【アニメ】少女革命ウテナ:1話「薔薇の花嫁」 感想 | つれづれマカロン

つれづれマカロン

46歳ひきこもりの
人生楽しみたい日々なのです

少女革命ウテナ L’Apocalypse:1 [DVD]/川上とも子,渕崎ゆり子
¥6,279
Amazon.co.jp


 2011年6月9日に声優の川上とも子さんが亡くなってしまわれました。ご冥福をお祈りします。何かわたしにお祈りの代わりになることができないか…と思って、DVDを持っている作品『少女革命ウテナ』のレビューを書いてみることにしました。時間がかかるかもしれませんが、おつき合い下さいね。

昔々のお話です…。両親を亡くして、悲しみにくれる小さなお姫さまがいました。そこに、旅の王子様が現れます。王子様はお姫さまを薔薇の香りで包みこむと、そっと涙をぬぐってくれたのでした。「その強さ、気高さをどうか失わないで」と王子様は言います。そして、薔薇の刻印のある指輪を渡して去っていきます。それはエンゲージリング? それはそうと、お姫さまは王子様に憧れるあまり、自分も王子様になる決意をしてしまったのでした。

 アバンタイトルです。これからもなんども語られる、『ウテナ』世界の原風景とも言える物語。「強さ、気高さ」はウテナの大事な心の要素です。そして、視聴者のほうにもそのメッセージは語りかけられてきます。それにしても、この物語を朗読(?)するこおろぎさとみさんの声は至高です…('-'*) 可愛らしく、お伽話らしく、少し皮肉っぽく。「でもいいの? ほんとにそれで」の口調はとても意地悪で素敵です。

天上ウテナは私立鳳学園に通う、男装をした女生徒。新学期早々、生徒指導の先生に叱られているが、飄々とかわしていて、まったく男装を止める気はなさそう。背も高く、スポーツ万能で、学校では女子にもてる。「なぜ学ランを着ているのか」と訊かれて、彼女は「王子様だよ」と答える。「守られるお姫さまより、ぼくは格好いい王子様になりたいんだ」。

 昔、わたしと同じくこのアニメのファンの彼氏と語ったことがあります。「ウテナがしているのは男装なの?」とわたしが訊くと、彼が「あれは…『男』のコスプレ?」と答えました。けっこうこの答えは核心を突いているのでは、と思います。男装、というわりに、完全に周りの男子生徒と同じ服、というわけではありませんし、靴はリボンの付いた可愛らしいものを履いていますし。ウテナは「王子様」になりたいのであって、「男性」になりたいわけではないのですよね…('-'*) そういえば、生徒指導の先生も「男子生徒の格好」ではなく「そのへんてこな格好」と言っていましたし。

ふと薔薇の香りにひかれて目をやると、鳥籠のような形をした温室があった。中で静かに薔薇の世話をしている女生徒がひとり…。ウテナは薔薇の香りに懐かしさを感じながら見ていると、男子生徒が現れ、薔薇の世話をしていた女生徒をなじりはじめた。そして頬を殴る。ウテナが「やり過ぎだ」と思っていると、生徒会長の桐生冬芽が現れて男子生徒を止めた。ウテナのそばに来た親友の若葉は、女生徒を叩いた男子は西園寺莢一、生徒会役員だという。若葉は西園寺のファンらしい。女生徒は姫宮アンシーという。

 鳥籠の温室は、アンシーを閉じ込める檻なのです…。閉じられた世界。そして、『ウテナ』初期のお約束のシーン、頬を叩かれるアンシーです('-'*) 何故か毎回、誰かに頬を叩かれていたような…。若葉はとても西園寺を好きなのですが、どうもわたしは…(^-^) この作品に初めてふれたころから、西園寺の良さはいま一つわからないです。「かわいい」と言えなくはないですけれどね。ばかで純情で。

集っている生徒会役員。西園寺の「薔薇の花嫁」アンシーに対する扱いの酷さを冬芽を始めとする役員たちが注意している。しかし西園寺は、いまアンシーとエンゲージしているのは自分だから、自分の好きなようにアンシーを扱う、ラブラブなのだから放っておいてくれ、と耳をかさない。冬芽は、すぐに次の決闘がある…と去りゆく西園寺に言う。

 思えば、青空生徒会室ってすごいアイデアですよね…いや、アイデアについて話し始めたら、このアニメは終わらないのですけれども。謎の多いこのアニメですが、幹がいつもストップウォッチで計っている何かの時間も謎の一つ。もっとも今はWikipediaを読めば、答えは書いてあるのです(^-^) (直前に発した言葉の秒数)決闘は常に「薔薇の花嫁」アンシーを奪い合う、という形になりますが、アンシーに心から惚れているのは西園寺だけかもしれません。(幹も好意を持っていた時期もありますが)

ウテナと若葉が歩いていると、掲示板の前に人だかりが…若葉が西園寺に当てたラブ・レターが貼り出されていた。ウテナはそれを剥がして人混みを追い払うが、若葉は傷ついて泣いてしまう。西園寺のもとへ抗議に行くウテナ。しかし、西園寺は不要だから捨てたラブ・レターを誰かが貼り出しただけ、と反省の色もない。ウテナは西園寺に「決闘をしろ」と言う。すると西園寺は(ウテナの指輪に目を留め?)放課後、決闘広場へ来い、という。

 女性同士の友情、は『ウテナ』の大きなテーマですが、最初の決闘も、ウテナの若葉への友情のために行われました。若葉はストーリーの本筋から外れた脇の親友役、と見せかけて、前半はストーリーの転機にけっこう重要な役割を果たしたりもします。西園寺さんは最低ですね('-'*) 少なくともこの段階では。ところで、ウテナが指輪「薔薇の刻印」を持っていることは、2年間も生徒会に知られていなかったことになります…。「世界の果て」は当然知っていた、ということになるのでしょうけれど。

お人好しの勇者様。森には掟があることを、果たしてあなたはご存知かしら? かしらかしら、ご存知かしら?

 影絵少女第1回です。今回はあまり深読みする余地もなく、顔見せといった感じです(^-^) でも可愛い! 『ウテナ』をよく知らないひとも、「かしらかしら」のフレーズはご存知なのではないかしら?

決闘広場の入口の鍵は、ウテナの指輪に水滴が跳ぶことで開く。石の螺旋階段を登ると、天空にさかさまの城が輝く決闘広場があった。待っていた西園寺は、あの城は幻…蜃気楼のようなものだ、という。薔薇の花嫁の衣装を身につけたアンシーは西園寺とウテナの胸に薔薇を付け、先に散らされたほうが負けだ、と告げる。「頑張ってくださいね」とウテナに声をかけたアンシーを、西園寺は乱暴に平手打ちにする。

 初めて『絶対運命黙示録』を聴いたときの彼氏の感想「合唱にエレキギター伴奏はアリなのか…」は今でも印象に残っています('-'*) たしかに、それまでに聴いたことのないジャンルの音楽でした。今ではぜんぜん違和感もありませんが。そして天空の城を見たときにも、「安っぽい映像…」と思って呆れたのですが、あれは安っぽくて良かったのですね('-'*) 安っぽい意味がちゃんとあったのです。最終回近くにそれに気づいたときには「おお」と思いました。

西園寺はアンシーの胸のなかから「ディオスの剣」を取り出す。そして決闘が始まる。ただの竹刀しか持ってこなかったウテナは、真剣であるディオスの剣に竹刀を短く折られてしまい、絶体絶命。しかし「お姫さまを助ける王子様気取りなのか」という西園寺の言葉に、ウテナは果敢に西園寺に立ち向かい、西園寺の胸の薔薇を散らす。

 この「ディオスの剣をアンシーから取り出すシーン」のバンクが、ちゃんと「西園寺編」「ウテナ編」「冬芽編」とつくられているのが細かいなあ、と…。というわけで「世界を革命する力を!」と最初に言ったのは西園寺さんでした。わたしはぜんぜん剣術には詳しくないのですが、『ウテナ』の殺陣はかなり良く出来ている、と聞いたことがあります。負けた西園寺に、今まで「西園寺様」と呼んでいたのに「ごきげんよう西園寺『先輩』」と微笑むアンシーの残酷さは何ともいえないものがあります。

変な目にあったなあ…と寮に戻ろうとしているウテナの前に、制服姿のアンシーが現れる。「わたしは薔薇の花嫁。今日からわたしは、あなたの花です」。

 こうして、ふたりの長い長い物語が始まります。友情の物語、と言いたいのですが、アンシーのほうがウテナに持っている感情が何なのかは、なかなか言い尽くせないものがあるので…('-'*)

 あらためて、川上とも子さんのウテナを聴いてみると、(たしか)幾原監督がコメントなさっていたようにほんとうにどこか「お人好し」な声ですね。格好良くて凛々しいのに、何だか優しい…。惜しい声優さんを亡くしてしまいました。


ペタしてね読者登録してね