自分で確かめる!! ~焼けた鉄を握る!編~ | ★織田信長の夢★ 鳴かぬなら 鳴ける世つくろう ほととぎす

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□■自分で確かめる!! ~焼けた鉄を握る!編~■□


1556年(弘治2年)       信長 23歳


『信長公記 首巻』に、信長が赤くなるまで熱した鉄の棒を握って運ぶことによって、犯罪を犯した男の不正を暴くという身体を張った凄まじいエピソードが載っている。

このような判断方法を「火起請(ひぎしょう)」と言い、神前または判者の前で赤く焼いた鉄片を握らせ、持てるか否かで事の真偽を判定する神判の一種である。

この時、信長は火傷しなかったのか心配になる。

また、権力を傘にして不正を働こうとする勢力は、自分の家臣筋の者であろうと、誰であろうと許さないという、確固たる正義感が垣間見れる。



①現代語訳

(信長が)火起請をお取りになった事について

尾張の国の海東郡大屋という里に、織田造酒丞(信房)の家来で甚平衛という庄屋がおり、隣村の一色という所には、左介という者がいた。
この両人は親しい間柄であった。

ある時、大屋の甚平衛は十二月中旬、年貢を納めに清洲へ行った留守に、一色村の左介は甚平衛の家へ夜盗に入った。
女房が目を覚まし、左介にしがみつき、刀の鞘を取り上げた。

このことを清洲へ申し上げ、双方が守護に言い分を申し立てた。
一色村の左介は、当時権勢のあった信長公の乳兄弟、池田勝三郎(恒興)の家来であった。

火起請をすることになって、山王社の神前に奉行衆が並び、原告・被告の双方から立ち会い人を出させた。
ここで天道に違わぬ恐ろしいことがあった。

というのは、左介は火起請(熱した鉄)を取り落としたのだが、その頃、池田勝三郎の家臣衆は権勢に驕っていたので、(証拠となる火起請の鉄を)奪い取って、成敗させないように企てていた。

ちょうどその時、上総介信長が鷹狩りの帰りに立ち寄って、その騒ぎを見て、「弓や槍、武具を持って大勢の人が集まっているのは何事か。」と言った。

双方の言い分を聞き、早くもこの有様を一つ一つ見ていると、信長の顔色が変わり、火起請を取った時の状況を聞き、「どれほどに鉄を焼いて、取らせたのか。その時のように鉄を焼いて、それを見せよ。」と言った。
鉄が赤くなるまでよく焼いて、「このようにして取らせました。」と言上した。

その時、信長は「私が火起請を無事に取ることができたら、左介を成敗するので、そのように心得よ。」と言いつけて、焼いた斧を手の上に受け、三歩歩いてそれを運び、棚に置き、「これを見たか」と言って、左介を成敗させた。

凄まじい有様であった。


②書き下し文

火起請御取り候事

一、尾張国海東郡大屋と云う里に、織田造酒丞家来甚兵衛と云ふ庄屋候らひし、ならび村一色と云う所に左介と云ふ者これあり。
両人別して知音の間なり。

或る時、大屋の甚兵衛、十二月中旬、御年貢勘定に清州へ罷り上り候。
留守に、一色村の左介、甚兵衛宿へ夜討ちに入り候。
女房おき合わせ、左介としがみ合ひ、刀のさやを取り上げ候。

此の事、清州へ申し上げ、双方、公方へ言上たり。
一色村の左介は、当権信長公の乳弟池田勝三郎被官なり。
火起請に成り候て、三王社のまへにて奉行衆公事相手双方より検使を出ださる。
爰に天道恐ろしき事あり。

子細は、左介火起請取損じ候へど、其の比、池田勝三郎衆、権威を募り候の間、奪ひ取り、成敗させまじき催にて候。
折節、上総介信長御鷹狩り野帰りに御立ち寄りなされ、御覧じ、何事に弓・鑓道具にて人多く候哉と、仰せられ、双方の様子きかせられ、早、此の有様、一々御覧候て、信長御機色かはり、火起請候趣きこしめされ、何程にかねをあかめて、とらせたるぞ、元の如く、かねを焼き候を御覧候はんと、仰せられ、かねよくあかめ申し候て、双方て、此の如くにしてとらせ申し候の申、言上候。

其の時、上総介殿御諚には、我々火起請とりすまし候はば、佐介を御成敗なさるべきの間、其の分、心得候一と御意候て、焼きたる横攵を御手の上に請けられ、三足御運び候て、棚に置かれ、是れを見申したるかと、上意候て、左介を誅戮させられ、すさましき様体なり。


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この話の舞台となった「山王社」は、現在も、「清州山王社日吉神社」として清州城の南に鎮座している。

清州山王社日吉神社HP  http://www.hiyoshikami.jp/jinjasyokai/gosaisin.html

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参考文献

・『信長公記 首巻』 太田牛一 著
・『現代語訳 信長公記』 太田牛一 著、中川太古 訳、中経出版、2013年


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