トン先輩の奇怪な行動は、
ずっと続いていたが、
だんだんそれを軽くあしらうのも慣れていた。
そんな数カ月が過ぎ、
うっくんは、2年生、先輩は3年生になった。
いつだったか・・・
たぶん、6月くらいだったと思う。
先輩がいつもの調子で、学校ですれ違い様に、
「お!小学生!!愛してるぞ!!」
いった。
もう、ほんっと
誰が聞いてるかわかんないから、やめてよっ。。![]()
「あー、ハイハイ」
「なんだなんだ??ノリ悪りぃーな」
「ノリで言うことじゃないでしょ。」
「ノリで言ってねーよ?本気本気っ!!
」
「もう!からかわないでくださいよっ」
「・・・お前さぁ、どうやったら俺のこと信じるわけ?
」
先輩から一瞬笑いが消えた。
ドキッ
先輩、・・・なんか・・・真剣モード・・・?
「ほらっ!俺を見てみろ!!どっからどーみても紳士だろっ。
何がいけなくて信じられないっ?さあ、俺の彼女になれっ」
「・・・・・・・・・」
「なにもかもうさんくさいんですけど・・・
」
「よし、じゃ、わかった!もうすぐな、甲子園の予選あるんだ。
そこで、俺がピンチになったときに、愛してるのサイン出したら信じろ!!」
「・・・おっしゃってる意味がわかんないんですけど・・・」
「ばーか、お前な?
試合中にさ、どうでもいい女のことなんか、考えられるわけがねーだろ?
ピンチの時に、お前のこと思い出してるっつーことなんだぞ?
すごいことなんだぞ?意味わかんねー?」
「んー・・・わかるようなわかんないような・・・」
「ま、いい!なっ!? とりあえず、試合を見ろ。」
「えっ・・・てか、普通に学校でしょ。私。」
「大丈夫!視聴覚室で見られるから。テレビ中継。
」
「じゃ、見れたら見ます。で、先輩はどこを守ってるんですか?」
「!!!
・・・はぁ~~~~~っ
・・・お前さぁ・・・
」
「はい?」
「おれ、ピッチャー!!!エーーース!!!」
「へぇ、そうなんですか」
「いやそこ、もっと”すごぉ~い♪”とか反応するとこやぞ![]()
だいたい、この俺様がエースって知らねーなんてありえん!」
「や、ほんとすみません。野球まったくわかんないんでw」
「お前としゃべると脱力するゎ・・・![]()
あーもうっ! ま、いいや!!
ピンチになった時、俺が胸んとこ掴んだら
俺の言うこと信じろ!!わかったか!!!」
・・・ってか、
ピンチこないときはどうするんだ。。。
(うん、そこはそっとしといてやろう
。)
う~~~ん・・・ほんとに先輩が何を考えているのかさっぱりわからん。
どうせ、
「俺テレビに出るんだぞ!お前たちのエースなんだから応援しろよ」
とか、
「少しの間学校で会えないけれど、テレビの中の俺に会えるからいいだろ」
とか、そんなことあっちでもこっちでも言ってまわってるんだろうけど・・・っ。
あー、やってらんない。![]()
ってかさ、
みんなにおんなじこといって、みんなが
「私へのサインだわ」
なんて思うってケースもあるわけで・・・
信じられるわけないじゃん。
そして、野球の試合当日。
おそらく、先輩から ”絶対テレビ観れるように仕向けろ!” と命令されたであろう、
先輩の幼馴染でうっくんと同じクラスのシゲくんが、
前日から先生にゴリ押しで交渉し、
2年生は全員、視聴覚室で試合を観戦できることになった。![]()
いよいよ試合が始まった。
あんなにどうでもいいと思ってたけど・・・
なんでこんなに心臓バクバクいってんだ??![]()
・・・てか・・・
先輩が投げてるの・・・初めてみたなぁ。
フォークボールがどうのとか、スライダーがどうのとか、
解説者が言ってる先輩の評価は、まったくわかんないけど、
でも・・・
スゴイ。。
解説者が言ってることで、意味がわかったのは、
対戦相手が優勝候補で、すごい強いチームだってこと。。
・・・だから先輩、 ”ピンチあり” が前提だったわけね・・・。
・・・いつもひょうひょうとしてるあの先輩が、
負けて悔しそうにするの・・・
なんか、見たくないかも。。。
知らない間に、手をぎゅーーーっと握って、
手に汗握るというのは、まさにこの時のうっくんの状況だろう。
先輩・・・がんばって。。。
負けちゃったら、これで部活終わりになっちゃうよ?
だから、がんばって・・・。
何度も心の中で言っていた。
お互い引かず、4回裏まで、0-0のままだった。
そして、5回の表
カキーーーーーーン
相手チームにホームランが出て、1点入れられた。
まだ、あと2人打者が残っている。
先輩がんばれ!!!(>_<)
次の選手がバッターボックスに立った。
それをまっすぐに見据えている先輩が、映し出される。
その時。
先輩が、胸のあたりをぎゅーーーーっと掴んで、
目を閉じた。
バクバクバクバクッ
これって、、あの約束??
まわりの女子の様子を見てみるが、
みんなそれぞれにペチャクチャしゃべっていて楽しそう・・・。
「トンさん、疲れたんかなぁ?」
と、トモちゃん集団たちはザワついていた。
んー、やっぱコレ、私にしか言ってないのかも・・・。
キューーーーーーーン![]()
先輩、がんばれ!応援してるよ。
離れてるけど、ちゃんと見てるよ。
だから、負けないで。(>_<)
・・・・・・・・・
結局、その時の1点が決勝点になり、負けてしまった。
試合は負けてしまったけれど、うっくんの中で、
先輩への気持ちが動きだした。
先輩の勝利かも♪

