アメリカ横断ウルトラ・クイズでは、クイズ問題の面白さが番組の命と考えていました。
だから、クイズを作るクイズ問題作家には、いつも厳しい注文を付け、作家の皆さんも、我々の無理な注文に良く答えてくれたと感謝しています。
このブログでも、クイズ会議の様子を何回か紹介しましたが、作られた問題に対する評価はいつも厳しく、判定を下すディレクターやプロデューサーは、簡単に「没」という言葉を口にしていました。
作家側の立場の私は、何とか採用に持って行きたいので、「没の理由は?」と食い下がったものです。
彼らの理由で多かったのは、「単なる知識、教科書問題!」という答えでした。
確かに、知識の羅列は問題として面白くありません。
だから、同じ知識を引き出すにしても、その中から共通点を探し出し、それを問題にすれば、興味のある問題となる、という話をクイズ作家にした事が有ります。
するともう少し、具体的に話して欲しいという声が有りました。
そこで歴史の問題を例に出して、話した事があります。
徳川幕府の将軍を初代から3代まで、名前を挙げる問題を考えてみたらどうか、と言ったのです。
初代が徳川家康、2代が秀忠、3代が家光、この辺は教科書で習った事なので、彼らの業績を問題として、名前を答えさせても、クイズ会議で採用される可能性は極めて低いのです。
それよりも、この3人の将軍に共通した何かを探し、それを問題化しては? と宿題を出したのです。
すると次の週に、良い問題がいくつか提出されました。
中でも1番印象に残ったのは、3代の将軍に仕えた大久保彦左衛門に注目した問題でした。
彦左衛門は、将軍にもズケズケと、思った事を進言する口うるさい「爺」として、物語に登場したキャラクターですが、問題は以下の通りです。
問・大久保彦左衛門が仕えた将軍は、家康、家光、残る1人は?
家康は初代将軍、家光は3代将軍、となれば正解は残る2代の秀忠しかありません。
勿論、歴史的な知識が無ければ正解は答えられませんが、これなら単なる「教科書問題」という否定的な判定は出せません。
問題にはこのような味付けが有ってこそ、「なるほどねえ」と視聴者の皆さんも納得してくれたわけです。
味付けが大事、いわば問題作家はシェフであり、板前でもあったのです。