午前0時を過ぎ、
「あ〜今日この日に誕生するんだなぁ」
と分娩台から見えるデジタル時計を眺めながらもうすぐ赤ちゃんに会える喜びでいっぱいでした。
痛みを感じなくなってから15分おき位に助産師さんが様子を見にきてくれていました。
旦那さんもバカンス明け初日の夜中の出来事で疲れていたのでたまに病室のベッドで横になってまた戻ってきたりしていました。
分娩室に自分1人になることもありましたがウトウトするくらい余裕がありました。
あのまま自然分娩でいけば今頃生まれてきていてもおかしくはなかったです。
出産後、義母の友人の助産師さんも「よく麻酔かけてくれたね〜、こういう場合は自然分娩になることが多いのよ。」と言っていたそうで、産院のスタッフもみんな「よく間に合ったね〜。」「相当な痛みだったでしょう。」と驚いていました。
助産師さんが戻って来る度に
「どう?赤ちゃんが動いているの感じる?」
「陣痛の感覚は少しある?」
と確認していました。
子宮口はすでに全開になっていましたが破水しなかったので助産師さんが人工破水させることに。
分娩台からその様子は見えないので毎回助産師さんの説明を聞きながら、事前に調べておいた出産パターンも本当に人それぞれなんだなぁと実感しました。
人口破水をさせた後、もうしばらく様子を見ることに。
しばらくすると何となく陣痛が来るのが分かる程度に麻酔が落ち着いてきたので
「じゃあそろそろ、いきんでみましょうね〜。」
と言われいよいよだな〜上手く赤ちゃんを出してあげられたらいいなぁとまたドキドキし始めました。
静かに始まった分娩。
自分がイメージしていた出産とずいぶんかけ離れていました。
フランスの無痛分娩では麻酔医の先生が始めに一定量の麻酔を注入してくれ、
妊婦さんがそれ以上に痛みを感じたら手元のボタンを使って自分で麻酔を足すことが出来るようになっています。
私は陣痛の感覚が分からなくなるといきむタイミングも分からなくなるのを避けるため一度もボタンを押すことはありませんでした。
助産師さんが静かに
「次の陣痛がきたらいきんでみましょう。」
と分娩をリードしてくれびっくりするほどリラックスしていました。
時々お腹の赤ちゃんの様子を手で確認してもらいながら、
「赤ちゃんも今ゆっくり降りてきてるからね〜。」
私も横腹にいつものようにぼこっとしているのが見えました。
「赤ちゃんも足でふんばってますよ〜。」
陣痛が来る度に深呼吸、いきんで、次の陣痛が来るのを待つ、を繰り返しました。
1時間程徐々に赤ちゃんが降りてきているのが分かりました。
「今回転しながら上手に赤ちゃんが降りてきているけど、頭が中々出てこないから先生を呼びますね〜。」
そして先生ともう1人のスタッフが加わり分娩室は私と旦那さんを含めて5人に。
頭を吸引させて最後は何だかよく分からないくらいすごい痛みで
「頑張って!もう少し!もう赤ちゃん出てきましたよ〜!」
「ほら〜!頑張ったねぇ〜!!」
とへその緒がまだ付いたままの娘を胸に抱きました。
妊娠が分かった時から早く9ヶ月後にワープしてくれればいいのに、と毎日赤ちゃんのことを想って楽しみにしていました。
大きな声で泣かず静かに誕生してきてくれました。
おっぱいを一生懸命探すその小さな顔と、自分と同じ爪の形をした娘の指をしばらく見つめていました。
午前4時、分娩室に入って5時間が経過していました。
お腹の中でしか感じられなかった赤ちゃんを今は顔を見て抱けるその喜びと、赤ちゃんを無事に出産するということが本当に奇跡なのだということが分かりました。
初めて胸に抱いた娘の重さや顔や髪の毛の感じは今でも鮮明に覚えています。
頑張ったね、生まれてきてくれて本当にどうもありがとう。
感謝の言葉しか見つかりません。
そして思い出す度に感動するのです。