高望み? | Fuck and Shit

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朝起きて、顔をあらって、ご飯を食べて、仕事して、お風呂につかって、次の日のためにベッドで眠る。

そんな日常が、うれしかったり、さみしかったり、悲しかったり、退屈だったり、愛おしかったり。

横浜は今日は雨で、朝から、暖房を入れないと、手がかじかむほどに寒かった。


今日は朝から、友達と、近所にオープンした雑貨やに遊びに行ってきた。


今の季節、雑貨屋は、全面にクリスマスをアピールしているディスプレイを施し、テーブルセットにも、赤のランチョンマットの上に、スープ皿やワイングラスや、キラキラとしたクリスマスツリーが置かれていた。



あたしの趣味は、読書と料理なので、キッチン雑貨を見ると、ドキドキとテンションが上がる。



気がつくと、幸せなクリスマスを連想させるテーブルセットをじっと見つめている。



「ねぇ こういうの ホントいいよね。」


え?と振り返る友達に、テーブルセットを指をさしながら言う。


「くどいけど、いま妄想してたこと、言ってもいい?」


「うん。いいよ。どうぞ。」優しい彼女はそう答える。




「あのね、こういうね、ダイニングテーブルあるじゃん。その真んなかに、籐でできたバスケットをどーんとおいて、その中に、朝起きて、超簡単な、こういう丸いパンを、何個も焼くの。」


「うんうん」



「それでね、朝はプレートのご飯が簡単だから、スクランブルエッグと、ハムと、サラダみたいのを一枚の皿にどーんて乗っけて、それができた時点で、彼を起こすわけ。」


「はいはい」


「朝だよ~ って。そしたら、彼はコーヒーポットから、あ、そのコーヒーポットは、ケメックスのやつで、2人しかいないけど、彼は朝コーヒーを2杯とちょっと飲むから、6CUP用のやつなのね。」


「ふんふん」



「そんでね、朝のテレビつけながら、今日何時に帰ってくる予定?とか、何気ない会話をして、いってらっしゃいって彼を送り出すの。」


「うん」



「…終わり。」











「…いいね。」









「でしょ?」








「超、いいね。」






「でしょ!」








そんな会話を永遠にしながら、家に帰ってきてふと考える。




あたしは、特別なことを望んでいるわけではない。




何もクリスマスにインターコンチやランドマークタワーのスカイラウンジで、コースディナーを食べたいなんて思ってるわけではないし



夜景を見ながらのクルージングに連れて行ってほしいと思っているわけではないし





ディズニーランドのカウントダウンに連れて行ってほしいと思っているわけではないし





銀座や西麻布のオシャレなレストランに連れて行ってほしいと思っているわけではないし





誕生日に花束のプレゼントが欲しいと思っているわけではないし





好きだと毎日言ってほしいと思っているけではない。





それは、本当に、これっぽっちも、微塵も、ちっとも、思っていないのだ。





ただ、毎日が流れるように、大晦日にはそばをすすり、




お正月には玄関に鏡餅をかざって、初詣に行き、帰ってきておせち料理を食べ、




バレンタインには小さいチョコレートを送り、




クリスマスには小さいケーキを食べ、お家でご飯を食べながらワインを開けて、少しだけ高いチーズを食べ、




ひな祭りには小さいお雛様をかざり、




誕生日には、ただ、おめでとう、と言ってほしいだけなのだ。





腹立つほどに暑い熱帯夜にアイスクリームを食べたり、




さみ~と言いながら冬の海を見に行ったり、




大好きな人と、毎日を、ただ平穏に、笑って、生活していきたいだけなのだ。






それは高望みなんだろうか?





考えれば考えるほど、涙と吐物がこみ上げるほど幸せな生活のように思える。




顔もかっこいいとは言えず、センスもいいとは言えず、女にもだらしなく、口だけで行動が伴わない彼の、悪いところも全部ひっくるめて、それでも好きだと言っているあたしには、そんな生活は、高望みなのだろうか。




あたしと過ごせば楽しいよ と声を大にして言いたい。



笑わせてあげられるのに と声を大にして言いたい。



それすらもかなわない、あたしと彼の距離。




どう考えても、あたしとそういう生活を送りたいと思うほうが、高望みだと思うのに…






この片思いが実らないのは、そんなあたしの傲慢な性格が問題か?



むーんと考える夜の2時。冬の始まり。