【東日本大震災3年】水産加工の販路拡大へ大槌町「発信強化」
(1/2ページ)新しいラインでサケの切り身をたれに浸し、給食用に加工する作業が続く。岩手県大槌町の「小豆嶋(しょうずしま)漁業」が昨年12月に再建した加工場では、女性従業員が笑顔で働いていた。だが、小豆嶋敏明社長(61)の表情は晴れない。「これからどうすれば良いのか分からない。努力が足りないのかな…」
町は東日本大震災の津波で住民の1割近くが犠牲になり、水産加工業者は半減した。施設を流された同社は震災前に手掛けた魚の保管業務から撤退し、加工に絞っての再起を決断。補助金で敷地を約3メートルかさ上げし、仮設工場から戻った。
主な取引先は維持でき、同業他社が減って注文は集まった。それでも売り上げは震災前の約7割。再開の遅れた業者の仕事の多くは他の地域に奪われ、町全体では販路が縮小したとみられる。
国などの補助金もあり、三陸の船は復旧が進み、水揚げも復調している。昨年は、横浜市の住民らが町の漁師に漁船2隻を提供した。ただ、新おおつち漁業協同組合の阿部力組合長(39)は「漁師は魚を取るので精いっぱい。販路の拡大まで手が回っていない」と打ち明ける。
町や漁協が練る打開策は、特産の新巻きサケの売り込みだ。町のブランドを発信する観光物産協会が、ようやくこの春に業務を再開する。阿部組合長は「世界が震災に注目してくれている今がチャンス。復興して支援への感謝を行動で示したい」と語る。
【東日本大震災3年】水産加工の販路拡大へ大槌町「発信強化」
(2/2ページ)明るい材料もある。首都圏などでカキレストランを経営するヒューマンウェブ(東京)が来年、三陸産カキの加工場を町の水産加工団地で開業すると決めた。進出は「会社が倒産しかけた時、大槌の漁師さんに代金の支払いを待ってもらった恩返し」(吉田瑛則社長)。観光拠点のレストランも併設され、約30人の雇用が生まれる。
整備中の加工団地への誘致が決まった企業はわずかで、まだ楽観はできないが、町幹部は「缶詰工場など大型機械を使った加工場をどこまで呼び込めるかだ」と手探りを続ける,rmtssp。