トンネルの先で 呼吸が変わった
この日 僕はいつものように、
東京の街を歩いていました。
ビルのガラスに反射する光。
止まることのない人の流れ。
信号が変わる度に 機械的に動き出す足音。
いかにも “都会” という空気の中で、
特に目的もなく歩いていたのですが…………。
ある場所で ふと足が止まりました。
視線の先にあったのは、
少し古びた“石のトンネル”でした。
周囲はコンクリートとガラスで 出来た
景色なのに そこだけがまるで時間から
取り残されたように 静かに存在していました。
入口は暗く 奥が見えません。
ほんの少しだけ 躊躇いました。
ですが同時に「この先には何かある」という、
根拠のない確信のようなものもありました。
気づけば 自分は そのトンネルの中へと足を
踏み入れていました。一歩 また一歩。
足音が 少しだけ反響します。
外の喧騒が ゆっくりと遠ざかっていきます。
空気が変わるのを感じました。少し、
ひんやりとして 湿度を含んだ 重みのある空気。



僕は思わず 足を止めました。
そこは さっきまで歩いていた、
東京とは 全く違う世界でした。
まず 空気が違います。ほんのりと温かく、
そして湿っている。肌に纏わり付くような感覚。
呼吸をすると 土と植物の匂いが ゆっくりと、
体の中に入ってきます。視界に広がるのは、
背の高い植物たち。見上げるほど大きな葉。
見たことのない形の実。複雑に絡み合う緑の層。
光は木々の隙間から差し込み、
地面にはまだらな影を落としていました。
それはまるで “熱帯の森” を切り取ったかの
ような景色でした。東京の中に こんな場所が
あるとは思っていませんでした。
足元に目を向けると、
地面の質感も変わっています。
さっきまでの硬いアスファルトではなく、
どこか柔らかく 自然に近い感触。靴越しに、
伝わるその違いが ここがもう “別の場所”、
であることを はっきりと教えてくれました。
歩き出してみると 自分の動きが、
変わっていることに気付きました。




いつもより 遅い。
急ぐ必要が無いと分かった瞬間、
自然と歩くスピードが落ちていました。
視線も 変わります。前だけを見るのではなく、
上を見たり 横を見たり 何かを探すように 周囲を
見渡していました。気付けば 自分は 完全に、
“探検家” の思考になっていました。
「この先には何があるのか」
「この植物は何なのか」
「ここはどこまで続いているのか」
そんなことを 本気で考えながら歩いていました。
もちろん 危険がある訳ではありません。
遭難することもありません。
それでも “知らない場所にいる” 、
という 感覚だけで こんなにも心は、
動くのかと 少し驚きました。




普段の生活では ほとんどのことが予測できます。
どこに何があるか。次に何をするか。
どれくらい時間がかかるか。ですが、
ここでは その “予測”が 少しだけ外れます。
それだけで 世界はこんなにも、
新鮮に見えるのだと 改めて気付かされました。
少し立ち止まり 深く息を吸いました。
肺に入ってくる空気が いつもより重く、
そして 優しい。呼吸をするだけで 体の中の
何かが整っていくような感覚がありました。
都会の中で こんな時間が流れている場所がある。
それを知れただけでも この日は、
十分価値のある一日でした。
再びトンネルへ戻るとき、
少しだけ 名残惜しさがありました。
そして 元の街へと戻ります。




同じ東京。同じはずの景色。
ですが どこか違って見えました。
ビルも 人の流れも さっきまでと、
何も変わっていないのに…………。
自分の “見方” だけが 少しだけ、
変わっていたのだと思います。
東京は 全を見尽くしたようでいて、
まだまだ知らない場所が残っている街でした。
ほんの少し足を止めて、
ほんの少しだけ 寄り道をするだけで、
こうして新しい世界に出会える。
そう思えた この日 また一つ、
好きな場所が増えました。
🌴 また一つ、好きな場所が増えました 🌿


という事で 今回はここまでです。
次回の記事更新日は 4月24日 (金) となります。
皆さん 素敵な週末をお過ごし下さいね ♪
最後までご覧頂き ありがとうございました!






































