あぁ、もう駄目だ。
何とかこいつを倒して牛若丸たちに会いに行きたかったんだが・・・。
このナイフが刺さって俺の人生も終わりだな・・・。
俺は死の到来を実感した。
それにしても、一方的にやられたもんだ。
窮鼠なりに頑張ったつもりだが噛むことなんて夢のまた夢だった。
俺にもこいつみたいな能力があれば一矢報いることができただろうに。
悔しいぜ、こんなところで殺されるなんて。
俺は己の無力さを嘆いた。
その間にも横腹にささった鎖鎌は俺の肉をえぐっている。
そしてナイフは俺の左胸に接近する。
人は死ぬ間際、周りの動きがスローに見えると聞くが、
この時の俺はまさにそれだった。
ゆっくりとした時間の中で、
脳だけがいつも通りの速度で動いている。
おかげでナイフが左胸に到達するまでに
一連の思考を終え、死を覚悟することができた。
俺は死を受け入れようと目を閉じた。
・
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10秒
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20秒
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30秒
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・
・
それからどれくらいの時間が経ったかわからない。
俺が長く感じているだけで実際には1秒も経っていないのかもしれない。
だがナイフが刺さるのがあまりにも遅い。
俺は状況を確認しようと恐る恐る目を開いた。
すると、
そこには、
胸に鎌の刃が刺さり、膝をつき苦しんでいる早蕨がいた。
シャツがはだけていたために、胸に刃が直接刺さる様子が痛々しい。
白かったシャツは赤く染まり、そのままボトボトと血は地面へと滴り落ちる。
「キ、貴様ッ、一体何をしやがった?これが貴様の能力かッ?」
早蕨が何か話しているようだが、
ヤツがはっきりと喋れていないためか、俺の意識が薄れているせいか、
内容は全く理解できない。
ただ何となく俺に対して怒っているらしいことは表情から伺えた。
なぜこのような状況になっているのか?
俺にはそんなことどうでも良かった。
ただ目の前に転がってきた千載一遇のチャンスをものにしようと、
早蕨の膝元に落ちているナイフに手を伸ばしていた。
ここでこいつを殺せば何とかなる。
殺してやる。
殺してヤる。
俺は何かにとり憑かれたように殺意を抱いていた。
そしてナイフを拾うとその勢いで早蕨に向かってナイフを突きつけた。
「これでどうだーーー!!」
俺の持ったナイフがヤツの胸に迫る。
その時である!
早蕨は左手をポケットに入れ、
「チッ、仕方ねぇ。」
とポケットをガサゴソとまさぐった。
そして次の瞬間パッと姿を消した。
以前椎本が消えた時と同じように。
逃げられたのか?
残念ながら早蕨に止めをさすことはできなかった。
だが、
はっ、はははっ。やったぞ!俺はピンチを切り抜けたんだ!
俺は思わずガッツポーズをして喜んだ。
それにしても、派手にやらかしたな。
こんな様子誰かに見られたら面倒だ。
「とりあえず逃げるか。」
俺は最後の力を振り絞って這うようにして体育館をでた。