SPITFIRE AUDIO BBC Symphony Orchestra(以下BBC)のストリングスの音色については良くも悪くもSPITFIREです。音色単体の美しさは非常に優れていますが、打ち込みに必要なアーティキュレーションが不足しているのも事実です。今回はそのあたりのことを書いてみます。
・音色について
Closeマイクの音だけを聞くとSymphonic Stringsと違いがわかりません。もしSymphonic Stringsを所持していてCloseマイクしか使わないというのであればBBCを購入するメリットは非常に少ないと言えます。
しかしBBCのメリットは多彩なマイクとのブレンドにあります。これらによってSymphonic Stringsには出せない深みや広がりを表現することができるため、単純にリバーブを追加するだけでは難しい様々な音色を作り出すことが可能になります。
・アーティキュレーションについて
非常にたくさんのアーティキュレーションが収録されていますが、コンテンポラリーではない普通の(劇伴的、ゲーム的な。または古典クラシック的な)音楽を制作するには足りていないと感じます。
BBCに限らずSPITFIRE AUDIO製品全般に言えるのですが、アタックの強い音色というのが存在しません。アタックの強さはスタッカートなどの音色を混ぜてごまかしているため、「ターン!」という、強いアタックから滑らかにつながるサスティンの音を出すことが不可能です。スタッカートで「タ」は出せるのですが、サスティンの音色がゆるめの「フワーン」とした音なので、混ぜて鳴らしても「タンアーン」にしかならないのです。「ン」が邪魔なんですよね。
とはいえ、実際に「ターン!」が出せる音源というのには他社製品を含めて出会ったことがありません。そのためKONTAKTで編集できるライブラリについてはサスティンの音色の弱いアタックの部分を削除してスタッカートと合成するなどして対応しています。
また、マルカートの音色も不満のひとつです。まあこれもBBCに限らず以前から思ってたのですが、非常に使いにくい音です。他のアーティキュレーションとの音量バランスも悪く、どういうときに使えばいいのか今の所わかりません。この音色がもっと使えるものだったら打ち込みの自由度もだいぶ上がると思うんですよね。もったいない。
そのかわりと言ってはなんですが、スピッカートとスタッカートがそれぞれ収録されているのはとても良いです。
・操作性
非常に使いやすく、メーカー独自のエンジンですがバグることもなく問題なく使えています。アーティキュレーションを個別に「ロードする/しない」を選べるほか、細かい操作についても悩まずに行うことができます。
ただ、これまでのSPITFIRE製品にあったUACCという概念は引き継がれたものの、CCの数値は自分で設定しなくてはならなくなりました(これまではメーカーが決めたデフォルトの数値が設定されていました)。そのかわりキースイッチはそれぞれきちんと設定されているので、メーカーのうっかりか何かかもしれません。