そのすぐ後、俺は、全身から流れ出た出血と受けた傷の痛みに
よって気を失ってしまった。
体育館から発せられた爆音を聞いた教師数人が、何事かと
思い、体育館へ直行したところ、入り口付近で満身創痍で
倒れている俺を発見し、病院へと搬送してくれたみたいだ。
今現在、体育館は使い物にならないので、急ピッチで修復作業が
行われているらしいが、以前の状態になるのはいつになることやら。
何でも、体育館を破壊したのは新手のテロ行為ではないのか、と
新聞やらテレビやらのマスコミがおもしろおかしく騒ぎ立てているらしい。
確かに、あれほどの惨劇を見れば、誰でもそう思ってしまうだろうが。
ともあれ、こういった、事の顛末を聞いたのは、事件が発生してから5日たった
今日の昼過ぎのことで、病室を抜け出したことへの説教も含めた
ここ数日の情勢を、母から知らされたのだった。
なぜ、5日のタイムラグがあったのかというと、至極妥当な帰結ではあるのだが、
意識が回復したのが今朝だったからだ。
担当の先生が言うには、死んでいてもおかしくない外傷だったらしく、
俺の生命力と身体のタフさに舌を巻いていた。
まぁ、この件については俺自身が最も驚いているのだから、
他人が信じられないのも、うなずける話ではある。
母に、それとなくさえちゃんやリョーマ達から何か連絡はなかったかと
尋ねてみたが、何の連絡もなかったようで、それぞれの両親が、
警察に捜索願を出すかどうか検討中らしい。
はっきりいって落胆の色は隠せなかったが、
今は無事でいてくれてることを祈る他ない。
一連の流れに思いっきり流されて、
こんなところで俺は入院する羽目になってしまったが、
ここ数日で起こった出来事、そして自身の身体の変化について
これから先、十二分に考察し、対策を練る必要性がありそうである。
思考に必要なピースも少しづつではあるが、集まってきているし。
きりきりと頭をねじでしめつけるような痛みも、今ではなくなっており、
あれはなんだったのか、本当に分からない。
そういえば、あの早蕨とかいう男との戦闘中に頭痛はピークを向かえ、
そして消失していったように思う。
加えて、奴を退けることとなったあの出来事と頭に響いてきた声…。
どうやらこのあたりは密接に関係しているとみて間違いないだろう。
だが、俺が手に入れたこの能力(能力と言い切れるほどはっきりとした
根拠はないのだけれど)を解明するには、まだ手がかりが少なすぎる。
3035年からやってきたあいつらは自分自身の能力については自覚している
ようだった。
もしかしたら、あいつらなら俺の能力について何か知っているかもしれない。
もし、知らなかったとしても、何か手がかりになりそうな情報は手に入れられる
確率が高い。
そこで、俺は、かねてより頭の中に浮かんでいたある考えについて、
再検証してみた。
これより、いい方策はなさそうだな…。
震える右手を、左の手でおさえ、唇をぎゅっと強く結んだ。
やるしかない。
その時、ガラガラと個室の扉が開く音がし、
「あー、お兄ちゃん起きてるじゃん!!」
と言いながら、しずかが入室してきたので、そこで一旦考えるのはやめに
した。
これから先、ああいった事態が起こることは必然のように思えるし、
だとすれば、今後のためにも今はしっかり休息し、怪我を治療しておく
のが一番である。
「あぁ、ちょうど今起きたところだよ」
牛若丸のこと、リョーマのこと、葵ちゃんやさえちゃんのこと…
そして未来からきたというあいつらのこと。
問題は山積みだが、今は、この束の間の休戦状態中に、療養しておこう。
俺は、そう感じながら、しずかが持ってきてくれたりんごに齧りついた。
―第1章 終幕―