3月6~7日の土日を使って、
四国は愛媛県、
松山市にいってきます。
つっても、
目的は『講演』。
初日2日目と、
違うところからオファーを受け、
双方ともに了解したわけです。
2日で2本の講演。
同じ松山市。
さてさて、
両方来る人が退屈しないように、
講演内容を変えるべきか、
どうしようか迷っていますが、
僕が講演で伝えるべきことはたった一つです。
小中高生を対象に行っている、
深夜のメール相談で出会った子ども達の、
行き場のない現状や、
イライラの原因など、
触れて聞かねばわからない事を、
テレビでしか知りえない大人もいますので、
伝えるのみに徹するつもりです。
子ども達が荒れていると言いますが、
荒れている原因は何か、
深く深く追求していく番組はほぼないです。
メディアは、
単に子ども達が荒れている事だけを伝え、
子ども達がしでかした悪い事を、
いかに毒々しく伝えるかに終始しています。
そうなると、
子ども達を法律で押さえ込もうとする、
いわゆる
『少年法の改正問題』
が浮上するわけです。
悪い事をしたんだから、
罰するのが当たり前という論理だけが、
コメンテーターに求められる仕事となります。
本当にそれで良いんでしょうか。
相談者の中には、
何人も犯罪歴を持った子がいます。
その子達を自首させた事もあります。
しかし、
単に罰するのは簡単だけど、
僕はそれだけに終始してはいけないと思い、
彼らが
『なぜ犯罪に走ったのか』
に触れ、
できる限りの支援をしてきました。
アキヒロは、
窃盗罪により逮捕され、
その際にハンドバッグを無理矢理盗ろうとして、
相手に怪我を負わせました。
彼が僕に相談してきた時には、
もはや彼は自我を保つのも困難なほど困惑し、
話にならない状態でした。
まずは落ち着かせ、
時間をかけて何があったのかを聞きました。
『俺…
とんでもない事してもうた…』
自分がどのようにして犯行に及んだか、
切々と語られる内容に、
血の気が引くような思いでした。
すぐに自首をすすめ、
警察に連絡を入れ、
到着までの時間に
『なぜ犯行におよんだのか』
を聞きました。
彼の家は父子家庭です。
父親は暴〇団の組員で、
クスリをやりすぎて、
かなり飛んでいる状態だったそうです。
父親は完全に錯乱状態で、
自分の便を壁という壁に塗ったり、
ぬいぐるみに注射している姿を毎日見続けたアキヒロ。
そんな生活の中で、
唯一彼と家族をつないでいたのは、
母親との約束でした。
『どんな事があっても、
お父さんを見捨てないで…』
そう言ってお母さんは他界されました。
彼は毎日、
母親との約束を守るために我慢し、
殴られても蹴られても、
それに耐えて父親を説得し続けました。
学校では、
便の臭いが充満する家で暮らす彼に対し、
周りからのイジメは激化し、
とてもじゃないが耐えれる心境になかったと言います。
学校にも行けなくなり、
家に帰ると、
錯乱状態の父親が、
理解不能の行動に走っています。
そんな生活に耐えれなくなり、
彼は家出をしました。
彼の先輩に、
地元の暴走族で有名な人がおり、
彼は先輩を頼りに行きました。
先輩は快く受け入れ、
彼は寝床と、
仮初であっても、
仲間と言える人達に囲まれた環境で暮らしていました。
父親が警察に逮捕され、
ホッと胸を撫で下ろす反面、
母親との約束を守れなかった自分への苛立ちは、
他者へと向かいます。
そんな彼に、
先輩が言いました。
『今度の走りで、
〇〇って族とかち合うかもしれん。
そうなったら、
軍資金が今の倍は必要になる。
お前、
何とかして化成で来い』
世話になった先輩に逆らえず、
彼はバイトをしたりしましたが、
軍資金の納期が間に合わず、
何度も叱咤され、
次第にそれは罵倒に変わり、
気づけば、
自分を1番苦しめた
『イジメ』
へと発展しました。
二度とあんな思いをしたくないアキヒロは、
何とかしてお金を稼ごうと、
ひったくりにおよんだのでした。
納期にお金を持っていくと、
先輩や周りの人は優しくしてくれます。
彼は、
道徳心では止める事のできない道へと進み、
本件の犯行に至ったのでした。
世間では、
『不良学生、
ひったくりで相手に重症を負わせる、
極悪非道な犯行』
と喧伝され、
世間もその意見に同調するかのようでした。
ニュースでも取り上げられ、
コメンテーターは
『戦中戦後にできた少年法を、
現代の子ども達にも当てはめるなんて、
愚の骨頂だ。
悪事を働いた者は、
子どもであろうがなかろうが、
刑法でしっかり罰するべきだ』
と得意気に言っています。
アナウンサーのしめの言葉も、
それに同調した意見でした。
アキヒロが行った犯行は、
確かに極悪かもしれない。
被害者の立場に立てば、
僕だって怒り心頭だったと思う。
でも、
表面だけとらえればそうかもしれないけど、
深く核心に迫らないと見えない
『犯行におよんだ原因』
にたどり着かない。
憎むべきは、
その原因なんだと僕は思うんです。
警察に自首したアキヒロは、
余罪の全てを自供しました。
そして僕はその足で、
被害者の入院している病院に行きました。
彼の代理の者と言うと、
烈火のごとく怒られました。
甘んじてそれは受けました。
アキヒロは、
相手をこう思わせる犯行におよんだんだから。
そして僕は、
被害者の方に、
アキヒロがこれまで歩んできた人生、
犯行におよんだ経緯を説明しました。
被害者は当然、
それを聞いたからといって、
罪を軽くしてやろうとは思いません。
僕もそれを狙って伝えたわけじゃありません。
僕は、
被害者を入院させたのは、
明らかにアキヒロが悪いと理解しています。
僕が被害者に伝えたかったのは、
世間で報道されているような、
罪の意識のない、
犯罪に躊躇のないような子どもが、
犯行におよんだわけじゃないんだという事、
それのみです。
被害者のもとを離れ、
僕はアキヒロのところに行きました。
今後、
裁判などもある身ですので、
そう簡単には会えません。
しかし、
担当警官にお願いし、
被害者の方に謝罪しに行った事は伝えました。
僕が何を言う人間かは、
彼も知っているので、
被害者のところに行ったという事は、
自分の歴史を伝えたんだと彼も理解していました。
『ゴメン…
迷惑ばっかかけて…』
そう言っていたと担当警官に伝えられ、
僕は署をあとにしました。
彼はその罪を、
少年院で償うことになりました。
僕はその後も被害者に面会し、
その後の経過などを聞いたり、
それをアキヒロに伝えるという事をしていました。
被害者の方は、
『他人のあなたが、
なぜそこまでするんですか?』
と言っていましたが、
他人か、
身内かなどは、
僕には関係ありません。
相談者がいるなら、
その相談者と真摯に向き合う、
ただそれだけですから。
その思いが通じたのか、
被害者の方は、
アキヒロに接見を申し出てくれました。
『君が犯した罪は、
一体何だと思う?』
アキヒロは答えました。
『窃盗罪です。
本当に申し訳ありませんでした』
『そういう事じゃない。
君が犯した罪は、
君をこれほど知ってくれている人がいて、
孤独だと思い込み、
楽な方へと逃げた事や』
『…』
『いいか?
君のために汗かいてくれる人を、
絶対に裏切ったらアカンで』
『…申し訳ありませんでした…』
泣き崩れるアキヒロを見て、
被害者の方がさらに伝えてくれました。
『君の過酷だった過去は聞いたよ。
本当に大変な人生だったね。
だから罪が軽くなるわけじゃないし、
俺だって怒ってるんやけど、
君は決して、
報道されてるような極悪非道な人間じゃない。
目を見てわかったよ。
会えてよかった』
そう言って去って行きました。
子ども達が荒れている。
少年法ではなく、
刑法で裁くべきだ。
羞恥心や罪の意識が低下している。
学力が落ちている。
現代の子ども達の身の上に降りかかる、
実情とはかけ離れた子ども達への評価。
では、
その子ども達を育てるのは、
親だけの責任でしょうか。
社会はどうやって、
子ども達の真実の姿を見失い、
これからしっかり見つめてくれるのでしょうか。
僕はせめて、
子ども達の実情から、
目を背けないで見守っていきたいと思っています。
松山での講演も、
きっとそういう話に終始することでしょう。
一人でも多くの賛同者が増えれば、
きっと世の中、
捨てたモンじゃないと思ってくれる子ども達が増えます。
僕の四国への旅は、
そういう意味が込められているんだと思います。