父親がわが娘にかける愛情は、他の者に対するそれの

何倍もあり、到底はかり知れないものがある。

長女が生まれたとき、主人は産休を取り、

(上司に、お前お産するんかと笑われ)

乳児室に寝かせてあるわが子の足裏に、太いマジックで

名前を書き、「足バンドが付けてあるのに、あんた馬鹿か!」

と産婆さんに叱られ、「ウラ ばかや、ははは。お湯につけた

時、抜けて、間違えたらどうする」と言ったそう。

世話に来ていて、それを見てた母が

「間違っても損はせんで。その横に並べてあった子は

ふっくらしていて、もっと可愛かった。あはは」

と笑っていた。

その娘が、結婚したいと言い出して、相手の男性がうちへ

挨拶に来た時、主人は、おもしろくない。

朝からイライラしてた。

一通り娘と結婚させて下さい、という挨拶が済むと、やにわに

「この子は、自慢するわけじゃないが、なーんもせん。

なーんも出来ん。もらって後悔するぞ。断るんやったら

今のうちやぞ!」と相手にいい、娘には

「うちでなーんもせず、草一本もむしった事がないお前が

田んぼや畑のあるうちへ行って、つとまる筈がない。

今なら、お父さんが断ってやる。」と、とんでもない事を言い出す。

自分が言うだけの事を言って、後ろも向かず2階へ

上がってしまった主人。

それでも縁があって、結婚し、今ではたまに連れて来る

可愛い孫に目を細める毎日である。

わがまま娘を貰ってくれた優しい婿殿には、本当に感謝している。