Q. 髙山右近が “ 国外追放 ” される 1か月前に、豊前 ・ 小倉城にいた細川忠興に送った手紙の宛名が 「 羽 越中様 」 となっていて、
「 羽 」 は “ 羽柴 ” のことだそうですが、“ 羽柴忠興 ” と呼ばれて
いたのですか。
A. 豊臣秀吉の政権時代、有力な大名たちの 名字は 「 羽柴 」。
姓は 「 豊臣 」 でした。
秀吉が 政権を樹立する頃から 姻戚関係にあった者、さらに、秀吉に
服属した者にも、「 羽柴 」 の名字や 「 豊臣 」 の姓が与えられ、
名乗っていきました。
まさに、「 羽柴だらけ 」 「 豊臣だらけ 」 になっていきました。
「 羽柴 」 の名字を称した人は、５２家 ７４人にのぼっています。
● 「 姓 」 と 「 名字 」 は、明治時代になって 戸籍法 が定められ、
両者が 同一化されますが、江戸時代までは、その区別が 厳然として
ありました。
姓 ━━ 「 源平藤橘 」 （ げんぺいとうきつ ） と言われますが、
“ 源 ・ 平 ・ 藤原 ・ 橘 ” の 四姓 に加えて、
秀吉が権力を利用して、朝廷から与えられた
“ 豊臣 ” の 五姓 のみ。
名字 ━━ 支配した土地の名前や 屋号 等から 名乗っていった
もの。
我々のような庶民には、“ 名字帯刀 ” は許されませんでしたから、
名字はありませんでした。 名前だけです。
● 羽柴 丹後侍従 忠興 / 豊臣忠興 （ 細川忠興 ）
羽柴 備前中納言 秀家 / 豊臣秀家 （ 宇喜多秀家 ）
羽柴 松島侍従 氏郷 / 豊臣氏郷 （ 蒲生氏郷 ）
羽柴 加賀中納言 利家 / 豊臣利家 （ 前田利家 ）
羽柴 越中侍従 利勝 / 豊臣利勝 （ 前田利長 < 利勝 > ）
羽柴 豊後守 義統 / 豊臣義統 （ 大友義統 ）
・・・・・ という具合に、「 羽柴 」 名字に対応した姓は 「 豊臣 」 姓
でした。
● 羽柴 武蔵大納言 家康 （ 徳川家康 ）
羽柴 安芸中納言 輝元 （ 毛利輝元 ）
羽柴 越後中納言 景勝 （ 上杉景勝 ）
羽柴 江戸中納言 秀忠 （ 徳川秀忠 ）
羽柴 丹後守 高知 （ 京極高知 ）
羽柴 左衛門大夫 正則 （ 福島正則 ）
羽柴 陸奥守 成政 （ 佐々成政 ）
羽柴 備後中納言 隆景 （ 小早川 隆景 ）
羽柴 土佐守 元親 （ 長宗我部元親 ）
羽柴 薩摩宰相 義弘 （ 島津義弘 ）
羽柴 越前守 政宗 （ 伊達政宗 ）
・・・・・・・・・ 合計 ５２家 ７４人。
「 羽柴 」 名字 ・ 「 豊臣 」 姓 は、いうまでもなく、
いずれも 秀吉から 与えられたものでした。
※ 「 羽柴を名乗った人々 」 （ 黒田基樹 ・ 著 ）