「仲間だとっ!人の命を狙っておいてよくもそんなふざけたことが言えるな!」
俺は男の言動が理解できず思わず声を荒げた。
それに対して男はヤレヤレと言った目で俺を見下ろし、
落ち着いた様子でこう答えた。
「いやー、参りましたね。決して命を狙ったわけではないのですが。
そうとられてしまっても仕方ありませんね。
ただ、誤解しないでください。
私を含めた組織の人間はあなたを敵だとは思っていません。
あなたがそのつもりになればいつでも仲間としてお迎えいたします。
でも目下の所はあなたの様子を見ることとさせていただきましょう。
申し遅れましたが、わたくし椎本(しいがもと)と申します。
再び出会うことがあると思いますのでお見知り置きを。」
そう言うと椎本と名乗る男は姿を消した。
待ってくれ!と言う俺の叫びだけが静かな死空間に空しく響いた。
「やれやれ、不思議なことが続くもんだ。
さて、お次はこの状況で俺は何をすべきか――――」
その時である。
パリンッ!!!
ガラスが割れる音を数倍高くしたような音がした。
それも鼓膜が破れるほど大きな音だ。
その直後に眼前が急に明るくなって俺の意識はぶっとんだ。
俺が次に気づいた時、
俺は病室のベッドに横たわっていた。
個室で俺の周りには誰もいない。
俺は久々に落ち着いた環境に身を置いたことで、
ゆったりとこれまでのことを思い出すことができた。
牛若丸のこと、歪曲空間のこと、未来人のこと。
どれもがにわかには信じがたい存在である。
あれは現実なのか夢なのか。
全てが夢であってほしい。
俺は願った。
しかしそんな願いも虚しく、更なる謎が俺を襲った。
コンコン。
病室のドアをノックし、入ってくる人物が二人。
母さんと妹のしずかだった。
「あっ、ママ!お兄ちゃん起きてるよっ!」
「あら、本当だわ。慶太一日以上眠っていたけど気分は悪くない?」
「う、うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。
ところで今西暦何年の何月何日かな?」
「起きるなりどうしたの?今は2008年4月2日よ。」
やっぱりそうか、しずかが幼いからまさかとは思ったが。。。
俺は今2008年にいる。
俺はあの体育館の夢の続きを見ているのか?
それとも、さっきまでの2015年が夢だったのか?
・・・・・
・・・・・
・・・・・
待てよ。
2008年が夢にしろ2015年が夢にしろ牛若丸は実在するのか?
どちらにも現れたのでそう考えても間違いなさそうだな。
そう言えば彼女が俺に伝えた言葉、
「どんなに辛いことがあっても希望は捨てるな。
これはお前の教えてくれた言葉だぞ。」
この言葉に俺は記憶がない。
そんなセリフいつ言ったんだ?
もはや論理的な思考では計り知れない状況に、
俺の身は置かれているのかもしれない。
ただ事態がどうであれ牛若丸の立場が危ないと感じた俺は、
彼女を守らなくてはいけないと無意識に感じていた。