お能の話シリーズ第三回 演目『賀茂』 | 京都を遊びつくすブログ

京都を遊びつくすブログ

京都を遊びつくすブログです。

こんにちは。

 

今日は、能演目『賀茂』をご紹介します。

 

友人いわく、「賀茂のあらすじ?んー、全体を通して、めでたいって感じだね」

 

だそうです。…どんなだw

 

播磨国の室(むろ)の明神に仕える神職者が、ある夏に賀茂神社を訪れます。

 

彼はそこで、白羽の矢を立てた祭壇があるのに気づきます。

 

そして、そこにいた里の女たちが水を汲みにやってきたので、祭壇について尋ねます。

 

里の女たちは神職に、この白羽の矢は加茂神社、室の明神の御神体そのものだと教えます。

 

「賀茂の里に住む女性が、毎日川で水を汲んでいた。

 

ある時、一本の白羽の矢が水桶に止まったので、それを家の軒に挿したところ、男の子が産まれた。

 

その子が三歳になった時、父はこの矢である、と言った。

 

すると、矢はすぐさま別雷神(上賀茂神社の方)となって天に上った」

 

ここでつっこませてください。

 

矢が西洋でいうところのオベリスク的なものの象徴なのはだいたい感づくとして、

 

他の地域の神話にはめったに無いと思います。

 

友人が面白い事を言っていました。

 

神と自分との間に能があると。

 

話を戻します。

 

そのあと里の女は消え、残された神職の前に末社の神が現れ、舞を舞います。

 

しばらくすると、御祖神(下鴨神社の方)が、天女の姿で舞います。

 

さらに、別雷神も勢いよく登場し、雷雨を呼び起こして神威を示します。

 

そんなお話です。



 

この演目は六月に設定されている能だそうです。

 

私はこの演目が、能鑑賞のデビューだったのですが、

 

一言感想を述べると、

 

色彩の象徴性、持っている物の象徴性の多彩さ、分かりやすさがすごく面白いなぁと。

 

私は元々、レンブラントやエルグレコを始めとした、キリスト画に出てくる小物の象徴性に興味津々で、

 

イノコロジー研究をしている若桑みどりさんの本をよく読んでいたのですが、

 

日本の芸術にもイノコロジーに似たものがあるのではないかと。

 

賀茂の場合、矢、ですよね。

 

それから、私はやはり色彩に関心があるので、装束の配色について詳しくみてみましょう。

 

はじめに出てくる神職。


世界が夜の祇園の夢なら

直面(ひためん、仮面を被らない、つまり人間を表わす)の

 

神職の装束の表着(上着)は、

 

私が見た演目では支子(くちなし)に京紫。

 

見た目、おえらいさんか誰かなのかなって分かりますよね。

 

よく、源氏物語に主語が無くてもそのセリフを誰が話してるかわかっちゃうのは、

br />

語尾の言葉が謙遜語や謙譲語かとかで使い分けるから、という話がありますが、

 

装束のメッセージにもそのようなものがあると私は思います。

 

袴は、藍の地に金の柄。


世界が夜の祇園の夢なら

これはもう反対色の美しさですよね。

 

里女の装束に参りましょう。

 

笑みが怖い面の方は(なんて表現したらいいかわかんないww)、

 

蘇芳色の地に柄は花。

 

もう一人の里女は全体的に橙色という感じ。

 

二人とも暖色系。

 

そうそう、賀茂は野外舞台で見たのですが、

それがすごく幽玄で素敵でした!

 

里女が去ってから、おじいさんの面をした賀茂の明神が出てきます。

 

これは狂言なのだそうで、囃子が止まり、セリフだけになります。

 

面は、頭に被るものが、仏教において如来の精神や智慧を5つの色で表すあの5色。

 

表着は松葉色。


世界が夜の祇園の夢なら

 

ここから、長寿のメッセージを読む事が出来ますね。

 

着付(内着)は浅葱色と茶。

 

帯は松の柄。

 

次に出てくるのは、天女。

 

詳細を言うと、御祖神が天女のかたちをとって姿を見せているのです。

 

長い髪、せんす、頭には金の飾り、

 

装束は、古代紫に柄は金です。

 

帯は朱色。

 

天女は舞を舞うのですが、動きには何の意味があるのだろうか。

 

むかーし、私はニコニコ動画で、自分の好きな認知心理学者の講義を見ていたのですが、

 

彼は「当時の行動主義の心理学者は、行動に意味なんて言及するなんてね、

 

言語道断だったんだよ」と言っていたのを覚えています。

 

私は行動主義者ではなく、ワトソンとも話が通じない気がするので笑、

 

能の舞の身体性に、今後注目していきたいと思っています。

 

それから、能の舞台は、役者が舞台を踏むとすごく響くんですね。

 

あれは、床下にカメが置いてあるので、響くようになっているそうです。



 

最後に、別雷神が出てきます。

 

後ろの髪が、全体が真っ赤、中央が白茶のような、クリーム色のような色。

 

髪の赤は、人外(じんがい、人ではない)であることの表現なのだそうです。

 

頭には黒い被りもの、面は金色。

 

幣を持っている。

 

装束の表着は、藍に金。袴は朱に柄は金。表着の裏地は紫。

 

全体的に極彩色。

 

賀茂の演目の紹介でした♪

 

このブログを書いた人↓

 

 

本を出版しました!