父の入院から数日、



驚異の回復力で、



父はあっという間にICU→個室→大部屋へと移った。





個室にいる間、



忘れてしまった単語を、



少しずつ思い出すリハビリをした。







父が最初に思い出したのは、



二女のニックネームだった。







教員試験になかなか合格できず、



臨時採用で教員をしていた二女を、



父は一番心配していた。







他の家族の名前は、



こちらが言えば頷いて「知ってる知ってる」という感じだった。







カラフルなボールを使って、



色を思い出すリハビリなどもした。





このボールはその時使っていたもの。









電波系少女が普通のアラサーになるまでにあったできごと-DVC00101.jpg
 





















大部屋に移った日、



病棟も変わった。













面会用の大部屋に行くと、



そこに意外な人物がいた。





















「あれーーー?つっちー。

どしたの?誰か入院してんの?」








最近、忙しくて会っていなかったつっちーだった。











「おー!久々やな。

母ちゃんが手術してさ。」





「え!?おばさん、どしたん!?」





「腹にできもんできてさ。」





「できもんって・・・」





「手術で切ったからもう大丈夫なんだけど。」







そう話していると、







「あら、うっくんちゃん」







向こうから、つっちーのお母さんがゆっくりと歩いてきた。









「大変でしたねー!

知らずにお見舞いにも来ず、すみません。

今手術したって聞いて、驚いたんですけど、

顔色もよさそうで、安心しました。」







「そうなんよぉ~。もう、びっくりでぇ。

でも、おかげさまでもう元気よぉ~。

いつもヒロと仲良くしてくれてありがとう。」







「いえー!私がヒロくんに遊んでもらってばっかりでぇ~。

迷惑かけっぱなしですw」









つっちーは、ニヤニヤしながら、



おばさんとうっくんのやりとりを近くで聞いていた。







おばさんは、他のお見舞いに来ていた人と、



遠い席に移動した。









「おばさん、もう退院できそうなくらい元気やね。」





「あ?うん。もう退院する日も決まってて。」





「あ、そうなん?よかったねぇ。」





「お前そういや、もうすぐ卒業やな。」





「うん(・∀・)b」





「・・・なんかお前、毎日来そうやしw」









うっくんの就職先は、



つっちーのアパートの目と鼻の先で、



つっちーの仕事場は、もっと目と鼻の先だった。



ちょうど、つっちーのアパートとうっくんの就職先の中間地点に、



つっちーの勤務する車の修理工場がある感じなのだ。









「えへへ。そのつもりー!(笑)チョキ







「で?おじさんどう?」





「あ、知ってんだ。ひらめき電球





「うん。ひでから聞いた。

最近来んやん?つって。

したらそんな言ってたからさ。」






「うん!順調だよ。

退院も、そう遠くないかも!

今日大部屋に移ったんだ。



リハビリが必要だから、それ次第かなぁ。

体調はもう、ずいぶん良いみたいだから。」





「そっか。

ま、お互い家族は大事にしよーや。にひひ





「うん。だね!ひらめき電球





「卒業祝い、してやるけん。

今度、飲もうぜ」





「うん。連絡するね。音譜














まさか病院でつっちーに会うとは思っていなかった。







つっちーも大変だったんだなぁ・・・。





うっくんが泣いていた時、



つっちーも、もしかしたら泣いていたのかもしれない。











と思った。















それから数日、















お父さんは、右半身に、完全に麻痺が残っていたけれど、



片方を少し誰かに支えてもらうだけで、



もう片方の手でベッドの手すりにつかまって、



自力で立ち上がれるまでに回復していた。









入院した当初、先生から



「リハビリ次第で立ち上がることくらいなら、できるかもしれないけれど・・・」





と絶望的なことを言われていたけれど、



入院から2週間くらいで、すぐに立てるようになって、



家族みんなに笑顔が戻ってきていた。









そんな父のお見舞いから帰ったある日、



アパートのポストに、結婚式の招待状が届いていた。









女性側の名前を見る。









高校の時の親友で、陸上部の選手だった「るみ」だ。





















・・・え?











結婚相手の名字を見て驚いた。















そこにあるはず「月野」という名字ではなかった。















実は、



1年ほど前に、



るみと会った時、





「うっくん、実は・・・私、光と今つきあってるんだ。

・・・ずっと言いだせずにいたんだけど。。」










と聞いていた。









るみは、月野君とうっくんが別れる原因になった、



ユキ先輩の妹だったので、



それを聞いた時には、なんとも不思議な気分になっていたのだけれど、



るみが幸せそうだったから嬉しかった。

















なのに・・・











・・・どうして?











その2~3日後、



るみから電話があった。









話を聞いてみると、



これまた驚きな話だった。







月野君は、寮に住んでいて、



2人部屋だった。







るみは、一時期、



月野君とうまくいかなくなっていて、



月野君の同部屋だった月野君の同僚に相談をしている間に



なんとなく浮気をしてしまい、



子どもができてしまった。



浮気相手のことは、結婚するほど好きなのかよくわからないけれど、



授かった命は大事にしたいので、



月野君と別れて、その人と結婚することにした。











という内容だった。









この間会った、つっちーとつっちーのお母さんの顔や、



うっくんの家族や、



月野君の顔や、るみの顔が



次々に思い出された。







ガンと闘って、



退院できるまでに回復したおばさん、









あれだけ大泣きしたのに、



立つことが出来ただけで、



こんなにも笑顔になったうっくんファミリー









きっと結婚するだろうと思っていた二人の



意外な結末・・・











月野君・・・大丈夫かな?















当たり前だけれど、



今、生きてる人の数だけの人生があって、



「今」というこの瞬間も、



絶え間なく、様々な嬉しいことや悲しいことが



人の数だけ展開されている。









今のこの時がすべてではない。



今この時が絶望だと感じても、



明日には笑っているかもしれないな。





逆に言えば、





今日幸せの絶頂だと思っていたのに、



明日は不幸のどん底だと思うかもしれないのだけれど・・・。









明日のことは明日にならなきゃわからないなら、



今この瞬間を、



ただ、なるだけ笑って生きていたいなぁ・・・













るみの話を聞きながら、



頭の片隅で、そんなことを考えていた。