生存競争に勝つために分化

進化により、同種の生物が異なる形質・能力を持つ2種以上の種族に分かれることを分化と言う。同じ類に属する各属・目の生物は、元々同種の生物から分化した者である。中には、同様の棲息環境に暮らしていながら全く異なる外見を持つ者も存在する。

武器・防具に相当する部位の特殊化
全生物は、常に他種族との生存競争に晒されている。特に魔族等の狂暴な生命体が多数存在する現状では生存の為、激戦を勝ち抜くことが不可欠。なので、諸生物の分化も戦闘に重きを置いた形にならざるを得ない。具体的に見ると、まず武器として牙・爪等攻撃用器官を発達させ戦闘能力を増強して捕食者に対抗する傾向が強い。更に防具として厚い毛皮・鱗・甲羅等を発達させる例も数多い。これら戦闘用の器官・形質の異常な発達が、結果として類内に多彩な属・目のバリエーションを生み出しているのだ。全生物中で一、二を争う多彩な分化を遂げているスライム類の状況を例示した。

防衛強化が引き起こしたスライム類の分化
スライムの体の構造
スライム類の体内の殆どは水だ。体表を構成する不透膜によって体型を保つが、攻撃に対して非常に弱い。栄養源としての価値は低いので積極的に捕食されることは少ないが、生態学的な地位が低く常に脅威に晒されている。基本種のスライムは、数の多さによって絶滅を免れている。

防衛手段の種類とスライム
1、捕食の対象にならない様にする
体内に毒性の高い物質を取り込み、警戒色を纏い相手に捕食を思い留まらせる。更に不透膜の一部を退化させ、体型を崩す代わりに毒を攻撃手段として使用可能にした。(バブルスライム)

2、敵を威圧し撃退する力を持つ
弱い生物が多数集まり群体を形成して防衛することは多いが、スライムの群体の密度が極限まで達した結果、接触しあっていた不透膜が消滅し、群体全部が巨大な1個体に変化した。(キングスライム)

3、硬い物質を利用・摂取して身を守る
海岸に分布しているスライム類が、自己防衛の為、貝殻を利用する習性を発達させた。ヤドカリと異なり、体が大きくならないので周期的に貝殻を更新する必要は無い。(スライムつむり)
また、体表の不透膜に特殊な金属を取り込み、硬度と強靭さを兼ね備える防護壁を形成した種族も確認されている。金属性の表皮になり移動速度も非常に向上している。(メタルスライム、はぐれメタル)

自然環境に適応して変化
異なる種なのに非常に能力が似ている種
同一地域に生活している限りにおいて、同じ食性・行動をする生物の個体数には限界がある。数が増え過ぎることを避ける為、新たな能力を発達させて生態学的に異なる位置の別種に分化することを適応放散という。これにより、始めは棲む者の無かった環境に生物の進出を可能にするのだ。魚類が陸上に進出して両生類に進化し、やがて鳥類となって空中にも棲息圏を広げたのも、適応放散の一例だ。

適応放散はどんな種にも起こりうるので、異なる種族がほぼ同時に同様の環境に進出・適応することも多い。この様な場合には、同様の行動に適した形質・能力が発達する為、起源が異なるのに外見は非常に似通った姿を取ることも起こりうる。同一地域であれば当然激しい生存競争が起こるが、離れた地域であれば等しく繁栄することも十分可能。

獣類飛翼目と鳥類鳥獣目の類似
巨獣目から飛翼目へ
キラーパンサーが前肢の退化、飛行用皮膜の発達によりキャットフライに、そして鳥類に近づく。空中生活への適応は、既に飛翼目で完成に近づいている。いずれ鳥に劣らぬ飛行能力を持つ者も出現するだろう。空を飛ぶことへの適応の拡大の例。

鳥目から鳥獣目へ
ヘルコンドルが翼の退化、前肢の発達、頭部の巨大化により暴れうしどりに、そして獣類に近づく。鳥獣目が繁栄を続ければ、地上生活への適応は更に促進される。最終的には翼・嘴等を持たぬ種に進化する。陸上生活への適応の拡大の例。

キャットフライと暴れうしどりは、どちらも鳥と獣の中間的な位置を占めている。前者は獣類が地上から空中に適応放散する過程で生まれた種であり、後者は鳥類が空中から地上へ適応する途中の姿だ。放散の方向は正反対だが、両者の適応放散が丁度交錯する位置の為機能的に酷似している。

生態的地位の空白を埋める代置種の登場
同一地域に暮らす各種の生物は、食物連鎖によって上下の階級を形成している。 絶滅等何らかの原因によって階級に空位が生まれた場合、競争相手のいない生活空間が生じることになり、他の階級にいる生物は適応放散によってこの空白に進出しようとする。だがあまりにも掛け離れた地位にいる生物は適応に手間が掛かり過ぎる為、実際には空白になっている地位の直ぐ上、或いは下の階級にいる生物から新種が生み出される場合が多い。 生物の自然的進化には、環境変化への適応・生存競争・ 適応放散等、様々な要因が複雑に絡まりあって影響を及ぼしている。更に進化の系統を異にする魔界生物の侵入により、現在の世界は嘗てない程急速な変化を経験しつつある。不確定要素が多く、今後の生物進化に関して正確な予測は困難だ。

野牛のいないエリアで生まれた暴れうしどり
競争相手の少ない空中に棲む鳥類が、態々地上に再適応するメリットは少ない。 暴れうしどりは本来なら野牛等の草食獣が占める地位に空白が生じた際、下位に位置していた鳥類が適応放散によって分化し、新たな環境に適応した姿である。上位からの適応放散はこの場合成功しなかった様だ。赤矢印は適応放散しにくく青矢印は適応放散しやすい。