久々に泣いた・・
夢の中で声を押し殺して泣きじゃくっていた・・
 
目覚めてもまだその余韻が残っていて・・・
そのまま肩をふるわせて
思いっきり泣いてから飛び起きた・・

もう朝だった・・・

その夢は私が満一歳に成るか成らないかで
年子の妹が生まれたために
 
祖母が私を母から預かって・・
ご飯のオネバを母乳代わりに育ててくれた
祖母の夢だった・・・
 
生まれつき体の弱かった年子の妹につきっきりの母は
私を祖母に預け・・
 
6歳違いの姉を連れて
小学校や病院に近い実家へ帰っていた・・
 
まだ下の弟や妹が生まれてなかった頃・・・
 
父は仕事帰りに母の実家へ寄って帰ってきたし
私は何をするのも祖母と二人っきりだった・・
 
祖母は田畑仕事や村の人たちに頼まれると
着物の仕立て物をしたり・・
 
農作業で使う蓑(現代の雨合羽)を作ったり藤のツルで
魚釣り用に使う魚篭やわらで草履やわらじを作ったり
炭俵を編んだり・・などと
 
手先が器用で
決して人の悪口を口にしない祖母は
人当たりも良くて村内の人気者だった・・

40代で祖父を亡くし・・・
わずかな賃金を人からいただくと
自分はぼろを着ても我慢し・・・

節約して貯めて
私たちに欲しいものを買ってくれた・・

私はあかぎれだらけの祖母の手を痛々しく感じ
可哀想で一生懸命お手伝いをして・・・
 
絵本を買って貰うのが楽しみで・・
それを何度も繰り返し読んで・・
 
本のページの背表紙がボロボロになると
1枚ずつページが外れてくるので

祖母はそれを麻糸で縫い付けて直してくれた・・
今でもその絵本に書いてある文章や絵柄の色まで
しっかり覚えてる・・
 
祖母は私が熱が出て食べられないときも
ずっと側に居て膝枕をして寝かしてくれて・・
 
夜中中タオルで冷やし続け
おかゆを作り梅干しとらっきょのおかずで

スプーンで一口でも食べよと言い・・
このお椀にいっぱい食べられたら

お前の好きな本を買ってあげると
言うので・・

食べたくなくても新しい絵本が読見たさに
無理に食べて・・希望する絵本を買って貰った・・

絵本は読むだけではなくて・・
書いてある絵も色も全部自分でも書きたいと思って

新聞紙の広告の裏にクレヨンで絵を描き
その文字もしっかり写した・・

その頃の私が世の中で一番好きだったのは祖母だった・・
その祖母の夢を見た・・

実際には祖母は姉の結婚する日の3日前に亡くなった・・
一度も医者にかからずに・・
 
お盆に姉が連れて帰ってきた結婚相手に
頭を下げて姉のことをよろしくお願いしますと託し・・
結婚式の三日前に他界・・・・

姉は高校を出ると京都に働きに出ていて
社員寮に入っていても給料から食費や習い事費用や
寮費や親睦会費や保険料などの天引きが多くて

貯金どころか自分が食べていくのが精一杯の時
祖母は姉の婚礼ダンスを一揃い
自分の手内職で貯めたお金で買ってやった・・・・
 
親は結婚式の費用や電化製品や着物一揃いで・・
家具以上の金はかかってるし・・・
すごく助かってると思う・・・

姉も祖母には頭が上がらない・・・
祖母が母の悪口を言わないのと同様
母も祖母の悪口を一切言ったことがない・・
 
その孫が・・・毎回相棒をこき下ろしてるなんて
地獄で尻の100叩き刑が待ってるかも知れない・・
 
お尻の脂肪を蓄えて旅立たねば・・・赤むけだわ・・・
これ余談で~す!

その祖母が一度は死んでるはずなのに・・
夢の中では生きていて・・・

幼い私にこう言った・・・

「羽や・・時が来たので
私は今から遠いところへ行かなければならない・・

大勢で見送られたり引き戻されたりするのは
本意じゃない・・・
お前にだけは最後の別れをしておきたい・・

これからあの世へ向かうには
少しだけ普通じゃないことが起きても・・
決して驚いてはいけないよ・・

もう私は間もなくこの世を離れるだろう・・
 
お前には私の教えることは
しっかり教えたから大丈夫や・・

 
一人でもお前なら乗り切れると安心してる・・・・

これから私の息が大きく荒くなってきたら
区長さんに知らせてきてくれ・・

それがお前に送る
お別れの合図だから・・」と・・
夢の中の祖母は言った・・・

「私一人や・・
お父ちゃんもお母ちゃんも姉ちゃんも
誰一人いないこの家で・・・・

私一人で大事なおばあちゃんを見送るなんて
とても出来そうにない・・・

ちょっと待って・・・
無理よ私には・・

その話なかったことにして~・・
おばあちゃん死なないで~・・・

せめてお父ちゃんが夕方家に帰ってくるまで
生きていて~!」

と言ってる最中に・・・
急に息が大きく荒々しく変わったことに気づき

しゃくり上げて泣きながら・・
祖母に言われたとおりに・・
 
橋向かいの区長さん宅へ全速力で走り

事情を話して連れて帰ってきた時に・・
祖母は最後の大きな息を吸い込んだまま
目を閉じた・・・

いやだよ~!
おばあちゃん死んだらイヤ!
 
私一人では絶対生きていけないよ~
おばあちゃんと二人生きてきたのに
一人になったらどうしたらいいの~・・

最初は声をこらえてたのが
だんだん嗚咽に変わり・・
泣き続けた私・・

その夢の中の私の年齢は4.5歳頃だった・・

年が行くと記憶の中の私の年齢は
だんだん若返ってくるものらしい・・・

見送った親しい人との思い出は
現在も尚現実味を帯びて
悲しく寂しい昔の記憶を辿る・・・

還暦を超えると
記憶も昔に戻るのかしら・・
 
ならば・・その勢いで
若さと体力も一緒に戻してクダシャンセ・・・!