【3月25日・土曜日】
二日目・最終日に行った。
春休みにもかかわらず、東京中高の校内はにぎやかだ。運動場ではラグビー部とサッカー部の部活、体育館も騒がしい。校門右手の校舎からは何人かの女子生徒が顔をのぞかしていた。
食堂や体育館の地下では、女性同盟が歌と踊りの練習、連れてきた子どもたちが歓声をあげ、校庭を走り回っていた。
ラグビー教室の児童たちの姿がない。昼食は校庭で焼き肉だと聞いていた。ラグビー部の面々が、未来のラガーのために、七輪に炭を起こしていた。
顔見知りの申さんは、「…七時に起床した児童たちは、二時間余り運動場で…もうすぐプールから帰ってきます」と。
五四人が参加、千葉からの参加者が多い、神奈川からも。女子が六人。東京朝高を卒業し、日本の大学で活躍した「憧れのラガーマン」の参加もあり、子どもたちたちだけではなく、企画したアボジたちのテンションも…。「ラグビーに接する機会がない児童たちが、興味をもってくれたのでは…」
プールから戻ってくる児童たちのために肉を焼き始めたアボジたちの口は軽やかだ。
夜間、高麗ジュニアラグビークラブに属する何人かの児童が東京中高の運動場で練習をしているが、「お泊り」教室は初めて。初日、終業式を終え、同校に集まった児童たちは、タックルやラインアウト、モールなどを「体験」し、リレー大会やビンゴゲームなどに興じたようだ。

児童たちはプールから戻ってくるなり、「多め」にご飯をよそってもらうと、焼き肉をぱくつき始めた。
私・「何が面白かった?」
男子児童・「うん…」
食べるのが忙しそうだ。かけっこがとか、ビンゴがとかで、ラグビーの話は出なかったが、楽しかったことだけは確かだ。小学生だけではなく、年長組の幼児も一人、兄と一緒に泊まったようだ。「わくわく」のネームが入ったブルーのTシャツは支援者からのプレゼント、肉の寄付もあったとのことだ。
「食べ終わったら練習です…嘘です。」
「楽しかっただろ…ラグビーは手を出しても、飛びかかっても…」
OBたちは、そんな言葉を児童たちにかけていた。六つのグループ別に写真も。サッカーの試合があって何人かは帰ったようだ。せっかく仲良しになったのに一緒に写真を撮れなかったことを残念がる児童もいた。
食事が終わると、解散式。点呼をしているのに、パスの練習をする児童が。よほどラグビーボールが気に入ったようだ。

そして、二日間、子どもたちを世話したOBを交えてのアボジとオモニたちの反省会を兼ねた食事会。
第一声が「オモニたちから…感想と怒りを…その怒りが力になりますから…」だ。七、八人で七輪を囲む女性陣は沈黙。「これが答え…」と一言。「気が弱いから話せません」との声も。
この二日間、男性陣たちは何かをやらかしたようだ。
少しいづらい雰囲気だが、この後の展開に興味津々だ。
「それでは」と、男性陣が口火を切る。「チラシ作りから始めて…できることないかと声をかけてくれて…どうにか」。
すると、女性陣の一人が「むかつく…寝られなかった…」と。「私もくたくたです。オモニたちの頑張りがあったらこそ…」と、男性陣がつなげる。枕詞は「オモニたちスゴヘッスムニダ」だ。
「参加させてくれてコマッスムニダ。次の機会にもぜひ声をかけて…」、「素晴らしい…ここにいる一人でもかけたらできなかった…来年も是非」、「せがれの違う一面を見られたようで…」、「期待と不安いっぱいで始めたが、夜も楽しかった…」、「子どもたちに『빨리 자라(早く寝なさい)』としか言えなかったが…」。
子どもたちを寝かしつけたのち、男性陣は飲みながらの交流会を、何人かは「深酒」?。それが女性陣を怒らせた理由の一つのようだ。
それに、二月中旬に準備委員会を結成した後、チラシの作成、各学校との相談、宿泊の手配、それに二日間のスケジュール作りと、分担と、女性陣を巻き込んでの準備に奔走した。「家でもラグビーと『わくわく』の話しか…」。そしてこの二日間、女性陣は三度の食事の支度、コメだけでも四升炊いたという。

「神奈川から三人が参加したが、すごく感動した。子どもたちもそうだが、こうしてみなと会うことができて…」、「息子も色々感じてくれたのでは…」、「とてもいい試みでは…何よりも子どもたちの笑顔が…ラグビーやるっていう子がウリハッキョに入ってきたり、転校する生徒がいなくなれば…」。
乾杯だけして退席するつもりが、話が面白く席を立てない。
「最初は突拍子もない話だったが…オモニたちのラインのつながりは凄い。どっかでつながっていて、たくさんの協力を…」「続けていけば何か…親たちのラグビーへの熱い思いが子どもたちに伝わったのでは…」「自分たちが楽しむことが大切だ。それが『一人がみんなのために…』のチームプレーに繋がり…子どもたち以上に『わくわく』させてもらえた」。
最後は女性陣から締めの言葉が。
「一人でもラグビーの醍醐味を知ってくれたら…子と親が楽しめる場を作ってくれて…夫婦の会話といえば、ラグビーだけだけど、それも…」。
東京朝高を卒業して、社会人のチームで活躍する二人には、感謝と激励の大きな拍手が送られた。
そんな話が行きかう中、子どもたちは落とすとどこに行くかわからない、細長いラグビーのボールを追い続けていた。
「これからもこんな機会を…」。
男性陣が女性陣とともに、椅子と七輪、ビールの空き缶などの後片付。和気あいあいとだ。女性陣にも笑顔が…。
このたびの「ワクワクお泊りラグビー教室の主催団体は、東京朝高ラグビー部拡大後援会と高麗ジュニアラグビークラブ。東京中高への進学とラグビー部への入部者の確保、ラグビー体験を通じて子どもたちの可能性を引き出し成長へのきっかけにする、そして父母同士の親睦を図るなどの目的は十分達成できたようだ。
来年はぜひとも、準備段階からかかわりたいと思った。

***再整理して、5月下旬刊行の『朝鮮学校のある風景』43号に載せます。