あまり情報がないのでメモ程度に書いておきます。
スペインのメーカーDSpatialからRealityというプラグインが発売されています。Realityにはいくつかランクがあって、機能もりだくさんのReality Builder、サラウンド上級者向けのReality Studio、7.1chサラウンドならこれで十分なReality ONE、バイノーラル向けのReality VR、以上4つ。
いちばんランクが下のReality VRでも価格が495ユーロとお高いですが、たまにセールをやっており2022年8月4日現在は一部のショップで49ドルで販売されています。定期的にセールをやっているようなので、興味のある方はチェックしてみると良いかもしれません。
ただし、Pro Tools専用(macのみ)です。
Apple SiliconはRosettaでのみ対応。
他のDAWでは一切使えないのでご注意ください。
このプラグインはメーカーの公式ページを見てもほとんど情報がなくて一見さんお断りな空気があるんですよね。「こんなことができます」という情報はたくさんあるのですが、「どうやって作業するのか」的な情報がまったくないです。マニュアルも体験版も公開していないので、どうしても知りたかったら一か八か買うしかないという(笑)
というわけで買ってみました。
現在の注意点として、Apple SiliconにはNative対応していませんし、対応するとも言っていません。なので将来どうなるかは不明です。ただ、Rosettaでは動作しますので使えないということはありません。僕の所持するM1でも動作しています。
基本的なこと
Reality VRには以下のプラグインが同梱されています。
view 1 (mono)
view 2 (mono)
input (mono)
LFE out (mono)
2D Stereo Mix (stereo)
3D Stereo Mix (stereo)
Binaural Mix (stereo)
Realityでは入力音声はモノラルしか扱えません。
3D Stereo というのはよくわかりません。3D Video用とかかな?
モノラルAUXを1つ作成し、そこにDSpatial view1、DSpatial view2を順番に挿入します。AUXの出力先は"Dummy Bus"を作成して設定します。Dummy Busは遅延補正のために仮に設定するバスのことで、実際に音は出さないのでモノラルバスであれば何でも良いです。
信号の流れとしてはこんな感じ。
オーディオ → DSpatial inputプラグイン → Dummy Bus(行き止まり)
↓
(AUX-入力なし) DSpatial view1 → DSpatial view2 → Dummy Bus(行き止まり)
↓
(AUX-入力なし) DSpatial Binaural Mix → Main Out
プラグイン同士で独自にオーディオをやりとりするみたいで、ルーティングが独特です。まあ細かいことは購入したらマニュアルを読んでいただくとして、ざっくりこんな感じで動作します。
操作
空間のリバーブ設定はDSpatial view2で行います。プラグイン画面下部の"Setting"からプリセットを選ぶことができます。
オートメーション関係はDSpatial view1で確認できますが、オーディオ個別の操作はDSpatial input経由で操作可能です。
気になった点
Space Sizeという項目で空間の広さを設定できるのですが、最低が1倍で、そこから2倍、3倍みたいな書き方なので直感的に広さを理解しにくい。1倍ってどれくらいの広さなんだ…。まあダミーヘッドの画像から想像しろってことなのかな?
バイノーラルでダミーヘッドに音源を近づけるとステレオのセンターを定義しにくい。例えば『右から音が近寄ってきて目の前(センター)までやってくる』というオートメーションをやりたい場合、時計でいうと3時から1時くらいまではなめらかに実感できるけど、そこから12時まで一気に飛ぶ感じがする。目の前で繊細な動きを見せたい場合は難しいかも。音をダミーヘッドから遠く離せはあまり気にならなくなる。
総評
49ドルであればVRの勉強のために買っても良いかもしれない。もしくは本格的にVRドラマを制作する人。ルーティングが独特なので音楽制作の中で「あ、試しにReality使ってみよう」と考えるのは難しいかもしれない。もちろん最初からRealityを使うことを前提にテンプレートを組んでおくなら問題ないと思う。
ステレオが扱えないのがやや不便(モノラル2本使えばステレオにできるが)。
音を背後に回り込ませたりできるのは便利。近接効果をコントロールできるのも良い。
MIR PRO 3Dとのざっくりとした比較
音楽制作を考えるならMIR PRO 3Dの方がはるかに便利だと思う。ステレオ素材を扱えるし、ルーティングも特別工夫する必要なくトラックにインサートして使える。ただ、音を背後に回り込ませるとか、高低差を表現したいという特殊な用途には難しいかも。そもそもMIR PRO 3Dで音を背後に置けるのはROOMPACK 2 STUDIOS & STAGESだけじゃないかな?全部のルームパックを試したわけではありませんが。