それは、一般的に必要な生きる能力を十分に身につけられていないために、大きな負担を抱えている。
簡単に一行で書いてしまったが、もう少し噛み砕くと以下のとおりである。
1) 不足の多い環境であったため、生きるために必要な知識や能力について母親から教育されていない
= 能力の不足
2) そのことを潜在的に認識しているため、無意識に不足や普通でないことを周りに悟られないように防御する
= 精神的負担
3) 養育されていない能力と、その不足を補おうとする力のバランスが悪く、過緊張となる
= 肉体的負担
よって、必要以上に体に力が入ったり、気持ちに力が入るため、生きることに多大なエネルギーを必要とする。
一つのことを行うために、おそらく通常の 3-5 以上の生命力が必要となり、非常に疲れやすくなる。

M 子さんの言葉が印象的だった。
台所で、キャベツを刻もうとして手が滑った。
手を怪我するところだったと、ホッとしたが、その時、たかがキャベツを切るのに、肩がコチコチに硬くなり、腕の付け根までたくさんの力が入っていたことに気がついたそうだ。
また、文字を丁寧に書く習慣があるそうだが、それにしても文字を書くときに肩に力が入るのが気になるとのこと。
そして、最近になり、もしかしたら普通 (何を基準に普通と定義しているかは定かではないが) は、こんなに肩の力を入れずに文字を書いたり、調理できたりするのではないかと。
M 子さんが通院を始めた時、主治医にあるテストを受けた。
目の前で、主治医が両手を肩の位置で広げ、その手のひらの上に M 子さんの手を置くよう指示した。
M 子さんは言われたとおり、主治医の手のひらの上に、自分の手のひらを下にして乗せた。
主治医は力を抜くよう指示した。
M 子さんは、言われたとおり力を抜いた、その時、M 子さんの手のひらから、主治医の手が外れた。
M 子さんはとっさに自分の手のひらを支えた。
主治医は言った。
「ほらー、力を抜いてって言ったでしょう?本当に力が抜けていたら、手は下にストンと落ちるんだよ」
M 子さんの両腕は、前習えの状態に保たれていた。
主治医の手のひらが外れた時、主治医は
「手を支えて」
など、一言も言っていない。
M 子さんが勝手に支えたのだ。
その勝手な思い込みの積み重ねに多大なエネルギーが必要となるのだ。
普通なら味合わなくても良い心労を、毎日積み重ねているうちに、体には万年力が入っている状態となる。
さらに養育環境に暴力があった際は、常に身構えるため、子供の頃からひどい肩凝りに悩まされることになる。
M 子さんは、自分が無意識に入れる力のおかげで、1日の終わりには疲れてぐったりしてしまい、心身ともに緊張 Max のため、眠りが浅く、翌朝も疲れたまま眼が覚める。
そのため、医師からは軽い筋弛緩剤の服用を勧められた。
薬を飲むと、確かに体が楽になり、夜は以前よりぐっすり眠れるようになった。
ただし、飲むのを忘れると、左胸に誰かに拳骨で押されたような圧痛を覚えるようになった。
したがって、カウンセリングの治療が進み、気持ちがずいぶん楽になった段階で、この薬をやめてみようと試みる。
まずは、毎食後の服用を、1 日 2 回、そして 1 回に。
そして、就寝前には半身浴で体を十分温めて、薬を飲まずに就寝。
体に力が入っていると感じたら、大きく肩を回し、首を回し、意識的に力を抜いてみる。
この繰り返しで、二ヶ月後には薬を飲まなくても体が慣れてきたそうだ。
体の力が抜けたことで、血管の緊張が緩和され、極度の冷え性が改善される。
腹部を押すと、いつも硬く緊張していたために激痛があったが、それも改善され、便通も良くなった。
体が緊張することにより、自律神経が正常に働かなくなり、様々な代謝異常が起きていた。
毒親育ちの子供は、緊張が慢性化しているケースが多く、全身症状に問題が多い。
体が思うように動かないこともあるであろう、しかし、不甲斐ないと思う必要はない。
人の何倍もたくさんの力と神経を使って生きているのだから。