人は旅人・・・
一定の所に留まれない習性を持ち
 
 
快適な地を求めて永遠に彷徨う
旅人・・・・
 

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相棒の先輩はかっては郊外に大きな
邸宅を所有し・・・
 
 
立派な松の木を何本も植えて
四季折々の風情を楽しんで暮らしておられた・・
 
 
ああいう広い静かな場所で
車や人の騒音に悩まされず
 
 
優雅にのびのびと暮らせる人は
ある意味とても幸せな人生と
言えるかもしれない・・・
 
 
住む環境で人は穏やかな人生を
選択できる・・・・
幸せな理想の環境だわ・・・
 
 
と当時のわたしはそう思っていた・・・
 
 
その方が誰にでも巡ってくる定年退職を迎えられ
すぐに勤められた第二の職場を定年になってから
生き方を転換されだした・・
 
 
70代を過ぎるとだだっ広いばかりの庭園の
庭木の手入れや草むしりが
 
 
老いと共に体力が追いつかなくなり・・・
冬場になると雪でも降れば門から通りまでの
雪かきも大変で車を出すのも一苦労・・・
 
 
それに郊外に住んでるばかりに
毎日の買い物や病院や銀行や郵便局へも
歩いては行けず・・・・・
 

車がないと一歩も身動きが取れない・・・
 
 
75歳を過ぎ・・車の運転を取りやめたときに
ついに郊外の大邸宅を売り払い・・・
 

駅の近くでデパートや銀行や病院へ
歩いて通える範囲内にマンションを購入して
 
 
これでもう雪かきや庭の手入れや
車での移動をしなくても済むし・・・
 
 
 
徒歩やタクシーを利用すれば
どこでも通える場所に移ったと
大喜びをしておられたのに・・・
 
 
その暮らしも10年弱で終了・・・
さらに迫り来る老いには勝てなかった・・・・
 
 
たった一人の息子さんを県外に出してしまわれて
現在親の世話をする人はいなかった・・
 
 

二人で最後まで寄り添って生きるつもりが
80歳を超えた老人の老老介護には限界がつきもの・・・
 
 
今まで生まれ育った土地の福井は
最後まで離れがたいものがあったのに・・・
 
 
とうとう・・・息子さんの住む県外の
息子さんの自宅から通える範囲の老人ホームに
ご夫婦で入居された・・・
 
 
ここでなら最後の身元引受人に
息子さんが成ってくれると安心して・・・
 
 
最後は・・・
 

たった一人の可愛い息子さんの手を取って・・・・
安らかに死ねる場所選び・・・
 
 
人の世の無情と儚さ・・・
栄枯衰退は自分達夫婦で幕を閉じる
仕組みになってるのかもしれない・・
 
 
そんな気がする今日この頃でございます・・