ切れず失点を重ねる。また、サーブレシーブでも室岡選手の出番が増えたことにより、上坂選手ものびのびプレーが出来ていて、MBの渡邊彩選手も交えてリヴァーレがやりたいバレーが出来ていた印象で良い形でセットを奪い返し、フルセットに持ち込む。最終セットでは底力に勝るNECに食らいつくも、惜しくも敗れてしまったが、昨日の試合と比べると大きな違いは明らかだった。

 

室岡選手のプレーに目を向けてみよう。この日のスタッツを見ると得点、決定率は20/57,35.1%で決定率は昨日と同じ、大きく違うのはサーブレシーブで昨日の0/0に対し、12/26,成功率46.2%と守備での貢献度の違いが凄まじく、その分上坂選手の負担が軽くなり、得点も決定率も上がった。ここが初戦と2戦目を内容を激変させた大きな要因だろう。

 

長内選手は自分でパスしてアタックすることで、リズムを掴む選手なのだと思うが、室岡選手やリベロの正面に来たサーブでも横からレシーブをする場合があり、もうちょっと省エネして攻撃にかけるエネルギーの比重を増やせばスタミナ配分にも効果的だと思うし、室岡選手がコートにいる時は少しやり方を変えても良いのかも知れない。そして室岡選手のレシーブだが、個人的には“かなり”上手いと思う。サーブの良いNECにこれだけの数字を残せれば十分だし、スタッツに出ないディグやトランジションの際のセッターへのパスなどポジション取りも含めて、高校卒1年目の選手としては卓越した技術とセンスを感じる。

 

考えてみれば前述の通り春高バレーでは1年生の時から東龍のエースとしてNEC曽我選手やJT西川選手、PFUバルデス・メリーサ選手と堂々と渡り合い、準優勝、優勝、ベスト4と華々しい活躍をして来た選手。実績だけ見れば東レ石川真佑選手と遜色無い。ただ、やはりOHとしては身長の低さにより、どうしても実績に値する期待はされていなかったように思う。その石川選手や古賀選手のように代表での活躍を期待する声もあまり聞こえて来ず、実際、V.TVでリヴァーレの試合の解説を務めた前田健さんや吉田敏明さんからは身長の低い選手のプレーを褒める事はあっても、代表を意識した発言はなく、やはり協会周りでは低身長の選手は厳しいという共通認識を持つ流れもあるのかなとも感じた。しかし、個人的には以前から思っていたことだが、概して春高バレーで活躍し、Vリーグまで上がって来るような身長の低いアタッカーはジャンプ力やパワー、或いはディフェンスの際の敏捷性など身体能力全般に非常に秀で、相手のブロックに対抗する技術に優れている。例えばリヴァーレと対戦したNECにも柳田光綺選手という168cmのOHがいて、生で見るとよく分かるがジャンプ力と、アタックの際の打撃音は会場がどよめくほどの凄まじさだ。柳田選手はブロックについても狩野舞子さんのYouTubeチャンネルで迫田さおりさんに「嫌な選手」と言わしめた程の能力を持つ。この2連戦でもOHでは唯一全セットに出場して2連勝に貢献している。身長の低いOHと言えば、代表だと近年では171cmの内瀬戸真実選手か。その内瀬戸選手とて、代表で欧米の高い選手との対戦で極端に身長差をハンデと思わせるプレーはあっただろうか。欧米に比べたら日本の平均身長は低いので、誰でもシャットされる事は珍しくないが、身長の低いOHがブロックされると、どうしても身長がハンデになっているような印象になってしまう。万全な体制でトスが来れば、高いブロックを利用することには長けているので、決定率はそれ程劣っていないのでは無いか。室岡選手はアンダーエイジの代表では背の高い外国の選手とも対戦経験があるはずだし、1度代表での彼女も見てみたい。中田久美さんでは考え難いが、真鍋政義監督ならあるかも。

話は逸れたが、NECとの2連戦で室岡選手が全ての面でVリーグでも通用する事が分かった。これからはマークが厳しくなり、サーブでも狙われて来るだろう。しかし、彼女が踏ん張れば上坂選手がのびのびプレー出来るし、長内選手の負担も軽くなり、余裕が出来ると野中瑠衣選手の出番も増えて来るだろう。今季の野中選手はピンチサーバーからの短い出場時間で結果を求められる、気の毒な起用になっているような状況だが、昨季のノッてる時の野中選手を見ているだけに、もうちょっと彼女の良いところが発揮できるような使い方をしたい。サーブレシーブからの攻撃が安定して来れば、多治見麻子監督も野中選手を戦略的に起用できるようになるだろうし、きっと、そうしたいだろう。それと、Sの雑賀選手、境選手も攻撃のカードが増える事で、組立て面においてより頭を使うことになる。しかし、これは確実に彼女たちの成長に繋がるだろう。

 

 

このNECとの2連戦、後になって思うことだが、初戦のリヴァーレは気持ちが対戦相手よりも自チームの整備に向き過ぎていたのかも知れない。勿論、そんな事は練習でやるべきではあるのだが、実戦じゃないと気付けない、学べないこともある。その意味で試合としては落第点を付けざるを得なかった初戦だが、2戦目を見ると、もしかするとチームとして進むべき方向が見えて来た、大きなポイントになる試合だったと言えるのではないだろうか。答えはこの先の戦い方にあるが、良い形を作ってオクム選手の復帰を待ちたいところだ。

次節は今季未だに片目の開かない車体との対決。相手も必死に向かって来るだろう。楽な試合にはならないと思うが、NEC2戦目の良い流れを持って臨みたい。