相棒がタバコを買いに行って
なかなか入ってこないもんだから・・
 

さては又どこかで
亀が甲羅をひっくり返したみたいに
 

仰向けになって、手足をバタバタさせて
助けを待っているんじゃないかしら・・・・?
 
 
もう起こしてくれるお隣のご主人は
逝っちゃったし・・・
 
 
お隣の奥さんとお嫁さんの力だけでは
起こせまい・・・?
 

ならば腰椎ベルトを着けたわたしの怪力
の出番だわ・・・
 

と・・・妄想が邪魔しながらも
おもむろに玄関を開けるのと同時に
相棒が帰ってきた・・・
 

「タバコ一つ買うのに地球の裏側まで
行ったのかと思ったわ・・・
エライい時間を喰ってるね・・・」
 

と言うと「お隣の奥さんに呼び止められて
チョットお店まで行ってきた・・・
 

先日の葬式のお礼と銀行が毎日来て
後始末でごった返しているというんや・・・
 

商売のことは旦那さん任せにしてあったので
借金もいくらあるのかそれさえ分からず
大変らしい・・・」と言う・・・
 

「奥さん一人で大変ねぇ・・
わたしと同じ子年のB型で
そそっかしいところもあるから・・
 

お葬式の時、参列者に頭を下げたら
前のめりにひっくり返って足首をねんざして
 
 
足首が腫れ上がって靴が履けなくなり
今もサンダル履きやったやろう・・・?」
 
 
と聞くと
 

「うらがなんでよその奥さんの
足首まで見んとあかんのや?
そこまでは気がつかなかった・・」と言う・・・
 
 

「あんたもわたしがコロッと先に逝ったら
お隣の奥さんと同じことになるかも知れないから
気をつけないとね・・・
 

借金はないけど大雑把には
娘や息子に漏らしてある部分もあるけど・・
 

家計管理を丸50年間やってこなかった人には
急に任せても無理だと思うし・・
 

今金庫にはいってるわたしの遺言状は
20年前に大手術を受ける前に書いた遺言状だから
預貯金の残高は多少変わっているかも知れないけど
 

大筋ではあんたがやることには変わりが無いわ・・・
手が空いたときに現状に合わせて書き直しておくわ・・・
 

しっかり者の長女と相談して
後は良きに計らってね・・・解散!」
 
 
じゃなかった・・・・・
まだ生きていた・・・
 

私の実家の亡き父は葬儀の時に
遺された家族のことを心配し・・・
 
 
呼ぶお坊さんの人数やお布施の額や
知らせる親戚の人の名簿、精進料理の内容、
自分の入る棺桶の大きさまでちゃんと記してあり・・
 

庄屋の娘の母が自分のような貧乏な公務員と
結婚を承諾してくれた喜びと感謝の念が一杯綴られ
 

5人の子ども一人一人の生まれたときから
成長する過程での喜びと
それぞれ結婚してくれた相手への感謝の言葉など・・・
 
 
自分が死ぬまでのことを記した感謝の気持ちが・・
ノート1冊に事細かに記され
 

私達は1週間ごとの供養に訪れる度に
亡き父のありがたさに感謝したものだった・・・
 

ああ~!
そういえば相棒には・・・
 

来てやった感がに先に立ち・・・
感謝したことは少なかったような気がする・・
 

ごめんねぇ・・相棒・・!
 
 
本音では二人の優しい子ども達や可愛い
6人の孫に恵まれ・・・・
 
 
忙しいながらも
それなりに家族の温かさを味わえて
幸せだったわ・・・
 

ありがとう・・・
だけど・・・まだ生きてるし・・・!
 
 
慌ただしく去って行かれたお隣のご主人・・・
お隣の遺された奥さんのことを思い出し・・・
 

身支度は早めに・・・と痛感した次第です!