そぼ降る雨の中、人影もまばらな庭園美術館へ。

今日から新たな展示が始まる。

 

開館40周年記念「装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術」

 

 


 

 

アンリ・ラパンの装飾に光を当てた展示。

 

 

小客室の壁の油彩画。オーク色のカンヴァス地に緑の濃淡と銀色で描かれた樹々。

小客室そのものがうっそうと樹々の茂る庭園。窓からの景色も樹々の緑。

高い天井の小さな部屋そのものが物言わぬ森。銀色のせせらぎや小さな滝も静かにながれてゆく。

 

 

 


壁の隅の部分にオーク&緑色の太めの紐(絹?)が張り巡らされていることに初めて気がついた。(写真はピンクに移っているが、実際には壁のオーク色と同系色)なんて凝っているのか。当時のはやりだったのだろうか?(展示品に気を取られがち。)

 

この壁紙の修復が1年以上かかったというエピソードは書籍「旧朝香宮邸物語 東京都庭園美術館はどこから来たのか?」で知った。どれだけの人がこの小さな部屋がこうしてここに在る為に関わっているのだろう。

 

 

香水塔のある大広間のカーテンはすべてあげられ、雨にしっとりと濡れた庭が絵画のよう。

 

大広間のアンリ・ラパンの壁紙。樹々と動物たちの見える背景から次第に噴水などの人工物のある風景に。大広間の壁紙を眺めながらぐるりと一周すると、四方八方に庭が続いているような錯覚に陥る。

アンリ・ラパンがデザインしたセーブル陶磁器。優しい草花。

雨が止み、丁度顔を出した陽の光が雨に濡れた石畳を虹色に輝かせていた。

当時の宮様方もご覧になったのだろうか。雨上がりの一瞬の魔法を。

 

アンリ・ラパンは日本だけでなく本国フランスでも忘れられかけていた。この旧朝香宮邸が美術館として在りし日のその姿を(苦労の末)守り続けてきたおかげで、彼の装飾芸術が再び見直されたのだという。

 

これだけの仕事を成し遂げた人の存在が、時代と共に消えるように忘れ去られていく。

庭園美術館の存在意義を強く再確認したエピソードだった。

 

 

 

 

 

ラリックの正面玄関の装飾パネル。ガラスが割れているもの。玄関の四人の女神はちゃんといるので、当時一度割れて取り替えたのだろうか?横たわる女神も美しく見飽きない。いつも玄関は混んでいて次から次へと人がやってきては写真を撮っていく。こんなに近くでまじまじと眺められることなどないので、貴重な体験でもあった。

 


 

100年以上前に生きていた人々の息吹。遠い時間の向こうへの旅。
雨のせいか人々もまばらで、邸宅に招かれた客人のようにウロウロと見て回る。カフェでの昼食をはさんで5時間いたけれど、全く見飽きない。


 


当時の朝香宮邸の貴重なフィルムには、邸宅で飼われていた白孔雀が大きく羽根を広げていた。
小高い丘に敷物を敷いて、小さな宮様方を乗せて滑らせてあげたり。アール・デコのワンピースに身を包んだ女性と子ども達が仲良く庭園を散歩する姿や、庭の池にたらいをうかべ姫宮様がたらいにのってはしゃぐ姿も。

 

今は遠い日々。ここに笑い声が溢れていた。

 

 

新館の展示は、1925年のアール・デコ博覧会と1931年パリ国際植民地博覧会。(植民地博覧会などというものが開催されていたことに驚愕!!)

 

ラリックの女神像が出迎える会場。博覧会を歩くように建物の絵を観て回る。

 

当時の記録フィルムの映像が壁に映し出されており、まるでアール・デコ博覧会に行ったみたい!

 

昼間はくたくたになるまで博覧会会場を歩き回り、次から次へとパビリオンを見て、夜はネオンに照らされた会場には大きな花火。

 

 

長いフィルムは、憧れのアール・デコの時代への旅そのもの。

 

 

 

 

 

 

会期 2023年9月23日~12月10日まで。

 

今回の図録がとても素晴らしいので、ぜひ!!表紙は布張りに型押し。お洒落!中は紙をところどころ変え、見たい写真を大きく!詳しい資料も豊富で、素晴らしい。これまで出ている旧朝香宮邸の書籍の中でも一番いい。図録だからできる遊び心が感じられて見飽きない。お買い逃がしなきように。

 

 

前回の展示「邸宅の記憶展」のブログはこちら↓