いや、「良い」と言うのは、、語弊があるかもしれない。
ほとんど、誰に対しても 「NO」 と言わず、従順なのだ。
従順にはワケがあった。
B さんのお母さんは B さんに対し、絶対的な権力を振りかざして生きていた。
お母さんが右と言えば、右を向くことが至上命令である。
左を向こうものなら、
「このドアホー!恩知らず!」
と、罵倒され、叩きのめされるのだ。

それは、痛い思いをしたくなかったら、無条件でアタシの言うことを聞きなさいと言っているようなものだった。
B さんが従順なのは、人生の中で 「NO] と言う機会がなかったからである。
したがって B さんは、お母さんが弁護士になれと言ったら、その命令を全うするのだ。
B さんは、国家試験を受けられるよう、あらゆる難題をクリアし、果敢に挑戦をした。
毎日、毎日何時間も勉強をし、現役合格はならずとも、その後見事に合格を勝ち取ったのだ。
B さんが合格し、周囲は、よく健闘した B さんをほめたたえた。
当然、お母さんも喜んでいるはずだと思いきや、お母さんがうつ状態となってしまった。
お母さんの状態は、バランスを失って倒れそうなコマのようであった。
仕事も辞めてしまった。
B さんは、お母さんの不安を取り除こうと、お金は何とかなるから、慌てて働かず、じっくり仕事を探してもらえるように優しく言葉をかけた。
すると、お母さんは烈火のごとく爆発したのである。
まだろくな社会経験もないくせに、偉そうなこと言われる筋合いはない、今まで育ててやったのに、この恩知らず等々、おそらくお母さんはこの時、B さんの心がより砕け散るような言葉を選択したに違いない。
そして、いつもは食事の支度などしないのに、珍しく用意した夕食を、順番に B さんの頭にかけたのである。
ご飯、おかず、汁物、漬物、、最後にボトルの中の麦茶をドボドボと。
そして捨て台詞をはいて、いなくなってしまった。
頭から食事をかぶった B さんは、お母さんがグチャグチャにして、食べられなくなった夕食を片づけたのである。
この時 B さんが、このような醜態をさらす母親に対し、
「このくそったれ、ふざけるな、大バカ野郎!」
くらい思えたら良かったが、、
彼女は、ここで心を痛めるのである。
「お母さんが不幸なのは、私のせいだ。どうしたらお母さんは満足するのだろう」
B さんの合格は、 B さんの自立を暗示するものだった。
B さんの存在に甘え、好き放題に感情をぶつけてきたお母さんにとって、B さんが自立することは、依存の対象を失うことになる。
それは、心のバランスに大きく影響する大事件であった。
B さんの心の中では、お母さんが巨大化し、暗躍している。
しかし、成人を過ぎた子供に対し、現実世界でこのようなことができる母親は、化け物と言うしかない。
このすぐあと、お母さんは家出し、その後一緒に暮らすことはなくなったが、 B さんの心に巣食ったお母さんは、大事な場面で B さんを苦しめた。
それから数年後、B さんは良い意味で、女性として人生の大切な時期に立った。
今、巨大化したお母さんを、いかに退治しようかと勇気を振り絞っている最中である。
そろそろ化け物退治をして、自分の人生に悔いを残さないよう、前に進んでほしいと強く願うものである。