【 「 伴天連追放令 」 は 誰に ? 】 | 高山右近研究室のブログ

高山右近研究室のブログ

・右近についての、Q&A 
・右近研究こぼれ話 など

監修 右近研究家・久保田典彦
http://takayama-ukon.sakura.ne.jp/

 

 

  「 博多湾の小島 ( 能古島 ) に向かう 髙山右近 」 柳 柊二 ・ 画

 

 

Q. 「 伴天連追放令 」 ということですから、この命令は 伴天連

( 宣教師 ) に対して 出されたものですよネ。

 

A. 「 伴天連追放令 」 と言うのは通称で、 「 定 」 ( さだめ ・ 五カ条 ) を、正式には、ポルトガル国を代表する 司令官の ドミンゴス ・

モンテイロ に手交されました。

 日本語で書かれたもので、関白 ・ 豊臣秀吉の朱印が捺 ( お ) された朱印状でした。

 

 現在、平戸市にある 「 松浦史料博物館 」 が所蔵されている

「 伴天連追放令 」 は、モンテイロに手交されたものと同文の写しが、

 司祭たちが集結した平戸の領主 ・ 松浦鎮信にも、手渡されたものだと思われます。

 平戸領主 ・ 松浦鎮信には、宣教師たちが、碇泊中の ポルトガルの定期船に乗って、日本を出国することを見届ける責任があったわけです。

 

 又、同文の布告を、博多の町の 高札場に掲げさせましたし、

 他の 日本の おもだった町や 主要な場所にも、高札として掲げさせました。

 

● この 難解な 日本語の 禁制の文書を、側近の日本人キリシタンに解釈してもらって、ポルトガル語に訳したと思われる フロイスの

逐語訳が、「 日本史 」 ( 第4巻 ・ 第16章 ) に記されています。

 

 

            天下の主 ( あるじ ) の定め

 

一、 日本は 神々の国なるにより、キリシタン国より 悪魔の教えを説くために 伴天連たちが渡来したことは、はなはだしい悪事である。

 

二、 これらの者 ( 伴天連たち ) は、日本の諸国 ・ 諸領に来たり、

その宗派の信徒を作り、神や仏の寺院を破壊するが、かかることは

日本において、いまだかつて見聞せざるところである。

 天下の主 ( あるじ ) が、人々に、国 ・ 町 ・ 村、および 俸禄を与えるのは、その時 限りのものである。

 彼らは、天下の法、ならびに 定めを 寸分も曲げることなく遵守

すべきである。

 しかるに 民衆が、かかる 寺社の破壊など 騒擾をなすは、これ、

処罰に値する。

 

三、 もし天下の君が、キリシタンの意向に従って、

伴天連たちが その高尚な知恵の法をもって振舞うのを善しとするならば、彼ら 伴天連らは、日本の法を破ることになる。

 しかして、それは はなはだ 不正なことであるから、

予は、伴天連が 日本に留まってはならぬ、と定める。

 よって、今日より二十日以内に、彼らは身辺を処理し、自国に帰る

べきである。

 もし この期間中に、彼らに対して 害を加える者があれば、罰せられるであろう。

 

四、 ポルトガル船が 商取引きに来るのは、それとは大いに異なる

ことゆえ、なんらの妨げなく、取引きを許される。

 

五、 今後、商人に限らず、インドから来る いかなる人々も、神や仏を

妨害せぬ限り、自由に日本に来ることができる。

 

           以上、告知する。

 

    天正十五年 第六月十九日

 

 

     「 十字架を かつぐ イエス ・ キリスト 」  柳 柊二 ・ 画