VIENNAが発売している簡易オーケストラ音源にVienna Special Edition(VSE)というものが存在します。初出は2008年?だいたい今から10年前くらいです。現在はSynchron化も進んでおり、今でも色褪せない音源と言えるかも知れません。
とは言いつつ、どことなく古くさいという印象を持っていたことも事実です。しかし改めて使ってみると「いや?結構使えるかも?」と思うようになりました。
SPITFIRE AUDIOもそうですが、OrchestraToolsなど、最近のオーケストラ音源はホールのアンビエンスまで含んだ大容量音源が多くなっています。そのような音源は、響はとても美しいのですがダイナミクスを激しく動かすような楽曲には不向きでもあります。
どういうことかというと、通常はボリュームのオートメーションは楽器のみに影響します。しかしアンビエンスを含んだ音色の場合、楽器の音だけでなくアンビエンスに対してもオートメーションが働くことになり、激しいオートメーションを描いてしまうとホールの残響音が突然消失、または出現するという違和感が生まれます。
そこで個人的に再評価したのがVSEです。現在はVSEにもいくつか種類があるようですが、今回はSpecial Edition Volume 1、およびVolume 1 PLUSをとりあげます。フルオケの楽器が一揃い収録されているというライブラリです。
PLUSは追加奏法などが収録されており、これが無いと打ち込みがかなり物足りないものになると思います。
ダイナミクスのレイヤーは、ほぼ3段階が収録されています。VSEは廉価版という位置付けなので、そのへんが中抜きされています。
Synchron版は以前のVI版と比較して、素の状態で少しリバーブがかかっている感じがします。パッチのデフォルトでリバーブエフェクターがONになっていますが、OFFにしても少し残っているのがわかります。そのためボリュームのオートメーションを0にしてしまうと残響成分が突然消えてしまってものすごく違和感がでてしまいます。ブレスコントローラーを使う時は最小値の設定をすると良いかもしれません。
追記:よく見たら上記のリバーブとは別にSynchron IRが適用されていました。これのミックスを0%に設定すると完全にデッドな音色になります。ちなみにこのIRはエクスプレッションの手前にルーティングされています。そのため、エクスプレッションでボリュームのオートメーションを描くと上記の「アンビエンスを含んだ音源の問題点」と同様に、リバーブごと音量が変わってしまいます。なんとかIRをエクスプレッションの後ろにルーティングさせようと調べてみましたが、僕にはやり方がわかりませんでした。なにかご存知の方がいらっしゃいましたらコメント蘭で教えてください。
さて、VSE…というかVSL製品を使うメリットとデメリットを書いてみました。
メリット
・メモリを圧迫しない
・そのためロードが早い
・動作が軽い
・発音のタイミングが非常に早く、かつ他の楽器と揃っているためノートをずらして調整する手間がほとんどいらない(全くないとは言わない)
・Synchronプレーヤーがとても優秀
デメリット
・アンビエンスは完全にエフェクター頼りになる
・(VSEでは)複数のソロ奏者がいない
・ダイナミクスが3段階と、やや少ない
こうして見るとデメリットはあまり大きくないと感じます。もちろん気に入らない音色もありますが、打ち込みやすさという点では非常に優れています。特に赤字にした部分は本当に助かります。
デメリットのダイナミクスの少なさは、木管においてはあまり気になりません。元々そんなに音色がガラリと変わるような楽器でもないので、音がモタることなく、タイミング通りに鳴ってくれることが素晴らしい。
逆に金管にとってダイナミクスはかなり気になる部分です。個人的にはナシかなぁ。
とまあ音色の好みはありますが、使いやすさという点では総じて素晴らしいと思います。