俺は気力で今にも飛んでしまいそうな意識をなんとか保ち、
声の主の方を振り返った。
視線の先には、
鋭い目つきで俺を睨みつけてくる男がいた。
男は革靴に黒いジーンズを履き、白いYシャツを着ている。
シャツのボタンは下から二つほどしか閉められておらず、
引き締まった肉体が顕わになっている。
手には、
はっ!手には鎖鎌が握られている!!
右手に持った鎖鎌の刃には、
今ついたところだと言わんばかりの新鮮な血がついていた。
酸化も進んでいない赤々とした血だ。
見た瞬間にこれで俺は背中をやられたんだとわかった。
「くそっ、お前は何者なんだ?なぜ俺を狙う?」
俺が問うと、
「ケッ、今から死ぬってのにそんなこと気にするのか?
まあいい、教えてやろう。
オレ様の名前は早蕨(さわらび)。
お前を殺すために3035年からやってきた。」
男はそう言って俺に近づいた。
3035年からだとっ?!
「お前、組織の人間か?」
俺は距離を保つように後ろに下がりながら質問した。
「そうだ。
オレ様は椎本と同じ組織の人間だ。
くだらん人間を殺し、選ばれた民だけの理想の国家を作ることを目指している。」
男がまた一歩近づいた。
「選ばれた民だとっ?何だそれは?」
俺もすかさず距離をおく。
「選ばれた民ってのは、特殊な能力を身につけた人間のこと。
俺や椎本のようにな。
椎本が言うには、お前にも特殊な能力があるようだが、
どうせお前ら野蛮人の能力など大したことないだろう。
俺らの組織に2000年代の野蛮人はいらねぇ。
と言うわけだ。
目障りなんで消えてくれ。」
男はそう言うと鎖鎌を持ち上げた。
やばい、これは本当にやばい。
出血がひどいこの状態で攻撃されたら一巻の終わりだ。
俺は鎖鎌の間合いからでるため、男に背を向けて全力で逃げた。
鎖の長さが2mくらいだったので、
背を向けてでも距離をとるべきだと考えたからだ。
その時である。
グサリッ
俺の右尻に鎖鎌の刃がささり、そのまま肉をシュッと切り裂いた。
いっっっってーーーー!!!
くそっ。逃げ切れなかったか。
俺が振り向いて早蕨との距離を確認すると、確実に2m以上は離れていた。
どういうことだ?鎖鎌以外にも攻撃手段があるのか?
「フハハッ、不思議そうな顔をしているな。
どうしてオレ様の攻撃が当たったか気になるか?
教えてやろう、とくと見な」
早蕨が持っている鎖鎌を俺に向かってヒュンっと投げてきた。
この距離で投げても当たらなさそうなもんだが、
俺は念のため後ろに下がった。
だがその甲斐虚しく鎖鎌は俺を捉えた。
「うおぉーー!!」
体育館に俺の悲鳴がこだまする。
今度は刺激の強い左太ももをやられた。
「ヒャッヒャッヒャ、いい悲鳴だなぁ!
けどこれでわかったろう。
オレ様の能力はこの鎖の長さを自由に操れること。
お前がどれだけ離れようと無意味なんだよぉ」
くそっ、絶体絶命か。。