

昔々のお話です…。両親を亡くして、悲しみにくれる小さなお姫さまがいました。そこに、旅の王子様が現れます。王子様はお姫さまを薔薇の香りで包みこむと、そっと涙をぬぐってくれたのでした。「その強さ、気高さをどうか失わないで」と王子様は言います。そして、薔薇の刻印のある指輪を渡して去っていきます。それはエンゲージリング? それはそうと、お姫さまは王子様に憧れるあまり、自分も王子様になる決意をしてしまったのでした。


天上ウテナは私立鳳学園に通う、男装をした女生徒。新学期早々、生徒指導の先生に叱られているが、飄々とかわしていて、まったく男装を止める気はなさそう。背も高く、スポーツ万能で、学校では女子にもてる。「なぜ学ランを着ているのか」と訊かれて、彼女は「王子様だよ」と答える。「守られるお姫さまより、ぼくは格好いい王子様になりたいんだ」。


ふと薔薇の香りにひかれて目をやると、鳥籠のような形をした温室があった。中で静かに薔薇の世話をしている女生徒がひとり…。ウテナは薔薇の香りに懐かしさを感じながら見ていると、男子生徒が現れ、薔薇の世話をしていた女生徒をなじりはじめた。そして頬を殴る。ウテナが「やり過ぎだ」と思っていると、生徒会長の桐生冬芽が現れて男子生徒を止めた。ウテナのそばに来た親友の若葉は、女生徒を叩いた男子は西園寺莢一、生徒会役員だという。若葉は西園寺のファンらしい。女生徒は姫宮アンシーという。



集っている生徒会役員。西園寺の「薔薇の花嫁」アンシーに対する扱いの酷さを冬芽を始めとする役員たちが注意している。しかし西園寺は、いまアンシーとエンゲージしているのは自分だから、自分の好きなようにアンシーを扱う、ラブラブなのだから放っておいてくれ、と耳をかさない。冬芽は、すぐに次の決闘がある…と去りゆく西園寺に言う。

ウテナと若葉が歩いていると、掲示板の前に人だかりが…若葉が西園寺に当てたラブ・レターが貼り出されていた。ウテナはそれを剥がして人混みを追い払うが、若葉は傷ついて泣いてしまう。西園寺のもとへ抗議に行くウテナ。しかし、西園寺は不要だから捨てたラブ・レターを誰かが貼り出しただけ、と反省の色もない。ウテナは西園寺に「決闘をしろ」と言う。すると西園寺は(ウテナの指輪に目を留め?)放課後、決闘広場へ来い、という。


お人好しの勇者様。森には掟があることを、果たしてあなたはご存知かしら? かしらかしら、ご存知かしら?


決闘広場の入口の鍵は、ウテナの指輪に水滴が跳ぶことで開く。石の螺旋階段を登ると、天空にさかさまの城が輝く決闘広場があった。待っていた西園寺は、あの城は幻…蜃気楼のようなものだ、という。薔薇の花嫁の衣装を身につけたアンシーは西園寺とウテナの胸に薔薇を付け、先に散らされたほうが負けだ、と告げる。「頑張ってくださいね」とウテナに声をかけたアンシーを、西園寺は乱暴に平手打ちにする。



西園寺はアンシーの胸のなかから「ディオスの剣」を取り出す。そして決闘が始まる。ただの竹刀しか持ってこなかったウテナは、真剣であるディオスの剣に竹刀を短く折られてしまい、絶体絶命。しかし「お姫さまを助ける王子様気取りなのか」という西園寺の言葉に、ウテナは果敢に西園寺に立ち向かい、西園寺の胸の薔薇を散らす。

変な目にあったなあ…と寮に戻ろうとしているウテナの前に、制服姿のアンシーが現れる。「わたしは薔薇の花嫁。今日からわたしは、あなたの花です」。


