と、ごく稀に有名人と間違われてせがまれる!
誰かに似ているというのは周囲の視線で“な~んとなく”感じていたが、誰だかまだ解明されていない。
……。
「これにサインをください!」
「え、誰の?」
「アナタの!」
「え~名前は?」
「“まさこ”と言います!」 とあまり見栄えのパッとしない女子高生はノートをボクに手渡す。ボクが了解したと受け取ったらしい。
(しぜんと手が出て受け取るボク)、仕方なくペンを受け取る!
まさこ、まさこ、まさこ…と呟いてボクは、
「ひらがなでいい?」 とノート(B5サイズ)いっぱいに、
まさこ
と書き込む!
「あっ!」 という女子高生に、
「えっ?」と反応する、ボク。
……。
「…私じゃなくて…」と口ごもって、遠慮がちにボクの胴体を指さす女子高生。
「ああ、あ~ボクね!」 と(やっぱりそうなんだ!)と諦めて考えるボク、
(ボクはいったい誰なんだ?)
ノートをめくって、「……」
誰も、なにも浮かばない!
会話のことばも出てこないから自然と回りに視線を流すボク。すると渋谷・センター街の隅や白いガードレールとか高架橋の壁とかにある意味不明な文字(なのか“記号”なのかよくわからない)、“落書き”が目に入る!
スプレー缶で走り書きした“ぐちゃぐちゃ”した黒い文字! (どうも“サイン”に見えなくもない)
ボクはひらめき、さっと写しとる。それをそれっぽく最後は“跳ね”て、調子に乗ってハートマークをチョンと入れた! そしてすぐ考え直して“ハートマーク”をペンで消す。(…男の有名人はハートは入れないだろう…たぶん!)
そして出来栄えを吟味するボクは、なぜか満足してる。
「ハイ!」 とノートを返すボク、
「ありがとうぞざいます!」 と受け取った自分のノートをのぞきこむ女子高生を、ちょっと様子がおかしいと感じる。
「ボクは滅多にサインしないから」 とボクは女子高生が感じた“何か”を打ち消すように、
「大事にしてね!」
と丸く収めにはいる。
「はい、大事にします!」
(……)
(あ、なんか…大事にしないっポイ!)
「んじゃ、これで!」 とボクは逃げるようにその場に背を向ける。
早く目の前の角を曲がって姿を消したい! (どうしてボクが“悪い”みたいな気分になっているんだ! 勘違いしてサインをねだるほうが軽率で良くないんだ。ボクは被害者だ!)
……。
それにしても、
(いったいボクは誰なんだ!)