祖母が生きていた頃・・
私が小学校の低学年の頃だったと思う・・



お寺で御講があり・・・たぶん涅槃講だったと思う・・
講話のあと色とりどりの餅まきがあり



それを袋に入れて身につけるとマムシ除けになるとの
言い伝えがあり・・・



子供達は餅まきを楽しみに祖父母とともに
講話を聞きにお寺参りをした・・・



アッ・・そうそう・・
餅まきの前にお昼になると参列者全員にお斎という
精進料理が出された・・



御飯だけはみんなお弁当箱というか御講参り用の
木箱の持ち手が着いたお弁当箱があるので・・
それに入れて持っていく・・



お魚はないけど大根と里芋や油揚げやちくわを
半切りにした大煮しめ・・・



たたき牛蒡やなますやおひたしや和物
きゅうりと麸の辛子和え・・ぐらいだったかしら



その他にお漬物と呉汁が出た。



お漬物と呉汁はおかわり自由で当番の方が
お椀に呉汁がなくなると素早く何回も継ぎ足しに来られた・・



その時・・お年寄りたちは孫たちに・・・

「ここで出た食べ物はみんな持って帰って
おうちでいただくんだよ・・・



ここで食べてもいいのは家から持ってきた御飯に
お漬物と呉汁だけ。



それで食べてこれは食べずに家へ持って帰るごちそうだよ。」
と教えられた。



子供達は祖父母の言いつけを守りその通りにして
持って帰ったおかずは夕食に家族全員平等に分けて
いただいた・・・



お寺で出された僅かなおかずを家族全員に分けて

いただいたあの時の美味しさは忘れられない・・・



お寺の御講で教えていただいたことは
今でも頭に残っている・・・





あれから約60年後・・・



妹が地元の婦人部の集まりのときお昼に
仕出し屋さんのお弁当とお漬物と味噌汁が出されたそう・・



妹は何気なしに自宅の法事のお弁当のような感じで
全て平らげて空っぽになったプラスチック容器を



「これはどこに捨てればいいでしょうか・・・?」
と主催者の方に聞いたそう・・



すると主催者の方はびっくりして
「後家さんは気楽でいいのう・・私らはこれは全部



持って帰ってうちで待ってるお父さんと二人で
分けて食べるんやで・・・



弁当箱は誰も捨てないから
それはあなたが自宅へ持って帰って自分で捨てて!」



と言われて一人だけ食べてしまった妹は
赤っ恥をかいたという・・・



妹は一昨年まで商売をしていて休めず

地元の行事にも参加できなかったという・・・



「この村ではまだそんな習慣が残っているんだわ」と。



私の住んでる地域では食中毒が出たら行けないということで
イベント会場で出たお昼弁当は




その場で食べて帰ることになっていて
持ち帰ることは禁止されてる。




実家のほうでは60年前からの・・・
いえ私の父の祖母の代からと言うと・・
明治生まれから続いてきた伝統・・・




この飽食の時代になった今も
村では受け継がれているのかと思ったら・・




尊敬の念とともに複雑な気持ちにもなる・・



食べ物を大事にすることや
少しのものを家族みんなでわかちあい食べる習慣は




核家族化した現在では日々薄れていくけれども
家族を思いやる気持ちだけは




これからも変わらないで

続いて行って欲しいと願っている・・・