エリックカレー岐阜駅店で新しく定番入りさせるためのカレーの試作を二日がかりで行いました。


今回トライしたのは「キーマ・ベイガン」。いわゆる「茄子とひき肉のカレー」です。


一日目でベーシックなラインを決定して、


今日はそれをもとに仕上げ方の全く異なる4種類のキーマを試作しました。



ENSO美味いもの大全~今日はこんなん出来ましたぁ~-sisaku

A:バターミルクのほのかな酸味とトマトの風味が前面に出たすっきりタイプ


B:ココナツミルクでとろりと仕上げた、ややコク甘系のマイルドタイプ


C:B同様ココナツミルクに、こちらは個性的な仕上げスパイスをふんだんに使ったガチの南インドタイプ


D:甘味を抑えすっきりとまとめ、強めの塩とブラックペッパー主体のスパイスで仕上げたキリっとタイプ



どれがおいしかったかと言えばあくまで個人的な感覚としては即答でCです。


他に試食した何人かもほぼ同意見。むしろダントツの人気。


ここで、じゃあCで行きましょうとすんなりまとまるかと言えばそうはいかないのが難しいところ。


なぜならば今回のキーマ・ベイガンに関しては、


個性派が揃ったエリックのラインナップの中にあって、最も万人受けするものを一つ作りましょう、


というテーマがあったのです。「商品コンセプト」というやつですね。


試食した人間はみな根っからのカレー好きで個性的な味にも慣れてますからCを推すのはある意味あたりまえ。


しかしそれは裏を返せば食べ手を選ぶ、好き嫌いが分かれるということでもあります。



カレーに限らず慣れた人にとっておいしいものと誰にとってもおいしいものがいつでも一致するわけではありません。


逆に、たまさか一致するものができたらそれは強力な「看板商品」になるわけです。


たとえばエリックカレーでいうと「エリックチキンカレー」がそれにあたります。


(ただしこのチキンカレーの場合、「辛すぎて食べられない」というケースが一定数であり得ます。その点においてある意味、欠陥を抱えた看板商品なのかもしれません。)



話がそれました。


直感的においしいと感じるのはC、しかしそれはコンセプトに合わない、そこで浮上するのはAということになります。


それと同時に、AとCの中間よりややA寄り、であるところのBも同時に浮上します。


ここであらためてAとBを一口ずつ食べ比べるという展開になるのですが、


食べ比べるとどうしてもBに比べてAが、ややつまらない、インパクトに欠ける、という印象を持ってしまいます。


ここで気にしないといけないのは「比較の落とし穴」と「一口試食の落とし穴」。


人間はひとくちずつの比較だとどうしても「濃い」ほうに軍配を上げてしまう習性があるのです。


また話がそれますが、既製品の料理の味付けが一般的に濃い物ばかりになりがちなのは


モニターテストにおける「ひとくち比較」の弊害だという説があります。



話をもどすとそのあたりを脳内補正しつつAかBかの判断を下さないといけないわけです。


これがまたすんなりとは答えを出しにくい。出しにくいんですがひとつ言えることとしては


Bにはココナツミルクが、ガツンと前面に出るわけではないですが使われています。


ココナツミルクの風味を好まない方は、ごく少数ですがいらっしゃいます。


コンセプトからすると少数とは言えここは重視しなければいけません。


じゃあAか。


いやその前にまた別の方向性B´が考えられます。


ココナツミルクを避け、同じようなコクを出すものとしてカシューナッツもしくはアーモンドパウダーを使う新しい案。


そろばんを弾きます。


あっさり原価オーバーです。


カシューナッツはとても高価ですがカレーの売価600円は動かすわけにはいかないからです。


やっぱりAか。


Aなんですねえ。Aで行くことに決定、です。


しかしここまで試食してくると、Aのおとなしさがやっぱどこかで心にひっかかります。


それが「ひとくち比較」の印象によるものであるとか、万人受けを目指す以上避けがたいことであるとか、


それは充分わかっていても、です。


そこでそのあたりの微妙な引っかかりの気持ち悪さをとっぱらうために、Aを若干改良することにしました。


改良といってもささやかなことです。


・ハーブ感覚で入れていた****(企業秘密w)の、入れるタイミングを工夫し香りのインパクトがより残るようにする。


・最終的な盛りつけの時に千切りショウガをトッピングする


この2点。


千切りショウガのトッピングはインドカレーとしては比較的オーソドックスな手法ですが、


慣れていない方には違和感もあろうということで最初はナシでずっと考えていたのですがここにきて再浮上。


全体にショウガを全体に散らすのではなく一か所にまとめて乗せれば、


いやだと思う人もよけやすいでしょう、という判断です。



まとまりました。


最終試食です。


この段階になると一口試食ではダメです。


一食まるっと食べなくては意味がありません・・・と言いたいところですが、


ここまででもうさんざん試食してるんですよね。ひとくちずつ40回とか。すでにかなり苦しい。


なのであきらめてハーフサイズで。真価を判断しうる最小単位といったところでしょうか。


・・・結果は完全に満足いくものでした。


しかも特に最後の2工夫によるところが大きい満足です。



賢明なる読者諸氏はすでにお気づきかもしれませんが、


この試作、最初からAありきの出来レースでは、と疑ったとしてもそれはおおかた間違いではありません。


おおかた、と書いたのは、もしかすると「この際思い切ってCで!」とか「Bは許容範囲内じゃね?」


みたいになる可能性もゼロだとは思っていなかったからです。


しかし確かに出来レースと言えば出来レース。


ただし、レースをやらなかったら多分最後の「ショウガと****」までには至らなかっただろうな


という意味で、とても意義のある出来レースだったと言えるのではないでしょうか。




あと付け加えるならば、今回はボツになったCのやつが、


新たにお宝レシピとしてレシピ帳に書き加えられたという成果。


またこれはいつか日の目を見ることもきっとあるでしょう。















休日最大の楽しみと言えば二度寝につきるわけですが、


二度寝を上手に遂行するコツは、


一度おきて朦朧としている状態のうちにさっきまで見ていた夢を思い出すことです。


夢の断片だけでも思い出せればそこを入り口に再び夢の世界へと戻れるというわけです。


故・中島らも氏はこの行為を


「夢のしっぽをつかまえる」


と表現しました。天才です。


なお氏は生前、上手に夢のしっぽをつかまえられるようになれば


24時間だろうと36時間だろうと惰眠を貪り続けることができる、と豪語されていたそうです。




話はかわりますが、家庭用冷蔵庫の扉棚の一番上はたいてい「卵コーナー」になっていますが、


その横の微妙なスペースをみなさんはどのように活用し、なんとよんでいますか。


そのスペースを「納豆のタレ場」と名付けたのは


かの吉田戦車氏です。言わずもがな、天才です。


氏はかつて空き箱を利用し、


「納豆のタレ場」における納豆のタレや芥子やお刺身パックについてくるワサビやお歳暮のローストビーフのタレの


散乱を整理する工夫を施し、その様を一遍の句にしたためました。


「納豆の タレ場で光る 吾が英知」


わたくしは家で冷蔵庫を開けるたびに必ず毎回この句が頭をよぎります。


そんな生活がかれこれ2年くらい続いています。


吉田戦車氏を多少うらめしく思っております。