私には師と呼べる人が居る。
私はその人の名前すら知らないのだが‥。
その人は、私が高校生の時バイトをしていたコンビニのダンボールを回収に来ていた人で、ボロボロのトラックに乗って、決して身なりもキレイではなかったが、その人はとても正しいことを言うしユーモアもあるしで、いつしか私はその人と会うのが楽しみになっていた。
そんなある日、その人が電話を貸してほしいと言うので、私は事務所の電話を貸したのだが、そこに店長が戻ってきて「ここはダンボール屋なんかが入っていい所じゃないんだ!」と一喝。
ホントに酷い話です‥。
その人も、「じゃあもうダンボールもいらねぇよ」と言って出て行ってしまい、二度と店に来ることはありませんでした。
それから数日後、店の外でたまたまその人に会えました。
そしてその人はあの時のことをこう言いました。
「電話も貸してくれないってことは、俺は信用されてなかったんだ。俺にとってダンボールはお金と同じ。信用されてない人からお金を貰うわけにはいかないんだ」と。
その言葉に私は深く感銘をうけました。
自分の仕事に誇りをもっていなければ、こんなことは言えないはずです。
私はその人から色々なことを教わったような気がします。
学校では教えてくれないようなこと、人間として何が正しいのかということを。
その後その人と会うことはありませんでした。
あれからもう25年。
あの人は今どうしているのか。
もしかしたら、もうこの世に居ないかも知れませんし、意外と近くに住んでいるのかも知れません。
出来ることなら、もう一度あの人に会って話しをしてみたい。
私が勝手に師と仰ぐあの人と‥。