★★☆☆☆あらすじ
建築家のマティアス、精神科医のバルト、エンジニアのロベルト、セールスマンのウィレム、実業家のトムの5人は、それぞれ妻に内緒で新築マンションの最上階のロフトルームを共有し、情事にふける場所として使用していた。
ある朝、ロベルトが部屋に入ると、1人の女がベッドに手錠をかけられ血まみれになって死んでいた。
あわてて集まった5人は、それぞれのアリバイを確認しながら犯人を探し始めるのだが……。
感想」
本作『LOFT~完全なる嘘(トリック)』は、
ベルギー映画をリメイクしたオランダ映画という点で、割と珍しめの映画。
個人的には、「オランダ映画」「ベルギー映画」共にあまり馴染みがなく、どんなもんか妙な期待感があったんだけど、うーん。。。なんとも不思議な映画でした。
一人の男がビルから飛び降りる
(あるいは、突き落とされたようにも見える)という、何やら意味ありげなシーンから始まる本作。
そこから、男の飛び降りの理由を探るサスペンスが展開されると思いきや、舞台は一気に飛んで、本作のタイトルにもなっている
「ロフト(屋根裏部屋)」へ。
「ロフトに横たわる血まみれで全裸の女の死体」が印象的に提示されると同時に、本作の主役ともいうべき
5人の男たちが登場する。
この「ロフト」という場所は、5人の仲間内で共有されていた場所で、好きなときに使える「浮気のための秘密基地」。
(要は、共有のヤリ部屋やね。)ロフトに入るための鍵は5人だけしか持っていないし、特殊な鍵のため合鍵を作るのは不可能。
すなわち、
5人の中の誰かが女を殺したとしか考えられないというのが、本作のサスペンスの前提条件となる。
「実質の密室に残された女の死体」「真っ白で無機質な部屋の中央に、手錠で繋がれた死体」「死体を囲む男たち」という“画的”な雰囲気は『
SAW』を思わせ、
「5人それぞれが秘密を持ち、他の4人にすべてを話しているわけではない」「集まった5人が助け合いつつ、騙し合う」的な雰囲気は、『
ユージュアル・サスペクツ』を彷彿とさせる。
つまり、開始数分から受ける本作の印象は、
『SAW』+『ユージュアル・サスペクツ』という、どえらいもの。
こんなもん、
期待が高まらないわけがない。ただ、その印象は、どんどん悪い方へ悪い方へと転がりまして。
最終的には、
「何じゃそりゃ!」としか言いようがない着地を迎えるのが本作。
「予想もつかないオチ」と言えば確かにその通りなんだけど、後出しじゃんけんを繰り返すようなプロットをサスペンスなんて呼びたくないわけですよ!
しかも、物語内のあらゆる「動機」が、ほぼ色恋沙汰っていうのも、まったくテンションが上がらない。。。
想定してしまった「SAW+ユージュアル・サスペクツ」のせいで、
「ジグソー」や「カイザー・ソゼ」級の“純粋悪”キャラの登場すら予感していただけに、最終的に話全体が
“下世話”なものにしか思えなかった。
僕が勝手に「高いハードル」を設定してしまっただけなんで、この映画に対してこんなことを言うのも筋違いだとは思いつつも、
マジで心底がっかりだわ!!!決して「謎解き」としてのプロットに破綻があるわけではないので、
「見返してみると、初見では気がつかないような細かい伏線がいっぱいあるんだろうな~」とは思うものの、こんな下世話なオチならば、そもそも
「もう一度見よう!」なんて思わないわけで。
改めて思うのは、『SAW』や『ユージュアル・サスペクツ』なていう傑作サスペンスの「バランス感覚」がいかに素晴らしかったのかってことだったりするのでした。
(ついでに思うのは、「なんで、『SAW』シリーズは「2」以降あんなことになっちゃったんだろう?」ってことだったりもするんですけど、それはまた、別のお話。)というわけで、
物語冒頭の雰囲気だけが素晴らしい作品だった本作。
「みんなにオススメしたい作品なので、オチのネタバレはやめよう」なんて
まったく思わない作品だったので、どんな話だったのかをネタバレ全開で書いてしまうと、、、
まず、主役級の5人はそれぞれ以下のとおり、
・
ヴィンセント・・・建築家で「ロフト」の設計者。イケメン&マッチョ&社会的成功者で、とにかく女にモテまくり。妻との仲は悪くないが、とにかく浮気しまくり。野心もエグい。
・
クリス・・・精神科医。責任感が強く、マジメ。妻との仲は冷えきっている。市長の私設秘書
(といいつつ、実質は情婦)のアンに一目惚れしてしまったことで、妻との仲は最悪の状況に。
・
ルク・・・物静かで、なかなかのブサイク
(おばちゃんっぽい顔のおっさん)。ヴィンセントと行動を共にすることが多いが、超リア充であるヴィンセントとは正反対の性格。糖尿病を持病に持つ妻を献身的にサポートする「いい人」。
・
マルニクス・・・酒好き、女好きのお調子者。女は大好きだけど、全然モテない。お酒を飲むと調子に乗って「秘密のロフト」の存在をバラしかけたりするので信用もない。浮気願望が強い割に、奥さんに捨てられそうになると泣いてパニクってしまうような、小物感あふれるおっさん。
・
フィリップ・・・クリスの異父兄弟。かなりサディスティックな性格。市長の友達の娘と逆玉結婚しつつ、ドSな性癖(レ○プ願望)を満たすためにロフトを使う。実際、ロフトでレ○プまがいのことをしているため、残りの4人はちょっと迷惑している。父親から虐待されて育っており、身を挺して守り続けてきた妹への執着が強い。まともな異父に育てられ、立派な医者になった兄クリスへの複雑な思いも抱えている。
映画の冒頭では、上述の5人
(特にヴィンセント)を主役に、「死体を前に慌てる5人」「警察の尋問を受ける5人」、そして事件の1年前の「ロフトの共有を始めた日」という、時間も場所もバラバラのシーンが並行に語られる。
そして、5人の男たち、それぞれの妻たち。さらにクリスと肉体関係になるアン、ヴィンセントの遊び相手サラという2人の女が絡む複雑な事件が展開していく。
うーん。思い出してみても、前半の展開は明らかに面白そうだ。
とはいえ、その後の展開はダメダメなわけなんで、まぁ、あっさりと「その後の展開」→「オチ」を。
まず、何よりも先に
「ヴィンセントという男が、救いようのないろくでなし」という前提がありまして。
ベッドで死んでいた女を知らないフリをしていたけど、実はヴィンセントの愛人のサラだったというのが、第一のオチ。
死体がサラだとばれたら、当然自分が犯人だと思われるので、知らないフリをしていたわけだ。う~ん、
姑息!結局、死体がサラだとバレるも、サラを殺していないと主張するヴィンセント。
「じゃあ誰が殺したの?」「あ!ロフトの存在に気づいた妻たちの仕業だ!」と焦りまくりヴィンセントに対し、残る4人はやたらに冷静。
それもそのはず、実はサラの死因は「ヴィンセントに捨てられたが故の服毒自殺」で、残りの4人はその事実を知っているのだ。
じゃあ、
なぜ「手錠に繋がれて、血まみれ」なんていう状態だったのかだが、それは、
4人が結託して「サラの自殺」を「ヴィンセントによる殺人事件」に見せかけたためだ。
そうなると次の疑問は、
なぜ、4人は「ヴィンセントをはめよう」と思ったのかだが、その理由ってのが、アン(クリスの恋人)、マルニクスの妻、フィリップの妹という、各人にとっての
「大事な女」が全員、ヴィンセントにヤられちゃっていたから。しかも、このロフトで。
(フィリップの妹に至っては、処○まで頂かれちゃっています。しかも、このロフトで。)要するに、ヴィンセントっていう男は、
ヤレそうな女は誰であれヤッてしまうという、
頭の中がチ○コな男だったってことなのだ。
特にクリスに関しては、そもそものアンとの出会いがヴィンセントの差し金で、自分もアンもヴィンセントの野心に利用されていたことまで判明し、普段は冷静なクリスも激高。
怒りのままに、ヴィンセントを懲らしめる作戦を決行するのだった。
<ヴィンセントの愛人サラの生前の姿。なんかもう、、、超かわいい!>で、
(ちょっと順番は前後するんだけど)次に気になるのは「ヴィンセントの悪行が4人にバレた理由」だけど、
「実はルクの趣味が盗撮。ロフト内での全員の情事は、全てルクの隠しカメラで撮影されていた」から。
奥さんを大事にしていて、全然モテないルクが「ロフト共有」の話に乗った理由は、「盗撮」するためだったというわけなんですね。う~ん、
ダサい!というわけで、日頃の行いが最悪だったとはいえ、結託した4人にはめられてしまったヴィンセント。
冒頭で描かれていた「警察の尋問を受ける5人」は、犯人としての尋問を受けるヴィンセントと、証人としての尋問を受ける4人の姿だったというわけ。
4人の作戦どおり、見事にヴィンセントは逮捕され、物語は終わりを迎える、、、かに見えたけど、ここからもう一展開。
怒りが落ち着いて冷静さを取り戻したクリスが暴いた
本当の真相。
それは、
「サラを殺した犯人はルク」というもの。
ヴィンセントの愛人だったサラに本気で恋をして、でも全く相手にされなかったルク
(ヴィンセントにふられた直後という絶好のタイミングで相手にされないっていうのは、よっぽど勝ち目がないわけです。まあ、ルクはブサイクですからねぇ。。。)。
ヴィンセントに捨てられロフトにたたずむサラに、妻の糖尿病治療のために持ち歩いていた「インシュリン」を、致死量を超えて注射→殺害していたのだった。
真相がバレたことで追いつめられたルクは、クリスの制止を振り払い、自殺。
これが、映画のプロローグにあった「男の転落死」だったというわけだ。
そして、ここからもう一つ後味の悪い展開が。
実は、ルクがインシュリンを注射した時点でサラは絶命はしておらず、サラにトドメをさしたのは、死体の処理を担当した
フィリップが、演出のためにサラの手首を切ったときだったということが判明する。
ドS魂に火が着いてやり過ぎてしまった故の事故で、クリスはフィリップを責めるんだけど、
自分の半身とも言うべき最愛の妹が汚されたことを知り、心神喪失に近い状態での行動のせいで、フィリップが殺人者になってしまうっていうのは、なかなか悲劇的な話だ。
エピローグは、事件から1年後が舞台。
クリスとマルニクス夫婦で飲んでいるシーンを経て、一人帰途につくクリスが、アンと再会するシーンが描かれる。
(ちなみに、クリスは妻とは離婚したっぽい。)ヴィンセントはロフトだけを残して全財産を失い、フィリップは殺人容疑で裁判中という後日談が語られ、クリスとアンの間に”何か”が生まれそうな余韻を残して、映画は終わる。
そんなわけで、あらすじを書いていたら気持ちが乗ってきて、今日のブログも結局長文になってしまった。
映画を振り返って改めて思うのは、複雑な人間関係やプロットは整理されているし、次々と予想外のどんでん返しが展開されるお話であるのは間違いないということ。
だったら「最高!」となるはずなのに、そうならないのは、やっぱり事件を構成するあらゆる要素が「下世話」だからということに尽きるのでした。
ちなみに、ちょっと面白かったのが、前半からずっと
「ルクはゲイでヴィンセントが好き」とミスリードさせる描写があって、ルクがサラを殺したことに気がついたクリスまでが
「ヴィンセントに愛されるサラが羨ましかったのか!」なんてことを言っちゃうのはどうなんだろう。
「仲間」と言いつつ、ルクのこをそんな風に見てたんかい!
それともう一つ。
エピローグでは、クリスとアン、そしてマルニクス夫妻の比較的幸せそうな後日談が語られるわけだけど、あの状況でフィリップだけが裁判中で、クリスやマルニクスは
お咎めなしって。。。ベルギー、オランダの法律ってそんなもんなの??と思ってしまった。
というわけで、上質なサスペンス風ながら
「最終的に気になることが、どうでもいいような細かい点だった」というところからも、結局は
「わりとどうでもいい話だった」ってことなんでしょうね。
バックナンバー(映画_作品名順のもくじ)
本文でも触れましたが、やっぱコレだねー